掲載日:2012年08月27日 オフロードFAQ › オフロード競技の疑問
単純な着順やタイムではなく、
区間タイムなどを合計して勝敗が決まるレース形式です。
オフロードバイクのレースフォーマットのひとつに“エンデューロ”があります。“モトクロス”と対で使われる事が多く、モトクロスが整地・造成されたオフロードコースを走る“スプリント形式”に対し、エンデューロは自然の地形をそのままコースにしたタフな設計で、走り切った着順を競います。そのエンデューロはさらに細分化する事ができ、純粋に速さを競う“クロスカントリー”と、今回紹介する、ややルールが複雑になる“オンタイム制”があります。
このオンタイム制エンデューロについて、とても参考になる資料がいつくかありますので、ご紹介しましょう。
オンタイム・エンデューロとは?
JECやJEC Litesの“オンタイム方式”というのは、チェックポイントをあらかじめ決められた時間に間に合うように通過し、スペシャルテスト(SS)で速さ=タイムを競うという競技形態で、FIMのエンデューロ世界選手権や各国のナショナル選手権、また年に一度、国別チーム対抗で行なわれているISDE=インターナショナルシックスデイズエンデューロにも採用されている世界標準のルールでもあります。もっとも人気のあるSUGOツーデイズエンデューロや北海道の日高ツーデイズエンデューロでは、1周25~60kmのコースの途中に2か所のチェックポイントが設けられ、スペシャルテストは3か所。これを1日に3~5周し、スペシャルテストの合計タイムを競います。タイムチェックポイントへの到着が遅れると1分につき60秒のペナルティが加算。成績に大きく響きます。スペシャルテストでの速さ、タイムチェックからタイムチェックまで確実に走りきるライディング技術のほか、整備できる時間と、交換できる部品を制限することで、バイクの信頼性・耐久性も試されます。メカニックなどの第三者は、原則としてバイクの整備をすることができない(*注)というのも、オンタイム方式のエンデューロの特徴です。スピードだけではなく、信頼性・確実性といった、バイクとライダーの総合的な能力を試す競技であるということがいえます。
(*注.ゼッケンの清掃、油脂の補給・調整、タイヤの空気圧の調整、ブレーキのエア抜き作業の補助などは、第三者による作業が認められています。)
オンタイム制とは?
■エンデューロの形式のひとつ。
■制限時間内での周回を競うクロスカントリーに対して、テスト内でのタイムを競う。
■テスト外(ルート)では、オンタイムで時間通りに周回することが求められる。
□早着、遅着ともにペナルティとなる。
・早着はコントロールできるが、遅着は……。
・早めにチェックポイントまで来て、時間まで待つのが基本。
・これをいかにギリギリに設定するかがコース設定者の醍醐味。
SUGO 2DAYSというレース
■全日本エンデューロのひとつ。
□本格的オンタイムルールを採用した数少ないレース。
■タイムチェックは2か所(2006、2007年は1か所だった)。
■1日の最終周に15分のワークタイム。
■翌朝、10分のワークタイム。
■毎周、ピットに戻ってくる時に時間が余っていたらピット作業可能。
□最終周のみ、ピット前でタイムチェックがあるため、時間まで入場不可。
■独自ルールあり。
□1日目終了後、タイヤ交換することで1本につき1分のタイムボーナス。
・ISDEに向けて、それくらいはチャレンジしてみろ、というメッセージ?
・ムダとかいわず、楽しみたい(余裕があれば)。
基本的なルールは?
■スタートは数台(4台くらい)がひとまとめに、1分毎。
□スタートが同じ組なら、その後は毎周同じ時間に通過する。
・不思議な仲間意識が生まれたり。
・ペナルティで遅れると、後の時間にずれ込む。
・あれ? あの人こないの? とかなるとちょっと寂しい。
■チェックポイント
□通常、コース途中にもチェックポイントがある。
・運営上、ないこともある(周回ごとのチェックのみ)。
・SUGOだと、1か所あったりなかったり。
□チェックポイントを、指定された時間に通過する。
・13:34が指定時間なら、13:34:00~13:34:59の間。
■遅着
□指定時間から遅れてタイムチェックすると、遅れた時間がペナルィティとして積算される。
□遅れは取り戻すことはできない。
□遅れた時間分、次のタイムチェックも遅れていく。
・10分遅れたら、次のスタートも10分遅れる(開始が10分遅れた為)。
・その後のタイムチェックもすべて10分遅れる。
・さらに5分遅れたとすると、全てが15分遅れになる。
□遅着したのに次に最初の予定通りにチェックすると、“早着”になる。
・例)11:00着のところ11:01着だった。持ち時間30分で次のチェックが11:30。
11:30にチェックしてしまうと、1分の早着になる。11:31にチェックするのが正解。
□時間の“指定”として考えず、コースに対する“持ち時間”として考える。
・10分遅れたこの時間が次のスタート時間だから、今の時間からコース持ち時間分足した時間が
次のスタート。
□遅着したら、遅れ時間を書き足していくとよい。
■早着
□指定時間より早くタイムチェックすると、早かった時間の絶対値ぶん、ペナルティとして“加算”される。
・早くタイムチェックしても、ペナルティが増えるだけ。
・遅れを挽回するどころか、ペナルティが増えてさらに計算も面倒に。
□早く着いたらどうするの?
