掲載日:2018年06月22日 メンテナンス
文/丸山淳大 写真/栗田 晃 Model/ときひろみ 記事提供/バイクメンテビギナーズ編集部
※この記事は『バイクメンテビギナーズvol.1』に掲載された内容を再編集したものです。
※当企画はフルトランジスタ点火のキャブレター車を対象としています。また、エンジン不動原因はここで紹介されている以外にも多数存在します。
バイクのトラブルは様々だが、最も致命的なのはエンジンがかからないということだろう。ただひとくちでエンジン始動困難だと言っても、その原因は星の数ほど存在する。そう考えると原因追及は気が遠くなりそうだが、エンジンが始動するために必要な3大要素というものがあるのをご存じだろうか? それが「良い混合気」「良い火花」「良い圧縮」だ。この3つが揃えばエンジンは好調となるはずだ。つまり、これらの要素を常にベースとして順を追ってトラブルシュートしていけば、必ずや不動原因を突き止めることができるはずである。
バイクを不動におとしめている原因を探索し、想像し、部品交換や作業で退治する。その行為はまるで旅のようであり、故障とのバトルのようでもある。
そう、これはRPG(ロールプレイングゲーム)ではないか!! バイクメンテクエストはゲームブックのごとく、エンジンがかからない原因を明らかにするためにバイク各部を順を追って調査、診断していく企画である。もし愛車がエンジン不動に陥った時は、当企画を冒険の書にしてエンジン始動への冒険に旅立っていただきたい!!
【START】エンジンがかからない!!! まずはメインスイッチを確認だ!!
キーボックスやその他部分の配線の接触不良の可能性が高い。ワーニングランプが薄っすら点いたりする場合は、バッテリー電力不足が濃厚だ。
オイル量が異常に増えているなら、フィラーキャップを開けて匂いを嗅いでみてほしい。ガソリンの匂いがするなら、キャブレターからオーバーフローしたガソリンが燃焼室へ入り、そこからクランクケースに落ちてオイルに混入したのかもしれない。オイル量が著しく多くなってしまうとピストンがクランキングできる隙間さえなくなり、セルモーターが回らなくなることがある。
まずはバッテリー端子の接続状況を確認する。接続に問題がなければバッテリー電圧が低下しており、セルが回らないのはもちろん、ワーニングランプすら点灯させる力が無いのかもしれない。充電、もしくは交換して再トライしよう。
メインヒューズを確認し切れていたら原因を調べてみる。後付けアクセリーや配線のショートなどヒューズが切れるには何らかの原因があるはずなので、それが解消できればヒューズをスペアに交換して走り出すことができるはずだ!!
燃料コックを確認してみよう。OFFならガソリン供給はされないし、ガソリンの量が少ないのにONならガス欠だ。PRI(常にガソリンが流れる)の位置があるなら、しばらくPRIにコックを合わせてガソリンを送りこんでからセルを回してみる。
キルスイッチがオフならONにするべし……。
プラグが乾いているということは、ガソリンが燃焼室まで来ていない可能性が高い。ガソリンがキャブレターまで来ているかどうかドレンボルトを緩めてみる。
燃料ホースの折れ曲がりを確認する。折れていたり、亀裂があって漏れていれば再接続する。また、燃料タンクキャップのエア抜き穴を確認する。
キャブレターまでガソリンが来ているのに、燃焼室まで行っていないということは、キャブレターの詰まりか、エンジンの圧縮が弱く、ガソリンが吸い出されないという可能性がある。エンジンのコンプレッションチェックを行い、圧縮が正常ならキャブの分解清掃を実施したい。
火花チェックは、プラグを外してキャップに接続。キャップを持ってプラグをシリンダーヘッドなどにアースさせて、セルボタンを押してみる。電装が好調ならばプラグに火花が飛ぶはずだ。プラグに触れたり、コードやキャップなどに亀裂があると感電するので注意しよう。
サイドスタンドスイッチ、クラッチスイッチの故障でセルが回らなくなることもある。センサーのスイッチの動きが悪いならば、分解して接点を磨いてた上でグリスアップ&復元してみるのも手だ。また、セルモーター自体の不良、マグネットスイッチ、イグナイターなど疑わしい箇所はたくさんある。ひとつひとつしらみつぶしに見ていこう。
クラッチスイッチ、サイドスタンドスイッチは、安全のための設備だが、時として故障原因となることも。
マグネットスイッチが故障するとスターターへ行く大電流が流せなくなる。
イグナイターは密閉されているので、外から故障具合は判断できない。
燃料タンクが完全に密閉状態になると、タンク内部が負圧になるのでガソリンが落ちていかなくなる。そのため、タンクキャップにはエア抜き用の穴が設けられているのだが、これが詰まることがあるのだ。燃料供給がうまくいってないならタンクキャップを開けたままエンジンがかかるかどうかチェックしてみたい。
燃料が燃焼室まで来ているし、点火火花も飛んでいるのにエンジンがかからない。その原因は多数予想される。プラグが弱っていて、高圧縮下のシリンダー内で火花を飛ばすことができない場合はプラグの新品交換でかかる時もあるし、キャブのスターター系、スロー系が詰まりかけている可能性もある。最悪の場合では圧縮圧力の低下による始動困難という原因も考えられる。そうなればエンジン整備が必要だ。圧縮圧力はコンプレッションゲージで測定ができる。
プラグホールを指で塞いでセルを回し、コンプレッションの有無を簡易チェックする方法もある。
火花が飛んでいない場合は、まずプラグを交換してみる。多気筒車の場合は他のプラグと入れ替えてみよう。それでも飛ばない場合は、キャップ、コード、イグニッションコイル、イグナイタと上流を辿っていく。テスターがある場合は、イグニッションコイルまで電気がきているかどうかなど、ある程度の診断が可能。イグナイタユニットは高額部品だし、中古も故障している可能性が高い。最終的にプロに修理を任せたほうが無難だ。
エンジン始動したならあとは走り出すだけだ!!
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