掲載日:2013年06月27日 特集記事
文/ダートライド編集部
株式会社カワサキモータースジャパンは、モトクロッサー・KXF シリーズの2014年モデル発売を発表した。カワサキの KXF というと、モトクロスが活発なアメリカとヨーロッパで数多くの好成績を記録しているのが印象深いが、2014年モデルは4ストローク 450cc が小変更、250cc はエンジンなどに手が加えられたが、こちらも変更としては僅かなもの。レースでの実績をフィードバックした熟成と思うが、その内容を紹介したいと思う。
まず、最大排気量になる KX450F だが提供された資料に目を通すと、『NEW』となっているのはハンドルグリップだけとなる。記述は、「軽量なハンドルグリップは、新しい素材と新しいグリップパターンを採用。優れたグリップ感とクッション性をライダーの手に伝える」とあり、本当にこれだけなの!? と、思わず目を疑いたくなる。正直それだけならグリップを新しいものに換えるだけで2013年モデルも新型になるのでは、と思うが、もちろんそれだけではない。『強力なフューエルインジェクションパワー』と謳っているエンジンは、「ファクトリーマシン直系のエンジンチューニング」とし、特徴的な2010年モデルから採用されたブリッジド・ボックスボトムピストンはもちろんの事、くさび形のクランクウェブを採用する事で回転モーメントを増加させて、クランクシャフトのバランス率を向上。この2014年モデルのバランス率は、「AMA ライダーのライアン・ビロポートのファクトリーマシンに匹敵する約 60% 」になっていると言い、得られる効能は、「これによりエンジンの振動を低減させ、スムーズなパワー供給とパフォーマンス向上を実現し、特に低回転時の優れたレスポンスに貢献している」と言う事だ。
その他、新旧の記述はないが気になる項目は、
・KX FI キャリブレーションキット(オプション)による木目細かいエンジンチューニングが可能
・レース中のエンジンストール時にできるだけ早い再始動が出来るよう、ACR(Automatic Compression Release)システムを搭載し、容易な再始動を実現
・スプロケット型チェーンドライブローラーを採用し、ライダーがスロットルを素早く戻した際にチェーン下側の急激な張りによる衝撃を緩和する事で、エンジンブレーキのコントロール性が向上し、よりスムーズなコーナー進入を可能にする
・シャーシバランスとセッティングは、すべて熟練したライダーを基準にセットアップされ、重心位置や主要寸法は、リヤタイヤが車体を沈めるのではなく、前方に押し出す力に重点を置いた設計を施した
・リヤショックのタンクシリンダー内側にもカシマコートを施し、フリクションを低減してスムーズなサスペンションの動きを実現
となる。その他、2013年モデルで導入された交換可能な DFI カプラーを採用した3種類のマップから選択可能なDFI セッティングや、左右フロントフォークのメインスプリングをコイルの代わりに空気ばねを使用する KYB 製のニューマチックスプリングフォーク(PSF)など昨年からの特徴は継続採用されている。
KX450F は冒頭に述べたように、2013年のAMAスーパークロスではチャンピオンを獲得し、アウトドアになる『モトクロス』でもライアン・ビロポート選手はポイントランキングをトップで快走中。FIM モトクロスでもゴーチェ・ポーラン選手が表彰台に登壇し、ラウンド9が終わった時点でランキングで2位に着けている。色々と変更を加えるよりも熟成度を深める方向が正常進化だったのだろう。ちなみに、2014年版は KX ブランドをこの世に送り出して40年が経つ記念のモデルになると言う事だ。
KX250F は2012年モデルからのブラッシュアップを受けた2013年モデルを中心に、450cc より見直された点は多い。KX450F と共通のグリップの小変更に加え、ダイレクトに走りに影響する次の変更を受けている。
・フロントエンジンブラケットを 4.5mm スチール製から 3.2mm 高張力鋼製に変更。車体の前後(縦)剛性を高めてハンドリングとグリップ性能を向上させた
・フロントサスペンション左側チューブのダンピングアッセンブリーにあるメイン/サブピストンを変更し、初期作動からミッドストロークの減衰力を改善している
・リヤショックバルブセッティングを変更し、乗り心地を向上させると共に、減衰性能を改善しすべてのストロークレンジで不均衡を解消している
