掲載日:2009年10月08日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
乾燥重量166kgという軽量な車体に、リッター換算200馬力オーバーの水冷4ストローク4バルブDOHC並列4気筒エンジン。R6の魅力は、これらによってもたらされる極めてシャープな運動性に集約される。しかし、軽量な車体に高回転・高出力のエンジンを載せれば同じような性能が出せるほど単純なものではない。今回試乗した2008年モデルの素晴らしいポテンシャルも、多岐に渡る改良と熟成、新技術の投入による賜物なのだ。
エンジン関係では、ヤマハ車の中でも最高の数値となる圧縮比13.1:1を実現するために新型ピストンを開発。それにともなうクランクおよびコンロッド周辺の強化、さらにバルブスプリングやカムチェーンにまで及ぶ改良が施されている。また、R1に採用されたヤマハ電子制御インテークをR6にも移植。「YCC-I」と呼ばれるこのシステムは回転数やスロットル開度に応じてファンネル長を2段階に切り替えるもので、中低速トルクの向上や高回転域での伸びを実現しているという。エンジンを回した時に味わえるあの高揚感はこのデバイスによってもたらされていると言えそうだ。
また、車体関係に投入された技術にも注目したい。ヤマハお得意のデルタボックスフレームは、ゼロから見直しを行った完全新設計。旋回性と操縦安定性を向上させるために剛性と強度バランス徹底して追求したという。さらに、車体の重心から離れたリアフレームは、いわゆるマスの集中化を促進するために軽量なマグネシウム製とされており、これは量産2輪車初の装備である。その他、リアアームやフロントフォークの剛性バランスも見直され、リアサスペンションブラケットなど細かなパーツも軽量化。手が入っていない部分がないと言えるほど改良点は多岐に及ぶ。「転ぶ気がしない」と思えるほどのあの安定性も、これらの相乗効果によるものであろう。
地道な機械的改良の積み重ねと革新的な電子制御技術の投入。これらによって、R6の運動性は担保されているのだ。