

掲載日:2015年11月19日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真/伊勢 悟 動画/倉田 昌幸 衣装協力/HYOD
スーパースポーツらしいフルカウル仕様なのでかなり前傾ポジションかと思いきや、乗ってみるとハンドル位置は意外と高めでシートは低め。スリムな車体と相まって、かなり足着き性は良い。ハンドルもよく切れるので取り回しもしやすい。
250ccのR25に対して、R3と聞くと300ccかと思うかもしれないが、じつは320ccというのがミソである。おそらくこのシリンダーブロックが許す限りの最大ボアを求めた結果の排気量なのだろう。最初から設計に余裕を持たせていたのかもしれない。もちろんエンジンに合わせて吸排気系もしっかり調整されている。いわばメーカー純正のチューニングマシンだ。ゆえに強力かつ扱いやすい。
排気量が70ccも増えた恩恵は乗ってすぐに分かる。まず出足が鋭い。発進でのクラッチのつなぎが楽だし、狭い交差点を曲がるときも半クラッチでごまかす必要がない。ピークパワーに目がいきがちだが、じつは日常域での扱いやすさも増しているのだ。ツーリングでは高速道路での加速の伸びが違うし、登りのワインディングでもギアをキープしたまま行ける。例えば、R25だと一段下げて2速にするところが3速のまま、という具合だ。楽して速く走れるのがいい。
ハンドリングは基本的にR25と同じで、素直で扱いやすいのが美点。軽量コンパクト、スリムな車体を生かした軽快なハンドリングだ。車重がほぼ同じ(R25 ABSより1kg重い)なので、トルクがあるぶん車体を振り回せる。より軽快感が増している気がするほどだ。
エンジンの出力特性も貢献している。コーナーでアクセルを閉じて、また開けていくときのフィーリングが絶妙で、ギクシャクすることなくスッとついて来てくれるので姿勢の乱れが無いし、精神的にも疲れない。非常にコントロール性が良く、自分の思い通りのラインを描ける。
加えて、豊富なストローク量を持つ前後サスペンションのしなやかな動きが、スロットルに連動した姿勢変化をきれいに作ってくれるため、コーナー進入では素直に倒し込めて、立ち上がりでは気持ちよく開けていける。YZF-R1にも通ずるスポーティかつ上質な乗り心地が味わえるのもヤマハらしい。
ブレーキは初期タッチが柔らかく、奥でよく効いてくれるタイプだ。入力はコントローラブルで、ABSの作動はさらに奥の方なので、サーキット走行などのスポーティな走りにも十分対応できると思う。
スタイリングとディテールの完成度も魅力だ。機能美に満ちたメーターまわりやLEDテールランプをはじめ、全体的に質感が高く作り込まれている。性能はもちろんのこと、見栄えのする大柄な車格と言い、何台も乗り継いだベテランライダーが乗ってもその気にされてしまいそうな、本格的スポーツモデルだ。
YZF-Rシリーズの流れを汲む本格的なフルカウルボディでありながら、高めのセパレートハンドルや足着き性に優れる780mmのシート高を採用するなど、スポーティかつ普段使いにも優れた作りは、R25同様、幅広いユーザーにおすすめだ。
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