スズキ GSX-R600(2015)
スズキ GSX-R600(2015)

スズキ GSX-R600(2015) – 20年以上の進化熟成を重ねたミドルスーパースポーツ

掲載日:2015年10月22日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎  写真・動画/山家 健一  衣装協力/HYOD

スズキ GSX-R600(2015)の試乗インプレッション

スズキ GSX-R600(2015)の画像

エキサイティングで扱いやすく安心
中量クラスの魅力を凝縮した1台だ

このモデルには個人的にも思い入れがある。私事になるが2008年のこと、かつてのWGP500王者であるケヴィン・シュワンツ氏が主宰する『KSSS(ケヴィン・シュワンツ・スズキ・スクール)』に参加するため、米国アトランタに渡ったことがあった。そこでは数日かけてサーキットライディングのノウハウを叩きこまれるのだが、そのとき実技用に1人1台貸し出されたのがGSX-R600だった。生徒も講師陣も全員がR600。起伏の激しい広大なロード・アトランタ・サーキットで、元世界王者に学んだエキサイティングな時間は一生忘れられない思い出となった。

転倒したら即退場という厳しい条件付きだったが、その中で常に絶大な安心感とともに私のライディングを支え続けてくれたのがGSX-R600だった。扱いやすいからこそ思い切っていける。そう実感したのを覚えている。今回、久々に乗ってみて、あの時の記憶が蘇ってきた。どこまでも伸びていくスムースなエンジンと、軽快だがしっとりと安心感のあるハンドリング。スポーティなのにリラックスできる乗り心地など、かつてのR600の良い部分がそのまま残っていて嬉しくなった。

スズキ GSX-R600(2015)の画像

現行のGSX-R600は車体が専用設計になっていて、GSX-R1000比でホイールベースが20mm短く、車重は18kg軽くなっている。見た目のサイズ感としてはあまり差はないが、実際に取り回してみると明らかに軽く、エンジンをかけて走り出すとさらに動的な軽さが際立ってくる。左右への切り反しが俊敏で、とくに直立からの倒し込みが非常に軽い。R1000から乗り換えると軽すぎてコーナーのインに早くつき過ぎてしまうほど。それだけ小回りも利くということだ。

エンジンは600ccならではの高回転の伸びやかなパワーはもちろんのこと、低中速域での粘りのあるトルクも持ち味。ピークは125psだが普段はそこまで回さないだろうし、パワーの出方も穏やかなので扱いやすく、だからこそスロットルを長く大きく開けていける。車重も軽いのでブレーキングでもより奥まで突っ込めるなど、R1000とはまた違ったメリットが生かせる。一見双子のような兄弟車でも、速さの質が異なるのだ。

スズキ GSX-R600(2015)の画像

また、S-DMSはAモードがフルパワー、Bモードは出力特性が抑えられた設定だが、いずれもR1000のようにドッカンとはこないので扱いやすい。ただし、本来の素のパワーを味わいたいなら、やはりAモードに限る。10,000rpmからの高回転の盛り上がりと上昇感、高周波サウンドが魂を揺さぶる。

BPFの作動性の良さは定評どおりで、初期の入りのスムーズさはR1000以上。おそらくスプリングの初期荷重の設定なども異なるのだろう。乗り心地はさらにソフトな感じがする。ブレーキも扱いやすい特性だ。フロントはモノブロックで軽量ということもあり、リニアなタッチで握り込めばよく効く。ワインディングでなら指1本でコントロールできる扱いやすいさがある。ABSは未装着だが安心感のあるブレーキだ。

スズキ GSX-R600(2015)の画像

一方、普段の使い勝手としてはハンドル切れ角も十分あるし、低中速トルクもあるのでUターンなども安心。R1000よりひと回りコンパクトな車格と、スーパースポーツとしては比較的楽なポジションのおかげで街乗りも結構いけるはず。シート高も810mmとスペック的にはR1000と同じだが、前後サスペンションとも初期の沈み込みが大きいぶん、実際の感覚としては足着きもさらに良い。

大きめのフロントカウルに高いスクリーンのおかげで高速クルーズも快適だ。可変式ステップによりライディングポジションの微調整ができるなど、地味だが気の利いた設計になっている。

扱いやすいパワーと素直なハンドリング、上のレベルを目指したい一般ライダーでも乗りこなせる安心感など、R600はこのクラスの持っている良さを凝縮したようなモデルだ。ワインディングにサーキットに、純粋にスポーツライディングを楽しむには最適なマシンだと言える。

スズキ GSX-R600(2015)の詳細写真は次ページにて

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