ボルト/ナットの落下防止に込めたソケット工具専業メーカーのアイデア

掲載日:2018年06月28日 メンテナンス    

写真・文/モトメンテナンス編集部  記事提供/モトメンテナンス編集部
※この記事は『モトメンテナンス vol.129』に掲載された内容を再編集したものです

前回、金属板の張力によってスパークプラグをホールドするko-ken=山下工業研究所製のソケットを取り上げたが、今回も引き続きボルトやナットを保持する機能を持つソケットを紹介してみよう。

ソケット工具が活躍する場面を考えてみると、ラチェットハンドルとの組み合わせで素早く連続的にボルトを回せる利便性があるのはもちろんだが、グリップとボルトナットに接触する部分が一体で、基本的に平面上にあるスパナやメガネレンチに対して、それらが届かない奥深い場所にボルトナットが取り付けられているような時にも能力を発揮する。グリップとなるラチェットハンドルとソケットの間にエクステンションバーをセットすれば、ボルトナットのセット位置が50mm、100mmと深くても余裕で届き、回すことができる。

だたこのような場合、外れたボルトナットの回収方法を考えなくてはならない。長いエクステンションを必要とする作業環境では指先が届かず、ピックアップツールなどで拾わなければならないことが多い。外すときはどうにかなっても、セットする際にボルトナットの狙いが定まらず、横向きに倒れたりしてイライラすることもある。そんな時、ソケットとボルトナットの隙間にマスキングテープなどを詰めてはめ合いをきつくした状態で目的地までソッと運ぶテクニックでその場をしのぐ、ちょっと経験豊富で応用の利くメカニックもいる。

そうした“現場の知恵”に頼ることなく、狭くて手が届かない所にあるボルトナットを保持できるのが、ko-kenの「ナットグリップソケット」と「グリップリング付きヘックスビットソケット」である。

前者はソケットの六角開口部の対向する2カ所の小さな金属製ボールで、後者は六角軸の先端近くにセットされた金属製のグリップリングによって、ボルトナットや六角穴のキャップボルトをしっかりホールドする。どちらもボルトナットにセットする際にわずかな手応えがあり、横向きや逆さにしても落下しないので、外したボルトを引き上げる際も、指先が入らないような狭い隙間の奥のメネジにボルトを運ぶ際も容易に作業できる。

ボルトナットを保持する仕組みとしては、磁力や樹脂によるフリクションを利用する製品もあるが、アルミやステンレスなど非磁性素材には使えなかったり、樹脂の摩耗でホールド性が低下するという弱点がある。それらに対して、物理的なメカニズムでホールドするko-kenのナットグリップは相手素材の種類を問わず使用でき、経年劣化による影響も皆無。

通常、締め作業の最初の段階からメガネレンチやラチェットハンドルを使うのは、ビスやボルトを指で摘まんで回すより大きなトルクが掛かるためメネジを傷めるリスクがあり御法度とされている。だがソケットを直接回すのなら問題はない。かえって、指先で摘まみにくい背の低いボルトに対しては、ナットグリップソケットを差し込むことで手回しが容易になる利点もある。

ここでは使用頻度の高いサイズをまとめたセット工具を紹介しているが、それぞれのソケットは1個ずつでも購入できるので、その実力を知りたいなら普段の作業で不便さを感じているボルトのサイズだけでも手に入れてみよう。きっとホールド機能の実用性の高さを実感できるはずだ。

手前がナットグリップソケットレールセットRS3450M/8(税別希望小売価格8,850円)で、ラチェットハンドルの差込角は3/8インチ、セット内容は8、10、11、12、13、14、17、19mmの8個組。セットには含まれないが、単品として18、21、22、24mmもある。奥はヘックスビットソケット(グリップリング付き)RS3015M/8-L62(税別希望小売価格1万800円)。サイズは3、4、5、6、7、8、10、12mmの8個組。ビットの全長は62mmで、他に全長100mmの製品もある。

ナットグリップソケットは、向かい合う2面にセットされたスチールボールを、ソケット外周の金属製スプリングで締め付けている。ボルトに差し込む際に押し戻されるボールは、このスプリングの張力で保持される。ヘックスビットソケットのグリップリングはC型形状で直径は六角軸よりわずかに大きく、キャップボルトの六角穴に押し込む際に抵抗となって落下を防止する。

ソケットで緩めて外したボルトナットが落ちないことで、深い穴の底にあるボルトに限らずソケット先端に指を添える必要がないのは、作業の快適性をアップしてくれる。

エンジンカバーにキャップボルトが使われる場合、何本ものボルトを連続して着脱することになる。グリップリングでボルトを保持することで、ソケットから外れて床に転がるボルトを追いかける手間が大幅に省ける。

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