掲載日:2018年06月29日 メンテナンス
文/丸山淳大 写真/モトメンテナンス編集部 記事提供/モトメンテナンス編集部
※この記事は『モトメンテナンス vol.109号』に掲載された内容を再編集したものです。
バイクのサスペンションの動きは、マウントボルトの締め付けトルクや可動部分のグリスに少なからず影響を受ける。つまり、ボルト類が最適なトルクで締め付けられ、各部に最適なグリスが適切な量塗布されていることで、サスペンションはその性能を100%発揮できる状態になるのだ。
サスペンションの動きはバイクの運動性能に直結するので、万全にメンテナンスしておきたいものである。また、グリス分の不足は金属の錆に直結することになる。グリスアップによって腐食を防ぐことで部品の寿命は確実に長くなるはずだ。
もちろん、メーカー出荷時の状態でバイクの性能は充分に発揮できるように公差の範囲内で締め付けトルク、グリスアップが行われて組み上げられているのだが、それをさらに突き詰めてメンテナンスすることで、新車にも確実な変化が現れるはずだ。
撮影当時、走行わずか124kmしか走っていないCRF250Lの足周りを分解し、グリスアップ&適正トルクで締め付け作業を実施した。結果は体感できるほど顕著な変化が現れたのだった。
足周りのボルト類は、締めすぎれば動きの悪化に繋がることもある。だからこそトルク管理を徹底したい。ボルトごと指定されている締め付けトルクが数値で記載されているサービスマニュアルは作業の必須アイテムだ。
最新車種とはいえリア周りはシンプルな構造。アルミに見えるスイングアームはスチールの鋳物で、コストに対する苦心の跡が見える。分解前にサスペンションの動きを確認しておいた。
オフロードスタンドを使って車体を浮かせてリアタイヤを外す。抜き取ったアクスルシャフト表面にグリス分がほとんど無かった。直接作動に影響は無いが、錆防止の観点から必ずグリスアップしておきたい箇所だ。
アクスルシャフトは車体の中でも非常に高トルクがかかる部分だ。アルミ製チェーンアジャスターはナット座面との摩擦で磨耗し、窪んでしまっていた。こんな所もグリスアップが有効。
リアショックのリンクのボルトを抜き取る。ハンドツールでは力がかかりにくい上に、無理に力を入れると車体が転倒する原因になるので、ここはインパクトで一気に緩めてしまう方が作業が早い。
リンクのボルトがすべて外れたら、インナフェンダーを外し、スイングアームピボットシャフトを抜き取る。これでスイングアームが外れるはずだ。チェーンをくぐらせるので切らなくてもOK。
リアショックリンクとロッドはボルト4本で締結されており、これを全て抜けばスイングアームはフリーになる。ピボットを緩める前にスイングアームを手で持って動かし、スムーズかどうか確認する。
リンクのベアリングにはそれぞれカラーが入っている。グリス切れを起こした状態で乗り続けているとカラー表面のメッキに打痕や磨耗を生じる。CRF250Lは新車なので、当然異常は見られない。
リアショックリンクやスイングアームピボットのベアリングは、高荷重を支えるためニードルベアリングが使われている。見ると少しグリスが少ないようだ。指で触って明らかなガタやゴロゴロ感がある場合は交換。
新車時のグリスを一度洗浄し、高性能なグリスを使って再度グリスアップを行う。ニードルベアリング部にグリスをタップリと塗り込み、カラー表面も薄く塗布する。はみ出したグリスは拭き取る。
スイングアームピボットのニードルベアリングもしっかりとグリスを塗り込んでおく。グリスは潤滑だけでなく、防錆や水の浸入を防ぐ役目を果たすので高性能グリスをたっぷりと使おう。
ピボット内部への水、ゴミの浸入を抑えるダストシール内側リップ部分もグリスを薄く塗布しておく。より強固に水分の浸入を抑制すると同時に作動抵抗の軽減を図ることができる。
ベアリング周りにはリチウム系やウレア系グリスが最適だ。新品リアショックには慣らし期間を短縮し、作動性向上を図るため、ダンパーロッドにラバーシール組み付け剤を吹いておいた。
グリスアップ作業が終了したらリア周りの組み立て作業を行なう。まずスイングアームピボットを規定トルクで締め付け。スイングアーム単体状態でスムーズに動くか確認する。規定トルクは88N・m。
トルクレンチを使用してリンク部を組み立てる。この部分はリンクとスイングアームを繋ぐナットが74N・m。それ以外は44N・mで締め付ける。ボルト、ナット共にしっかりグリスアップしておく。
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