掲載日:2010年03月29日 特集記事 › Wスタンダード
記事提供/2009年8月1日発行 絶版バイクス4
■取材協力/ビトーR&D Phone 0796-27-0429
エンジンチューニングにおいて、簡単かつ絶大な効果をもたらすのは排気量アップである。ビトーR&Dの“W811”に乗ると、そんな事実に改めて気づかせてくれる。明らかにエンジンが勝ちながら、それを受け止める足まわりにもしっかりとビトー流モディファイを施すことで、笑ってしまうほどの爽快感を味わうことができる。
5速60km/h走行時にエンジンはわずか2000回転しか回らず、ツインらしい明確な鼓動感とともに力強く車体を押し出してくれる。低速トルクはとにかく図太く、1000回転台でもエンジンのギクシャク感はなく、5速オンリーのずぼら運転にも余裕で対応してくれる。
そこからスロットルをガバ開けしてもFCR37はひとつも嫌がる素振りを見せることなくスピードを増し、4000回転に達する頃にはこれがOHCの空冷ツインだとは信じられないほどスムーズで止めどない馬力を叩き出してくる。
ビトーR&DではW650のチューニングにあたって、純正では印象の薄いエンジンに特徴を与えたいと考えた。そのための近道はボアアップだが、スタンダードで72×83mmの675ccエンジンは、ちょっとぐらい排気量を上げてもそれほど変化しない。「ボアアップで変わったぞ!」という感動を与えるには、誰が乗っても分かる変化をつけなくてはならないというのが、数多くのエンジンチューニングを手がけてきた美藤さんの信条である。 |
| JB1タイプのマグ鍛を装着し、フロントフォークとフロントブレーキには純正パーツを使用するモデル。コンプリー卜とともに、的を絞ったチューニングも行ってくれる。 |
そこでピストン径をφ75mm、φ77mmと拡大し、最終的にφ79mmピストンによる811ccにたどりついた。排気量の増加率はスタンダード比で20%となったものの、それでもなおボアストローク比は1・05とロングストローク傾向にあり、さらにあえて圧縮比アップを欲張らなかったことで、ボアアップ車にありがちなギクシャク感を抑えた、優しさと力強さを兼ね備えたフィーリングを実現。スタンダードと比較してその差が歴然なのはもちろん、W811単体で評価して100%楽しいと結論できるほど、このエンジンには個性がある。
上質な足まわりも要注目だ。試乗前には正直、この機種でマグ鍛はどうなんだろう? という思いもあったが、よく締まった節度感のあるサスペンションと軽量ホイールが演出する軽やかな操縦性にまいってしまう。決して軽いだけでなく、安定性もあるので、街中で神経質になることはない。
チューンドバイクというと、使用されるフィールド、あるいは楽しさを感じられる場面が限定されてしまうことも少なくない。だがこのW811は、どんな場面でも痛痒さを感じることなく、それはむしろスタンダードのW650よりもオールマイティに楽しめる仕上がりとなっているのが印象的だった。
スタンダードの前19、後18インチのスポークホイールは前後18インチのマグ鍛(JB2タイプ)に変更され、チタン製集合マフラーと相まってスタンダードのトラディショナルなイメージを一変させている。Wらしいか否か? は見る側の感性によるところだが、万能的スポーツバイクとなっていることは乗ったら一発で分かる。コンプリー卜状態での車両販売価格は200万円(税抜き)。
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