・早く着いて、時計の前で待ってタイムチェックするのが基本。
□もし早着しちゃったら?
・次のスタートが早くなった事になるので、次のゴールも早くなる。
・例)13:10のところを13:09に通ってしまった。次のゴールが13:40だったら13:39になる。
用語
■ルート
□テスト以外のコース。
□タイムは競わないが、時間内にチェックポイントまで行かなければならないので厳しい。
□普通のレースと違って、ここで抜いたから順位が、というのはない。けっこうマッタリ。
・どけー!! なんてやる人がいないし、皆がバラけてるので気楽に走れる(特にCクラス)。
■テスト
□テストで計測した時間の合計がその人の成績となる。
□テストの前にチェックポイントがあって、ゴールまでの時間を計測する。
□スタート時は、一人ひとり間隔を置いて順番にスタート。
・前に遅そうな人がいたら、ちょっと時間をおいてみるのもアリ。
・混んでる時は諦めましょう。
□テスト内で追いつかれたら?
・テストなんだから、自分の精一杯で走ってOK。
・とはいえ、明らかにスピードが違う時は譲った方が自分も楽だったり。
・その辺は、まぁ適当に。
□ゴール時はそのまま通過する。お疲れ様でした。
■パルクフェルメ
□バイクの保管所。フランス語でParc-Fermes、閉ざされた公園、らしい。
□車検後、ここにバイクを保管したらあとは整備も何もできない(一切触れない)。
□スタート前に指定時間にパルクフェルメに入場、指定時間にワーキングエリア入場、指定時間にスタート、という流れ。
□ゴール後、またパルクフェルメに入れる事になる。
・整備はその前のワーキングタイムで終わらせておくように。
ピット作業
■外野はなにをやっていいの?
□必ずレギュレーションを確認する事(人の言う事を信じるな)。
□工具の手渡し。
□ガソリン、ラジエーター液、オイル、空気の補給。
■禁止事項
□水道からのホースでの洗車、洗車機。
□電動工具(コードレスはOK)。
□エアーツール(空気入れはOK)。
□チェーンオイル(ライダー本人がする事。サポートは出来ない)。
ファイナルクロス
■SUGOの国際格式モトクロスコースを使ったスプリントレース。
□コンディション、クラスによってはSUGO名物の“大坂”も使用。
□モトクロスに詳しくなくても、ちょっと感激モノ。
■モトクロスの経験がない人は、スプリントのキツさを覚悟しておくように。
■Cクラスのレベルでも、相当に白熱します。
■スタートゲートを使った練習も必要。初体験だとタイミングが全然つかめなくて集団に埋もれてしょんぼり。
Tips
■タイムカード
□タイムカードを毎回提出してチェックしてもらうので、タイムカードを持ち歩かなくてはならない。
□普通、ウェストバッグに入れれば問題なし。
□専用の入れ物でバイクに付けると便利。
□タイムカードはバイクに付けておいたほうが無難。ジャケットのポケットに入れておいたが、2日目の最終チェック(ファイナルクロス前)で、後はパルクフェルメに入れるだけと安心してジャケット脱いでタイムチェックに行ったらタイムカードがなくて、あわててピットへダッシュ。
■タイムチェックの時間
□自分の予定のタイムチェック時間をガムテープに書いてどこかに貼っておく。
・バーパッド、ガソリンタンクなど。
・第1、第2のチェックポイントを色分けしておくと見やすい。
・水に濡れても消えないペンで。
□修正用に、バーパッドにペンを挟んでおく。
・油性で。
□右側にスペースを空けておく。
・遅着したら+1とか書いていく。
■時計
□バイクに1つ以上、身体に1つの時計を着けておくべし。
□アナログかデジタルかは、自分にとって見やすいものを。
□ストップウォッチを毎周リセットして計るのはやめたほうが……。
・やり損ねたら致命的。
・2つ以上時計を着けた状態でストップウォッチも用意する、ならOK。
・リエゾン中に、遅れているか余裕があるかの判断はしやすい。
トラブル例
■以下、大前提として、鵜呑みにせずにレギュレーションをチェックする事。
■超早着
□遅着すると、ゴール時間が後にずれてくるが、それを忘れてそのままゴールしてしまったCRF250Xの某早着さん
・いやー、調子よく戻ってきたらゴールに誰もいなかったんだよね。それでそのまま……。
・人がいなくても自分のゴールは自分で管理しましょう。
・Cクラスのゴールは、他より早いのでまだ人が溜まってないかも。
□時間指定でなく、コースに対する持ち時間が決まっている、と考える。
□10分遅れてチェックしたら、次のスタートも10分遅れる。よってゴール時間も10分遅れる、と考える。
■遅着の結果の早着
□11:00のところ1分遅れて11:01にチェック。
□持ち時間30分なので、次は11:30の予定(遅着により11:31になったが)。
□そのまま11:30にチェックすると、1分の早着。
□次のタイムは、11:30からになるので予定通り。
□というわけで、予定通りにはなるけど、ペナルィテが倍になる。
・遅着+同じ時間の早着、となるため。
■タイムオーバーは?
