掲載日:2022年11月29日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/伊井 覚
Benelli TRK251
1911年にイタリアで誕生した老舗メーカーBenelli(ベネリ)。6人のベネリ兄弟が初めた小さな整備工場はいつしかオートバイを製造するようになり、1950年には世界チャンピオンも獲得。2005年には中国のQ.J.グループに加入、そして2016年にはVOLVOやLOTUSらと同じGEELYの資本参加を受け、新生ベネリとして再スタートを切った。そんなベネリのラインナップの中でツーリングに特化したアドベンチャーマシンが、このTRK251だ。251という車種名でありながら排気量は249cc。日本では車検不要の、250ccクラスとして乗ることができる。
アドベンチャーと一括りにしていてもモデルによってオフロード寄りかオンロード寄りか、あるいはその中間か、キャラクターは大きく分かれている。TRK251のホイールサイズは前後17インチで、タイヤもオンロードタイヤを装着しており、アドベンチャーの中でもオンロード寄りのモデルと言えるだろう。ライバルモデルとしてはスズキのV-STROM250やカワサキのVERSYS-X 250 TOURERが挙げられる。
また、車両重量は176kgとライバル車に比べ若干軽量となっており、シート高は800mmとアドベンチャーモデルの中ではコンパクト。跨ってみて驚いたのはそのステップの位置だ。多くのバイクは着座位置の真下にステップが位置しており、素直に足を下ろすとステップに当たってしまうため、前後に足をずらす必要がある。しかしこのTRK251はステップの装着位置が前にオフセットされているため、足を真っ直ぐに下ろすことができ、結果として足つき性が向上しているのだ。足つきが不安でアドベンチャーモデルを避けていた人でも比較的乗りやすいモデルとなっていると言えるだろう。
エンジンをかけてスタートしてみると、今度はそのトルク感に驚かされた。エンジンは実にスタンダードな水冷4ストローク単気筒なのだが、特に低回転でのパワーがとても大きく感じられる。少し大袈裟な言い方をしてしまえば、まるでモトクロスレーサーのようなパワー感だ。1速でスタートするときに、いつもの調子でクラッチをポンッと繋ぐと、「グン!」と前に押し出される感覚がある。街中で乗る時なら2速・3速スタートを常用してもいいくらいだ。
この特徴のおかげで交差点やコーナーの立ち上がりなどは3速・4速くらいでも軽くアクセルを開けてやればスムーズに加速することができるため、シフトチェンジの忙しなさから解放してくれる。
オフロード寄りのアドベンチャーモデルだとサスペンションが柔らかくセッティングされていることが多いため、そんな加速時にはバイクのセンターを中心にしたピッチング(前後方向のギクシャクした動き)が起きることがあるが、TRK251のサスペンションはオンロード寄りの硬め。これならばストップ&ゴーの多い都内の通勤などに使ってもストレスは感じないだろう。
ボア×ストロークは72.0×61.2mmで、ショートストローク。最高出力は19kW/9250rpmとなっている。試しに高速道路でわざと4速で引っ張ってみたが、9250回転を越えたところで急激なパワーダウンを感じた。しかし6速まで使えば7〜8000回転でも追越車線を悠々と走ることができたので、日本国内で走る限り、全く問題ない。しかもすごいのは9000回転までの吹け上がり方が驚くほどスムーズなこと。どこにもトルクの谷や急な立ち上がりを感じないため、とてもリラックスして乗ることができた。
この「リラックス」という言葉こそが、このバイクを象徴している単語だと思う。先にも挙げたがステップ位置が前方にオフセットしているおかげで、乗車姿勢がとても楽なのだ。窮屈な感じが一切なく、大袈裟な言い方をするとアメリカンバイクやスクーターのように椅子に座っているような姿勢で乗ることができる。さらにステップがワイドで足の裏が疲れないし、コーナーの際のステップ荷重もかけやすい。そしてシフトチェンジを省略しても乗りやすく、エンジン特性も非常に素直だ。
アドベンチャーといえばロングツーリング用途が多いが、250ccではさすがに少々疲れやすい。しかしこのTRK251であれば、かなり疲れ知らずで走り続けることができるのではないだろうか。
ヘッドライトはLEDのツインプロジェクターヘッドライトを採用。まるでV-STROMのようなクチバシデザインと高速道路を快適にしてくれるシールドを備えている。
エンジンは249ccの水冷4ストローク単気筒。最高出力は19kW/9250rpm、最大トルクは21.1Nm/8000rpm。ボア×ストロークは72.0×61.2mmのショートストローク型となっている。
ハンドルはバーハンドルで中心部分が太くなっているテーパーバーを標準装備。さらに両端は手前に曲げられているため、小柄なライダーでも余裕を持ってハンドルを握ることができる。ハンドル切れ角も大きい。
フルデジタルディスプレイは速度、回転数、シフトポジション、燃料計、時刻、走行距離、エンジン温が表示されている。
燃料タンクは18Lを装備。少し大きめでシートからハンドルの距離が遠く感じるが、ハンドルが手前に曲げられているため、操作しづらいということはない。
シートはセパレートタイプでシート高は800mm。シート自体も柔らかく、長時間座っていてもお尻が痛くなりにくいと感じた。こういうところも長距離を想定しているのだろう。
一般的なバイクよりも前方にオフセットして装着されているステップ。このおかげで足を真っ直ぐ地面に下ろすことができ、足つき性が向上している。また、前後にワイドでステップ荷重もやりやすい。
250ccでありながら、標準でUSBソケットが装備されているのもツーリングには嬉しい装備だ。タンクとハンドルの間にあるため、ハンドルに装着するアクセサリーにアクセスが容易。
フロントタイヤサイズは110/70の17インチ。ブレーキディスクは280mmと大サイズ。しっかりと肉抜きされたホイールは軽量化に繋がっている。
リアタイヤサイズは150/60の17インチ。ブレーキディスクは240mm。片持ちスイングアームではないが、サブフェンダーが装着されていて泥除け効果が高い。
マフラーは標準からかなりスタイリッシュで、サウンドもかなりパルス感があり高揚できるもの。低速で得られるトルク感はエンジンだけでなく、このマフラーも大きく寄与していると思われる。
フロントフォークは倒立テレスコピック。ストローク量は決して大きくないが、その分しっかり踏ん張ってくれ、オンロードバイクのような頼もしさを感じる。
タンデムシートの下に収納スペースがあった。書類やETC、車載工具などを忍ばせておくことができそうだ。リアフェンダー下のキーシリンダーで開閉可能。
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