掲載日:2009年04月07日 名車ライブラリ
ヤマハが68年に発売した本格トレール車DT-1の大ヒットを受け翌年にはスズキからハスラーが発売、いよいよ国内でもスクランブルレースが盛況となっていた1970年。カワサキが満を持して発売したのが、この350TRビッグホーンである。心臓部にはカワサキお得意のローターリーディスクバルブ方式を採用し、最高出力33ps、最高速度150km/hというハイスペックを誇る。この初期型350TRでは、当時他車には無かった豪華な車体装備を採用していた。軽量な前後のアルミフェンダーとアルミH型リムにはじまり、フロントフォークにはトレーリング/リーディングアクスルを任意に選択可能な「ハッターフォーク」、さらにはCDI点火方式の採用などオフロードバイクの黎明期だった当時、新たなカテゴリでイニシアチブを執りたいというカワサキの意気込みをそれらのディティールから感じ取ることが出来る。また広告戦略においても当時のTRシリーズのカタログでは、一貫してウエスタン風のワイルドな男性をカタログモデルとし、他メーカーとは異なるユーザーへのアプローチを行っていたものの、既に圧倒的人気を誇っていたDT-1、ハスラーの牙城を崩すまでには至らなかった。
マッハIIIと同径のスピード・タコメーター。ゴム製の風防はマッハ同様取り外しが可能。トリップメーターは二桁表示である。
キャブレターは大きく張り出したケースカバーの中に。カバーにある大きなマイナスネジはメインジェット交換用の蓋である。
ビッグホーンとは北米に生息する「オオツノヒツジ」の別名。250TRにはバイソン、125TRにはボブキャットのペットネームが付く。
アクスル位置を選択できるハッターフォークは、250TR・175TRにも採用された。前輪は他社に先駆けて21インチを採用。
この車両は左チェンジだが、チェンジシャフトがケースを貫通しているので、右チェンジ仕様に改造された車両も存在する。
人気の高い「ローハイドブラウン」のタンク。細かな違いはあるが、車体の基本構成・デザインは外装を含めて250TRと共通である。
■全長×全幅×全高 = 2,090×820×1,160mm
■軸距 = 1,400mm
■エンジン形式・種類 = 空冷2サイクル・ロータリーディスクバルブ
■総排気量/ボア×ストローク = 346cc/80.5mm×68mm
■圧縮比 = 6.8:1
■最高出力 最大トルク = 33ps/6,500rpm 3.9kgm/5,500rpm
■始動方式 = プライマリーキック
■変速機 = 5速リターン
■タイヤ前/後 = 3.00-21 / 4.00-18
■ブレーキ形式 前 = リーディングドラム
■ブレーキ形式 後 = リーディングドラム
■発売当時価格 = 22万5,000円