掲載日:2018年07月24日 トピックス
取材協力/しゃぼん玉本店
文/中村友彦 写真/富樫秀明 記事提供/ROAD RIDER編集部
※この記事は『ロードライダー vol.415』に掲載された内容を再編集したものです。
名古屋のショップ、しゃぼん玉がデモ車として手がけた、2台のGPZ900Rの乗り味を探るべく、1泊2日のスケジュールで伊勢志摩・東紀州方面に出かけてみることにした。そのカスタムバイクツーリングの様子をルートとカスタム車両のインプレに分けて前後編でお届け。今回は後編!
前編はしゃぼん玉がカスタムした'15年型のデモ車両と'16年型のデモ車両、どちらも甲乙つけられないと述べたものの、今回の試乗で僕が最もビックリしたのは、'16年型に予想外の心地よさを感じたことだった。
正直言って今回の試乗まで、僕はスタンダードのニンジャを見くびっていた。でも、しゃぼん玉のニンジャに乗った僕は、'80年代生まれのカワサキ製ビッグバイクならではの重厚なフィーリングと操る手応えに大いに感心し、これはこれで残していくべきものではないか、最近のニンジャカスタムの世界で純正ルックや当時風が見直されるのも当然、という印象を抱いたのだ。
もっとも、僕がそう感じた背景には、同店の入念な整備とカスタムがあって、一般的なニンジャの中古車にそこまでの好印象は持たないと思うけれど、STD+αのニンジャが、こんなにも乗り手の気分を高揚させ、かつ、オールラウンドに使えるというのは、僕にとっては予想外だった。
とはいえ、逆に伊勢志摩スカイラインで2台のニンジャを交互に走らせた僕が、'16年型の運動性能にちょっとした物足りなさを感じたのも事実。もう1台の、随所に現代的な技術と思想が投入された'15年型は、あらゆる反応が軽快&シャープ&ダイレクトで、自由自在でキレ味抜群のハンドリング。
僕はすっかり魅了されたけれど、その感触を身体に残すまま'16年型に乗り換えると、すべての挙動がモッサリしていると思え、接地感や衝撃吸収性も現代的とは言えないので、走るペースはそんなには上がらない。今回の試乗が峠道だけだったら、僕は'15年型の方を大絶賛していた気もしてしまう……。
さまざまな状況を走った今回、僕は'16年型の運動性能が現代的ではないことが、マイナス要素とはまったく思わなかった。先のモッサリした挙動は見方を変えれば穏やかなリズムと言え、それは乗り手にとっての安心感につながるし、接地感や衝撃吸収性は、乗り手の工夫である程度は高められる。
もちろんどんなに乗り手が工夫しても、'16年型は'15年型に速さでは及ばないけれど、常用域で感じる“操る手応え”は'16年型のほうが間違いなく濃厚。いずれにしてもこの2台を通して僕は、バイクの面白さと速い遅いは関係ないことを、改めて認識したのである。
さて、峠道の話に夢中になって、当企画の本題であるツーリングの話をするのを忘れていたが、今回乗った2台はいずれも旅が楽しめる資質を備えていて、パッと見はスパルタンな'15年型も、特性はなかなかフレキシブルだから、荷物の積載という問題さえクリアできれば、数日程度のツーリングは普通にこなせそう。ただし、2台のスポーツとツーリングの資質を比率で表すなら、'15年型=8:2、'16年型=5:5というのが僕の印象で、ロングランを快適に楽しめるのは、やっぱり乗車姿勢が安楽でリズムが穏やかな'16年型だと思う。このあたりは人によって見解が分かれそうだが、しゃぼん玉の2台を体験した現在の僕は、もし自分がニンジャカスタムを作るなら、目指す特性は7:3~6:4あたりかなあ……と感じたのだった。
SHABON-DAMA GPZ900R 2016 CUSTOM Version。STDの基本構成を維持するライトカスタム。
2.50-16・3.00-18のホイールはSTDで、120/80-16・130/80-18のタイヤはダンロップK300GP。このサイズに違和感を覚える人がいるかもしれないが、しゃぼん玉が手がけたデモ車の乗り味は至ってナチュラルだった。38mmフォークはAVDSをキャンセルした上で、ハイパープロのスプリングキットを投入する。
パワーユニットはSTDだが、冷却性を考慮した結果、ラジエーターは純正カウルに対応するしゃぼん玉の大容量タイプに変更
フルアジャスタブル式のリアショックもハイパープロを選択。
燃料タンクを除く外装は、しゃぼん玉オリジナルのカーボン製。寸法はSTDとまったく同じなので、補修部品として使うことも可能だ。ラジアル式のブレーキ/クラッチマスターはIRCで、フロントキャリパーはトキコ片押し1P→ブレンボ4Pに換装。
SHABON-DAMA GPZ900R 2015 CUSTOM Version。現代の思想と技術を投入したスポーツ仕様。
3.50-17・5.50-17のアルミ鍛造ホイールはゲイルスピードで、120/70-17・180/55-17のタイヤはメッツラー・レーステックRRを選択。φ43mmフォークとリアショックはハイパープロ。
エンジンは純正部品を用いて緻密なO/Hを実施。吸排気系はTMRφ36mm+PMCメガホンで、ビッグラジエーターと削り出しのステアリングステム(オフセットは37mm)はアクティブ製だ。
スイングアームとバックステップはKファクトリーを選択。
ラジアル式ブレーキ/クラッチマスターと前後ブレーキディスクもゲイルスピード。ギルズツーリング製セパハンとのクリアランスを確保するため、アッパーカウルには加工が施される。
シートレールはいったん切断した後で、STDより高い位置に再溶接。シングル仕様のシートカウルはしゃぼん玉オリジナル。
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