『第八回 一将祭り』戸田蔵人が脊椎損傷でも見せたライド!!

掲載日:2012年12月14日 エクストリームモトクロス    

写真・文/ダートライド編集部

『第八回 一将祭り』戸田蔵人が脊椎損傷でも見せたライド!!

2012年の一将祭りは特別な想いに
戸田蔵人の気迫に多くのライダーが参集

2012年11月25日(日)、茨城県にあるモトクロスコースMX408で、現役IA1(国際A級)ライダー増田一将(かずまさ)選手によるファン感謝祭、『一将祭り』が開催されました。毎年、キッズから名だたるレジェンドまでもが集う、オフロードバイク運動会のような雰囲気で行われる本イベントですが、8回目を迎える今回は、かつてないビッグトピックスが用意されました。

 

それは、“戸田蔵人(くらうど)”という元スズキファクトリーライダーが4年振りにバイクに乗る、というものです。戸田選手は2008年に合同ライディングテスト中、大きな事故に会い、その時の大怪我で胸から下が完全麻痺状態になり、動かす事はおろか何も感じる事が出来ないという状態になってしまったのです。それから4年間、リハビリを続けながらあらゆる治療法などを試していますが、どれも回復の決定打にはなっていません。胸から下が動かない、という事でライディング中に足を出す事どころか、腹筋背筋も使えない状態で、普通の感覚ではオートバイに、しかもモトクロスコースを走るなど、思いつきません。

 

ところが今回、戸田選手の懸命な復活への姿勢に共感した周囲の人たちによって、「そろそろバイク乗ってリハビリだな!」という話になり、彼の身体でも乗れるバイクを考え、それが着々と出来上がっていったのです。事前情報で同じMX408でプレランに成功した、という話は聞いていましたが、正直、この挑戦はとても困難なものだと考えていました。

 

そういったトピックスを抱えながら迎えた当日ですが、前々日に降った雨の影響でコンディションは想像以上にマッド(深い泥だらけ)。普通のライダーですら手を焼く路面状況で、流石に戸田選手のデモランは難しいだろうと、路面が乾き始める午後にタイムスケジュールが変更されました。会場は彼の復活を見届けようとする多くのモトクロスファンと、戸田選手が現役時代の同世代IAライダー。それに加え、多数の現役ライダーが集まりました。

当日は雲ひとつ無い快晴でしたが、路面はご覧のように深い泥と水たまり。タイヤがかなり埋まる箇所もあり、走行はかなり難しそうです。

当日は雲ひとつ無い快晴でしたが、路面はご覧のように深い泥と水たまり。タイヤがかなり埋まる箇所もあり、走行はかなり難しそうです。

IA1現役スズキファクトリーライダーの熱田孝高選手も登場。いつもと違い、4ストローク250ccを駆ります。

IA1現役スズキファクトリーライダーの熱田孝高選手も登場。いつもと違い、4ストローク250ccを駆ります。

昼休みに開催された、モトクロス黄金時代を飾った当時のウェアをコンテストする『Legendary wear コンテスト』。

昼休みに開催された、モトクロス黄金時代を飾った当時のウェアをコンテストする『Legendary wear コンテスト』。

 

そして、いよいよ路面コンディションの回復を待っての戸田選手によるプレランです。車椅子から大勢に持ち上げられバイクのシートへ。特別にカスタムされたマシンは、自由の効かない下半身はしっかり固定&ガードされ、両手で前後ブレーキ、シフトチェンジ(基本的にはオートシフター)が可能になっています。それでも、何かあったら肩か頭から転倒です。しかし戸田選手はスルスルッと走り出し、1周目はゆっくり路面の状況を確認しながらも、かつてのライディングスキルを活かした上半身だけの荷重抜重で各セクションをクリア。

 

2周目からは明らかにペースが上がり、随伴した多くのプロ級ライダーたちも彼に続きます。この姿を見て、コース脇のギャラリーも大興奮なのですが、騒ぎ立てるわけではなく一種独特な静寂が支配する不思議な空間に。あまりの感動と衝撃に心が震えてしまい、騒ぎ立てられないのです。トータル3周のパレードラップを終えてスタートラインに戻ってきた戸田選手は、多くのファンとライダーに囲まれながらマイクを手に取り、「ケガを負った直後、歩けない事より何より、バイクに乗れなくなった、という事がいちばん辛かった」と、その素直な気持ちを吐露。号泣とまではいきませんでしたが、やはり時々言葉に詰まりながらの一言一言は、誰の胸にも染みた筈です。戸田選手を囲むように並び揃った多くのライダーも、彼のこの日の復活を心から祝福していました。

戸田選手用にカスタマイズされたKTM 350SX-F。大きな背当てとフットガードが特徴的です。

戸田選手用にカスタマイズされたKTM 350SX-F。大きな背当てとフットガードが特徴的です。

特殊なキットを使い、両手だけですべてのコントロールが出来るよう、手が加えられています。

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