掲載日:2022年07月22日 レトロバイク・グラフティ
イラスト・文/藤原かんいち
ヤマハ・パッソルから始まったソフトスクーター時代。打倒パッソルとして1980年にホンダからタクトが登場。スズキからは1981年にジェンマ50がデビューしたが、どちらかというと男性向け。待望の女性向けのスクーター「蘭(ラン)」が登場したのは1983年のことだった。
花の名前、それも日本語の漢字を使ったスクーターはこれが最初だったかもしれない。その後しばらくして「薔薇(バラ)」まで登場。そういえばスズキには刀(カタナ)というバイクもあったということは、スズキは漢字の車名が好きなのかも(笑)。
広告には同じ名前の元キャンディーズで人気女優「伊藤蘭さん」を起用。当時のキャッチフレーズは『蘭、咲きました。』で、ポスターでは赤いスズキ蘭の後ろで、美しい着物姿の伊藤蘭さんが佇んでいる。とてもバイクの広告とは思えない、華麗なデザインで、テレビCMでも同じように着物姿の伊藤蘭さんが登場していた。
名前ばかりが目を引くが、その内容のレベルも高かった。フルカバーされたボディ、オートマチックトランスミッション、8インチの小径ホイール、低いシート高、セルスターター、リアキャリアなど、小柄な女子でも運転しやすいように作られていた。
80年代前半はスクーター戦国時代で、当時は同じ分野のバイクが飽和状態になっていた。その中でどんな方法でほかのメーカーとの違いを打ち出すか? どんなアプローチで女性ユーザーを振り向かせるか? メーカーにとって至難の業、そんな苦悩が伝わってくる一台なのだ。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!