

掲載日:2014年05月01日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一 動画/倉田 昌幸 衣装協力/HYOD
NC750Xに乗ってまず感じたのは、ずいぶんとパワフルになったという印象。従来のNC700Xでも同じDCT仕様に乗ったが、発進の加速力が違う。元々低速トルク型のエンジンではあったが、出足によりパンチが増した感じだ。たった50cc分、4馬力程度の増量ではあるが、数値以上の力量感がある。サウンドがより力強く弾ける音質になったことも効いていると思うが、体感的にはかなり“速くなった”感があるのだ。DCTのセッティングも従来より自然なフィーリングになった。たとえば、Dモードだが、以前はいかにもコンピュータ制御という感じで、燃費重視のためかシフトアップのタイミングが極端に早く、自分が欲しい回転数が得られにくかったが、新型ではシフトタイミングがより実際の走行フィールに合ってきている。特にシフトダウンの場合、以前はタイミングが遅く、シフトボタンを自分で任意に操って積極的にギアを落としていかないと適切なエンジンブレーキが得られず不安なシーンもあったが、それがだいぶ解消されている。
もちろん、より回転数を上げてトルクバンドに乗せて加速したり、エンジンブレーキを有効に使ってコーナーに向けて車体の姿勢を作っていきたいときなどはSモードがおすすめだし、さらにライダーが積極的に関与してアグレッシブにバイクを操っていきたいときはMTモードをセレクトすべきだ。つまり、シフト操作に慣れていないビギナーやベテランでもラクして快適に乗りたい向きにはATモード、安全かつイージーにバイクを操る楽しさを味わいたいならMTモード、といった具合に、操作の仕方に幅広い選択肢がライダーに与えられているところがDCTのメリットだ。それが今回、熟成進化したわけだから大歓迎である。
ただしDCTも万能ではない。ノロノロ渋滞でも半クラが必要なく絶対にエンストしないのは心強い限りだが、極低速のUターンでは、逆に半クラを使えないので微妙な速度コントロールがしにくい場合もある。究極を言えば、コーナー進入時などもマニュアルトランスミッションであればブリッピングシフトダウンで瞬時に数段ギアを落とせるが、MTモードでもそこまでの瞬間的なギアチェンジはできない。もし、そこまでの関与を求めるのであれば、素直にマニュアル仕様のNC750Xを選べばいいだけだ。
クロスオーバーコンセプトを掲げる“X”は、同じエンジンと車体を持つ兄弟車の“S”に比べると大柄でシートも高めだが、乗ってみるとサスペンションの沈み込みで見かけより足着きも良く、コンパクトで軽い。便利なラゲッジスペースも、何も入れていなければ空洞のため、コーナーに向けての倒し込みも非常に軽く、それでいてエンジン搭載位置が低重心のため、旋回中でもピタリと安定感がある。扱いやすく、トルクフルな出力特性にも助けられて、とてもフレンドリーな、誰でも安心できるハンドリングに仕上がっている。
また今回、ブレーキが前後連動方式ではなく通常タイプとなり、Uターンなどの極低速で扱いやすくなったことも個人的には歓迎したい。扱いやすくて操る楽しさもあり、その気になればそこそこ速いし、便利なメットインスペースもあって、スタイルも良い。そしてホンダが誇るハイテクも身近に体験できる。まさに、老若男女すべてにおすすめできる“国民バイク”と言ってもいい存在だろう。
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