となり、その他細かい部分は KX450F と共通の特徴が多い。2013年モデルで Type2 に進化したショーワのセパレートファンクションフロントフォーク(SFF)は KX450F と最も異なる点で、旧来のコイルスプリングを使用するが、左側フォークチューブにダンパーアッセンブリーを、右側フォークチューブにスプリングをと別々に機能を振り分け、スムーズな作動性と優れた減衰性能を目指す。プリロード調整が右側フォークチューブ天面に備わるダイヤルで調整出来るなど、メリットは多い。走りには直接関係しない点では、フロントとサイドのゼッケンプレート、リヤフェンダーがブラックからホワイトに変更され、KX450F と共通の外観になった。
KXの設計理念は、「中級レベルのライダーからエキスパートライダーまで表彰台の頂点に立たせる、というシンプルなもの」とメーカーでは言っていて、敷居の高さを感じなくはないが「勝ちたい」ライダーの理想を叶える強力なパートナーとなるだろう。
価格は、KX450F が879,000円、KX250F が735,000円(ともに税込)。発売日は共通で、2013年7月10日を予定している。
KX450F | KX250F | |
車名(通称名) | KX450F | KX250F |
全長×全幅×全高 | 2,180mm×820mm×1,275mm | 2,170mm×820mm×1,270mm |
軸間距離 | 1,480mm | 1,475mm |
最低地上高 | 330mm | 330mm |
シート高 | 955mm | 945mm |
キャスター/トレール | 26.9°/ 113mm | 28.7°/ 126.4mm |
エンジン種類/弁方式 | 水冷4ストローク単気筒 / DOHC4バルブ | 水冷4ストローク単気筒 / DOHC4バルブ |
総排気量 | 449cm3 | 249cm3 |
内径×行程/圧縮比 | 96.0mm×62.1mm / 12.5:1 | 77.0mm×53.6mm / 13.8:1 |
始動方式 | プライマリーキック | プライマリーキック |
点火方式 | デジタル DC-CDI | デジタル DC-CDI |
潤滑方式 | セミ・ドライサンプ | セミ・ドライサンプ |
エンジンオイル容量 | 1.2 L | 1.0 L |
燃料供給方式 | フューエルインジェクション KEIHIN 43mm | フューエルインジェクション KEIHIN 43mm |
トランスミッション形式 | 常噛5段リターン | 常噛5段リターン |
クラッチ形式 | 湿式多板 | 湿式多板 |
ギヤ・レシオ | 1速:1.750(28/16) 2速:1.412(24/17) 3速:1.188(19/16) 4速:1.000(19/19) 5速:0.875(21/24) | 1速:2.142(30/14) 2速:1.750(28/16) 3速:1.444(26/18) 4速:1.235(21/17) 5速:1.045(23/22) |
一次減速比/二次減速比 | 2.727(60/22) / 3.846(50/13) | 3.350(67/20) / 3.846(50/13) |
フレーム形式 | セミダブルクレードル | セミダブルクレードル |
懸架方式 | 前:テレスコピック(倒立・インナーチューブ径48mm) 後:スイングアーム(ニューユニ・トラック) | 前:テレスコピック(倒立・インナーチューブ径48mm) 後:スイングアーム(ニューユニ・トラック) |
ホイールトラベル | 前:314mm 後:315mm | 前:315mm 後:310mm |
タイヤサイズ | 前:80/100-21 51M 後:120/80-19 63M | 前:80/100-21 51M 後:100/90-19 57M |
ホイールサイズ | 前:21×1.60 後:19×2.15 | 前:21×1.60 後:19×1.85 |
ブレーキ形式 | 前:シングルディスク252mm(外径) 後:シングルディスク240mm(外径) | 前:シングルディスク252mm(外径) 後:シングルディスク240mm(外径) |
ステアリングアングル (左/右) | 42°/ 42° | 42°/ 42° |
車両重量 | 112.5kg | 106.2kg |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン | 無鉛プレミアムガソリン |
燃料タンク容量 | 6.2 L | 6.1 L |
乗車定員 | 1名 | 1名 |
カラー | ライムグリーン | ライムグリーン |
メーカー希望小売価格 | 879,000円 (本体価格837,143円、消費税41,857円) | 735,000円 (本体価格700,000円、消費税35,000円) |
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