

掲載日:2011年08月18日 試乗インプレ・レビュー
FAZER8 は既存の排気量区分に一石を投じる新時代のミドルスポーツである。ベースはヤマハのベストセラーモデル、FZ1(FAZER)がベースになっているが、私自身つい最近 FZ1 の試乗をしたばかりで、その印象がまだ鮮明に残っているため比較するには好都合だ。
ライディングポジションは FZ1 に比べるとステップ位置がやや後退して低い位置にあり、ハンドルもライダーに近くなるなど、より快適志向にシフトしてる感じだ。シート高もスペック的には同一だが、前部がより絞り込まれタンクも短くなっているため足着きも良く、全体的にひとまわりコンパクトな印象である。
エンジンは同じ2004年式の R1 をベースにしているが、FZ1 が5バルブの 998cc であるのに対し、FAZER8 は4バルブの 779cc とエンジンレイアウトは異なる。そして、ピークパワーも国内仕様の FZ1 が 94ps/9,000rpm に対して輸出仕様の FAZER8 は 106ps/10,000rpmとなる。そう、ピークパワーでは FAZER8 が上回っているのだ! 5バルブと4バルブの差を感じ取るまでには至らなかったが、出力特性の違いは明らかだ。FZ1 は中速狙いでトルクの豊かなミドルレンジを使って走るのが気持ちいいが、FAZER8 はどちらかというと高回転型。FZ1 より 2,000rpm ぐらい高いレンジにピークがあり、より上昇感が楽しめるエンジンに仕上がっている。それでいて、ストロークはそのままにボアを縮小したロングストローク仕様になっているため、中速域も十分出ている。よくありがちな、ピークパワーを狙って中速が犠牲になるパターンにはなっていないのだ。これはサブスロットルバルブ併用 F.I. による補正効果も大きいと思う。FZ1 に比べると、低中速は扱いやすく、高回転はより伸びやか。ひと口に言うと、そんなキャラクターだ。
フレームや足まわりは FZ1 とほぼ共通ということで、ハンドリングはよく似ている。R1 譲りのコンパクトなエンジンを高剛性なしっかりとしたフレームに搭載することで、エンジンのマスを感じさせない軽快な倒し込みや初期旋回の鋭さは健在。リアタイヤがワンサイズ小さくなって 180 になっていることも影響しているのだろう。高速道路のレーンチェンジやS字の切り返しなどはむしろ軽やかさを増した感じだ。ステアリング舵角の付き方もニュートラルで、速度とバンク角に応じて自然にハンドルが切れてくるタイプなので安心してバイクに身を任せられる。倒立フォークにしてはハンドル切れ角もまずまずで、極低速も安定しているのでUターンも比較的得意だ。
前後サスペンションのセッティングは見直されて、よりソフトタッチになっているようだ。ストローク感があるのは一緒だが、ダンパーをやや抑えて乗り心地を重視した街乗りセッティングになっているように思える。ブレーキに関してはリニアでコントローラブル。ラジアルキャリパーのようなガッツリとした手応えはないが、必要にして十分といったところ。ディスク径も FZ1 よりひとまわりコンパクトになっているが、その分車重も8kgほど軽くなっているのでバランスはとれていると思う。
ハーフカウルも高速巡航にはとてもありがたい装備だ。小ぶりに見えるウインドスクリーンも、首から下に当たる風を和らげてくれるので疲れにくいし、それでいて重さも感じない。その他エクステリアの質感もなかなかのもので、専用設計のタンクやシートカウル、グラブバーのデザインもチープさを感じさせない作りだ。
リッタークラスでは持て余すが 600 クラスでは物足りない。自分にとって本当にジャストな排気量とは…。そんなライダー心理を見事に突いた、ミドルクラスのニュースタンダードになりそうなモデルである。
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