
掲載日:2017年05月18日 試乗インプレ・レビュー
レポート/和歌山利宏 写真/徳永 茂 記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです
MT-10はYZF-R1をベースとするネイキッドモデルで、FZ1の後継型ながら、ネーミングが示すようにMTシリーズの最高峰モデルとしての登場だ。
車両構成は、エンジンもフレーム、スイングアームも現行R1がベースで、車体ディメンションは2次レシオの違いでスイングアームが5mm短い以外は同一である。だから、これをネイキッドR1と呼ぶことに何の抵抗もない。
なのに、今回の試乗会での技術説明会でプロジェクトリーダーの平野さんは、これはネイキッドR1ではないと切り出した。つまりは、単なるカウルレスR1ではなく、エンジンは40%、車体は60%のパーツを専用設計とし、ストリートスポーツとして最適化されているということである。
となると、MT-10にはR1から引き継いだDNA、クロスプレーンクランクによるMTらしいトルク感に加え、ストリートバイクとしての寛容性が作り込まれていると期待できる。事実、今回はこれら3つの要素が織り成すハーモニーを楽しめることとなった。
足着き性はR1ほど悪くなく、リッターネイキッドとして標準的。ライディングポジションも自然だ。車重はR1より10kgほど重いが、取り回しはむしろ軽い。クラッチ操作も軽く、扱いやすさは上々だ。
MT-10は、ハード面をYZF-R1から受け継ぐハイパーネイキッドであるが、MT=マスター・オブ・トルクのトップモデルに相応しいトルク感を伴う鼓動感を備えてある。スタイリングも、ダクト形状やフレームなどが吸気→燃焼→排気というパワーフローを表現して見せながら、エンジン自体の存在感も強調するデザインだ
発進していくと、獰猛さなど微塵もなく、スムーズで扱いやすい。それでも、低回転域でのクロスプレーンによる不等間隔の鼓動感が、トルクの増強とクランクマス増大のおかげで、R1よりも強烈に響き、心地良い。“MT”の面目躍如といったところだ。
ハンドリングには、雨の中でもしっとり感がある。それでいて軽快で、リッターバイクの鈍重さはない。そして、常にフロントには適度の荷重感が保たれ、破綻を来たしそうにない安心感がある。雨のコーナリングでも、接地感が的確に伝わってくる。さすがR1ベースだけのことはある。
低回転域で鼓動感を放ちながらも、決して太くはないトルクは、中回転域を経て高回転域に向かってリニアに立ち上がっていく。強力ながら、濡れた路面でライダーを不安に陥れることはない。
ただ、低速トルクは実用上十分でも、コーナーでスロットルで操る感覚を得るには、メリハリのある6,000rpm近くに回しておきたい。2速だと80km/h程度で、そのへんは素性に高回転型特性があるためだろうか。また、低開度でのレスポンスも遅れて唐突になりがち。ドライ路面ならある程度に開けることができるので、問題とならないだろうが……。
だから、先に書いた3つの要素の中で、R1由来の部分を強く感じさせる。その意味で、このMT-10をワインディングファイターとしてもいいだろう。
オーリンズの電子制御サスペンションが装備される上級型SPは、常に減衰力が最適に保たれ、走りに上質感がある。そして一方の、KYB装備の標準型は、接地感やマシンの状態がダイレクトに伝わってきて、今回の公道に近いシチュエーションでは、むしろ悪くない。電子制御サスペンションに拘らなければ、標準型もお奨めのMT-10である。
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