

掲載日:2013年09月12日 試乗インプレ・レビュー
インプレッション/辻 健二郎 まとめ/ダートライド編集部 写真/佐藤 春道
大きく生まれ変わったこのCRF250Rの試乗は、埼玉県にあるオフロードヴィレッジで実施された。この日は前日に集中して降った雨により一部ドロの深い部分があるものの、朝から強烈に照りつける夏の陽射しによりほぼセミドライとなり、走りにくいポイント(鋭角なレール、乾いた中に突然あるマディポイント)がところどころに残るコンディション。
一般走行枠だったのでホビーライダーもいる中で、30分×1セッションの枠でインプレッションを行った。ここからは国際A級ライダーの辻 健二郎選手にバトンタッチして、その実力に迫ってみたい。
「2013年でフルモデルチェンジしたCRF450R同様、ルックスも兄貴分と同じになった2014年のCRF250R。マスの集中化に寄与するショートタイプのデュアルマフラーが採用され、スタンドからマシンを下す際に、車体後部を右手で持った時に、これまでのマシンよりも軽い感じを受けます。跨って各操作系のフィーリングを確認し、そこでも軽快さを感じました。トラック走行ではこの操作系同様に、マシン全体の軽快感も高いものを感じました。様々なパーツをセンターに集中させた事によるマスの集中化に加え、『デュアル・ステージ・フューエルインジェクション』採用による高いスロットルレスポンスを狙った新機構と、ハイコンプピストンの採用がエンジンのレスポンス向上に効果を発揮し、車体を気持ち良く前に出してくれる点が軽さを感じているのでしょう。
これまで、CRF250Rは音量規制と排気量の問題で450ccのマシンに比べ、(アクセル)開け口からのレスポンスが鈍いというイメージでしたが、2014年型のCRF250Rは、エンジン、それにサスセッティングも含めたアクセルの開けに対する応答が機敏になっていて、マシン全体からライダーが軽快に導かれている印象すら受けます。車体(シャシー)の作り方が、2014年モデルでさらにフロントに荷重がかかりやすい姿勢にセットされた事で、コーナー進入時にはライダーが積極的にマシンを傾けるような動作をしないでもとても曲がりやすく、コーナーリングのモーションも作りやすいです。恐らく、これまでのCRF250R以上に曲がりやすくなった傾向だと思います。スイングアームも見直され、コーナー脱出時のトラクションを向上させる狙いがあり、より高い速度でのコーナリングを目指している点も効いているのだと思います。
しかし、そういった軽快感があり旋回性も高いエンジンとシャシーながら、気になる点もあります。低回転から少し回り始めた回転域では、レスポンス良く前に押し出されるパワー特性なのに、その直後でトルクの落ち込みがあり、トラクションが抜けてしまいがちなのです。アクセル開け始めの素晴らしいトルク感が一旦失われ、再度パワーカーブが盛り上がるような印象を受けるのです。この傾向は、同日にこの前に乗ったCRF450Rでも感じたもので、その時と同じようにCRF250RもHRC推奨というPGM-FIセッティングに書き換えをしてみました。ホンダのCRFシリーズは、専用のツールを使う事で燃料噴射量と点火時期をライダーの好みに調整出来るのです。
PGM-FIのセッティングを変えた事で起きた変化は、中回転域を多用出来るように変更した事で、アクセルの開けとリアショックの沈み込みが綺麗に連動するようになり、マシンコントロールが非常に良くなりました。ノーマルセッティングでも曲がりやすさは感じていましたが、これがさらに向上し、とても乗りやすくなりました。割り当てられたライディング枠の残りをフルに楽しんでしまった程です。ただ、この変更は中回転域だけを注視したセッティングなので、ノーマルの開け口付近で感じられた高いレスポンスからそのままの流れで中高回転にスムーズに移行できるパワー特性を味わいたい、と感じたのも本音です。パワーユニットの変更で乗りやすさを追求したいユーザーは、ソフトウェアの使いやすさを向上させたPGM-FIセッティングツールを使って追い込むと、より戦闘力の高いマシンに仕立てあげられるでしょう。
総括すると、今回フルモデルチェンジしたCRF250Rは、まとまりとしてはレベルが高かったと感じます。操安性能の向上と軽快感の向上は、ライディングゾーンを選ばず支持され、ビギナーが乗りやすい、レーシーなライドにも活きる部分を持ったマシンと言えるでしょう。後は各レースでの結果が実力を実証してくれる事でしょう。」
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