

掲載日:2013年09月05日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/MOTOCOM 衣装協力/HYOD
よりアグレッシブに、そしてスタイリッシュに、華麗なる変身を遂げた Z 800 。カテゴリー的には従来の Z 750 と同じミドルクラスなのだが、見た目には品格がワンランク上がった感じがする。獲物を狙う黒ヒョウを思わせる低く構えたクラウチングスタイルの外観もさることながら、実際に跨ってみるとかなり前傾している。日本の伝統的なネイキッドとは異なる低くワイドなハンドルバーや高いシートは、むしろヨーロッパ系のストリートファイターに近いライディングポジションだ。
1本出しのショートサイレンサーから発せられる排気音は、やや大きめで賑やか。回転数を上げずに市街地をクルーズしているときは低く唸っているが、ひとたび右手を捻れば一段と高鳴るサウンドとともに、景色の流れが変わる。ただ、加速感は思ったよりスムーズで、外観からイメージしていた “ドッカン” パワーとは逆の印象。スロットルに対する反応は良い意味でややラグがあり、マシンにライダーが置いてけぼりを食らうこともない。F.I. の調律も緻密でジェントルと言えるほどだ。
キャラクターが一変するのは高回転域で、8,000rpm のトルクバンドを境にスロットルレスポンスは鋭くリニアさを増していく。カワサキが誇る直4エンジンの伝統そのものの、抜けるような高周波サウンドとともに2次曲線的とも言える伸びやかな上昇感が味わえる。個人的に Z 800 で最も気に入った部分だ。
ハンドリングもどちらかというと安定志向で、ZX-10R や ZX-6R のようなスーパースポーツ的な鋭さではない。Z 750 に比べると、車重とホイールベースが僅かに増えたことも影響しているかもしれないが、倒し込みも穏やかで、ほど良い重量感を感じながらバンキングスピードをコントロール出来る。ステアリングレスポンスもしかりで、車体の傾斜に従って自然に舵角がついてくる感じ。欧州産のアグレッシブなファイターによく見られがちな、切れ込みや立ちの強さ等のクセは感じられない。意外にも “素直” なキャラクターなのだ。
サスペンションは前後ともほどほどにダンパーが効いていて、その気になればかなりスポーティなレベルまで攻められるはず。ただ、常に前傾気味でリア上がりの姿勢のため、街乗りではやや疲れることもある。普段使いでは、少しリアのプリロードを抜いてフラットな姿勢にしてやったほうが扱いやすいかもしれない。
ブレーキについては、制動力は十分だがフロントの効きが穏やかで、タッチがやや曖昧な感じも受けた。テスト車両は ABS 無しのタイプだったが、個人的には ABS 付きでイザというときガッツリかけられるほうが好みではある。
車格はミドルクラスとしては大柄だが、かといって Z 1000 のような乗り手を選ぶパワーや剛性感に臆することはなく、より気軽なマインドでも乗れる点がいい。それでいて従来型の Z 750 に対しては、外観だけでなく乗り味も明らかにグレードアップしているし、コストバリュー的にもお買い得感がある。このデザインが好きで、シート高さえ苦にならなければ、誰にでもおすすめできるマシンと言えそうだ。
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