掲載日:2013年10月24日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/和歌山 利宏 取材協力/ヤマハ発動機株式会社
昨秋のケルンショーにおいて新設計の並列3気筒ユニットが参考出展され、2013年6月にはそのエンジンを搭載するスポーツモデル『MT-09』が発表され、概要が明らかになっていたが、今回、ついに試乗が実現した。
ヤマハが新しく3気筒を開発したのは、コストを勘案した結果(各気筒のパーツは4点から3点に減る)もあると推測できるが、何より新しいスポーツバイクとは? という理想形を追求した結果に違いない。4気筒よりもスリムで、トルク感にも満ちており、2気筒と4気筒の良いところ取りを狙ったというわけだ。
欧州では “Dark Side of Japan” という意味不明とも取れるサブタイトルが付けられており、その点でも興味は尽きない。
クランク軸に生じるトルクは回転に伴って変動しており、燃焼圧によるトルクだけでなく、ピストンの上下動による慣性力が加わっている。ピストンが上・下死点に向かうときは、その運動を止めようとする慣性力でトルクが上乗せされるが、そこから離れるときはピストンを動かすためトルクが喰われるのだ。
一般的な並列4気筒では、各気筒の慣性力がお互いに上乗せされ、トータルのトルク波形が燃焼圧波形と異なってしまい、トルク感を掴みにくくなる。が、90度クランクのクロスプレーン型だと慣性力を打ち消し合うので、ピストンを押し下げる力を感じやすい。で、3気筒では、4気筒のクロスプレーンほどではないが、かなり慣性力は打ち消され、しかもトータルの波形と燃焼圧の波形が大きく違わず、トラクション感覚を掴みやすくなるというわけだ。
そしてそのスリムなエンジンを、後部を狭く絞り込んだフレームに搭載。スイングアームはそのフレームの外側で支持される。足元をスリムにして、3気筒のスリムさを強調。さらに、フレームはピボット付近でしなりやすく、把握しやすいトラクション感覚を生かし、リアから曲がりやすくもしているのだ。