□初日に40分だか50分だかの大幅タイムオーバーしたあるライダーに、「そんなにペナ食らったら、うちらのレベルじゃもう完走は無理ムリ! 明日は釣りにでも行ってくれば?」と2日目を走らせなかった。そうしたら、遅着ペナルティは“2日間で60分までOK”と思ってたけど、実際は1日につき60分でした……。
・そうなんでしたっけ? という事になるので要確認。
■時計はどこ?
□タイムチェック、特にゴールの時計の場所とラインの場所は事前にチェックしておきましょう。
□間違ってラインを通っちゃって、1分早着した人います……。
□一度ラインを通ったら、そこで決定。
・タイムカード渡すの遅らしたりしてもムダです。
■ガソリンを入れ忘れた
□1日目終わって風呂に入っていると、ふとガソリンを入れてないのに気がついた。
□バイクは既にパルクフェルメに保管されており、スタートまで触れない。
□朝、ガス缶をスタート前のワーキングエリアに運んでおき、ワークタイムで給油。
□なんとかなったが、あとで回収するのが面倒だった。
■テストでハマった
□テストでそこそこのペースでいいな♪、とか思ってたら、沼でハマって30分以上。
・ペナルティは付くし、テストのタイムは最悪だしで、一気に最下位。
□テストでだけはハマらないように。
■時計がない
□バイクに2つ時計があるから完璧!
□とか思ってたら、パルクフェルメ入場待ちの時って時計ないんですね……。
・入り口には公式の時計があるので何とかなったけど、なんだか不安(手持ちぶたさ)。
□腕時計もあるといいなぁ、と感じた。
■時計が初期化されていた
□ピット設営してバイクのチェックして、完璧!
□と思ったらデジタルメーターの時計が初期化されていた。
・前日、バッテリーを外して充電したからだ……。
□どうせ当日に公式の時計に合わせるんだからいいけど。
□時計の合わせ方は覚えておこう。
■1日目の2周目でコケてマフラー曲がってションボリ
□なんとか夕方までに頑張ってマフラー直したら、二日目も走れます。
□リタイヤ、タイムアウトでも二日目は走れます。
・翌日、再度車検を行い、競技続行ができます。リザルトは出ますが表彰対象から外れます。
・完走ではないのでファイナルクロスは出られない。
■マーキングはどこにされるの?
□レギュレーションに書いてあるので確認すること。
□参考までに2008年は、
・ステアリングヘッド右、前後ホイールハブ、クランクケース右、サイレンサー、スペアタイヤ。
■カメラは意識しないほうが吉。かっこいいところを撮ってもらおうと頑張ったら、エンストしてしょんぼり。しかもクロステストの最中。
ここまで読まれた方は、とても難しい、きつい、という印象を持たれたかもしれません。しかし、例えば“JEC-Lites(ライツ)”というイベントは、その難しい、きついを取り除いた形式とし、オンタイム制の敷居を下げています。
具体的には、
・ルート(リエゾン)が無く、“テスト”のみのコースで、テストのスタートに隣接してパドックがある(休憩ポイントが近い)。
・コースを1周する時間は定められておらず、決められた時間内で決められた周回数をこなせばよい。
・タイムチェックは基本的にスタートとゴール時間のみとなる。
・1日だけのレースなのでワークタイムの設定は無い。
・コース途中のCT(チェックポイント)が無い。
・タイムチェックが無いので遅着・早着が無い。
・ピット作業は他人の協力があっても構わない。
・イベントによってはファイナルクロスがある(2012年9月2日に新潟・川西で開催されるイベントも該当)。
となっています。周回コースを1周走ってそこでパドックに一度戻って休憩してもいいし、まとめて何周かに分けて決められた周回数をクリアしてもいい。さらに、モトクロスコースを使う事が多く、深い泥にハマったり、急な斜面や滑りやすい木の根っこに遭遇する事もない。
モトクロスのように20分ぶっ続けで走るキツさもないし、本格的なエンデューロのように上から下まで泥だらけ、という事も少ないのです。とても気軽に、オフロード走行とレースっぽい楽しみ方ができるよう工夫されています。
JEC-Litesを主催するJEC PROMOTIONSとしては、トレール車で開催地まで往復自走も可能、というスタンスで取り組んでいます。オフロードマシンを持っているが、土の上は走った事があまりない、“レース”特有のギスギスした雰囲気が好きじゃない、というユーザーは、ぜひ一度出場してみてはいかがでしょうか? (ダートライド編集部)
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