モトグッツィ V7レーサー
モトグッツィ V7レーサー

モトグッツィ V7レーサー – 往年の名車にインスパイアされた本格派カフェレーサー

掲載日:2013年11月21日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎  写真・動画/MOTOCOM  衣装協力/HYOD

モトグッツィ V7レーサーの試乗インプレッション

モトグッツィ V7レーサーの画像

その姿も走りも超個性的
乗るほどに虜になっていく

最近はカフェレーサーがちょっとしたブームである。『コンチネンタルGT』や『ノートン』など往年の名車ブランドの復活や、BMWのアニバーサリーモデル、『R nineT(アール・ナインティ)』など、ノスタルジックな装いに現代の技術を盛り込んだモデルに注目が集まっているし、国産でもCB1100やW800、SR400などのネオクラシック系が根強い人気を誇っている。

そんな中でも、モトグッツィはことさらオーセンティックなブランドと言えるだろう。何しろ60年代に活躍した『V7』以来、縦置き空冷90度Vツイン OHV 2バルブというレイアウトを半世紀近く頑なに守り続けているのだ。

かつての最新スポーツモデルの名を冠してはいるが、今ではすっかりテイストを楽しむバイクなのか…。従来型のV7レーサーに乗ったときは、正直そう感じたものだが、今回の新型ではちょっと印象が変わった。エンジンが大幅にリファインされてパワフルになったのはもちろん、走りそのものが現代的に洗練された感じだ。以前はエンジンの回転フィールも重ったるさがあり、スロットルレスポンスもややダルな感じがあったが、新型エンジンは縦置きVツインの味わいは生かしつつ、回転も軽やかでレスポンスもより俊敏になった。シフト操作もペダルの遊びの多さは相変わらずだが、シフトタッチには節度が出てギアチェンジも滑らかに決まる。

モトグッツィ V7レーサーの画像

足回りも前後サスペンションのセッティングが変わり、よりスポーティな走りに対応できるようになった。従来モデルは乗り心地こそソフトだが、やや動き過ぎる感じもあり、ギャップや高速域では物足りなさを感じる場合もあった。しかし新型ではよりダンピングが効いて、コシ感が出てきた。ブレンボ製のシングルディスクと4ポットキャリパーの組み合わせも強力過ぎず、穏やかなフィールで扱いやすい設定。前後ともブレーキは従来どおりだが、ホイールリムがスチール製からアルミ製に変わり、軽量化されたことでブレーキの効きも良くなった気がする。バネ下が軽くなることで、路面追従性も高まっているはずだ。つまり、これはエンジンのパワーアップに見合った足回りのグレードアップがなされている、ということだ。これらの地味な改良点は表向きには分からないが、走りには正直に出てくるものだ。

モトグッツィ V7レーサーの画像

高速道路では、縦置きVツイン独特の心地よい鼓動感を味わいつつも、より高い速度レンジをキープできるようになったのも嬉しい。従来モデルに比べると、気持ち良く流せる巡航速度は10km/h以上アップしていると思う。高速道路でやや苦手としていた追い越しも、新型では伸びやかな加速力を生かしてストレスフリーだ。また、低中速域のトルクが一段と太ったことことで、街乗りもより楽しくなった。乾式単板クラッチには少々慣れが必要だが、信号待ちからの発進も楽になり、より低回転でトコトコ走っていてもエンジンに十分な余裕がある感じ。ハンドル切れ角の豊富さも手伝って、Uターンも普通にこなせるレベルと言える。

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そして、なんと言っても一番楽しいのは中速コーナー。フロント18インチらしい穏やかかつ手応えのあるハンドリング、そして、1発1発の爆発を明瞭に伝えてくるエンジンの存在感が、なんともアナログチックで味わい深い。アクセルONで右に傾ぎ、テールリフトする車体のモーションを含めて、縦置きVツインとシャフトドライブ機構が訴えかけてくる個性がとにかく濃いのだ。“対話”という言葉がまさにぴったりくるバイクである。

「50年前のバイクです」とウソぶいても、信じてもらえるようなノスタルジックな美しさを湛えたデザインは言うに及ばず、その走りにおいても個性派揃いのモトグッツィの中でとりわけ異彩を放つ存在。見るほどに乗るほどに、どんどん虜になっていく、そんな1台だ。

モトグッツィ V7レーサーの詳細写真は次ページにて

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