掲載日:2023年10月05日 購入基礎知識 › バイク購入基礎知識
取材・文/伊井 覚
【この記事の目次】
●冷却方式は主に水冷・空冷・油冷の3パターン
●2ストロークと4ストロークの違いは?
まずはスペック表で一番頭に書かれていることが多いエンジンの冷却方式から。現在は水冷エンジンが圧倒的に多く、空冷・油冷は少数派となっています。
この写真はHONDA CL250の水冷エンジンです。文字通り、水を使ってエンジンを冷やす方式なのですが、ただの水ではありません。クーラントと呼ばれるこの冷却水は寒冷地での使用も想定しており、凍結温度を低くしています。さらに防錆効果も持っているため、緊急時以外、普通の水では代用できませんので注意が必要です。
クーラントはシリンダーの周辺に作られたウォータージャケットと呼ばれる水路を流れることでエンジンを冷却し、エンジン前方に配置されたラジエターの中で走行風によって冷やされ、再びエンジンを冷却する、というように循環しています。外気温が高い真夏日などは走行風だけではラジエターの冷却効果が弱くなってしまうため、ラジエターについている電動ファンが回り、補完するシステムを取っています(小排気量車の場合は電動ファンがついていないこともあります)。
空冷に比べてエンジンの冷却効率が高いことからエンジンの高出力化が可能で、現在では最もスタンダードな冷却方式となっています。
次にこちらはKAWASAKI KLX230SMの空冷エンジンです。空冷エンジンはその名の通り、空気を使ってエンジンを冷やすため、水冷のようなラジエターは付いていません。走行風を直接エンジンに当てることで冷却を行っています。
冷却効率を上げるためにエンジン本体にフィンを作って表面積を広げており、その特徴的な外観、造形美を愛するがゆえ空冷モデルを選択するライダーも多くいます。YAMAHA SR400やセロー250などで長く採用され続けていましたが、排気ガス規制に対応できずに減少しつつあります。ただし現在でも小排気量のバイクを中心に生き残っています。
空冷エンジンは走行風を当てないと冷却できないため、長時間のアイドリングは熱ダレ・故障の原因になりますので注意しましょう。
最後にSUZUKI Vストローム250SXの油冷エンジンです。水冷エンジンのウォータージャケットのような冷却回路を持っていますが、その中を通っているのはエンジンオイルです。ラジエターの代わりにオイルクーラーと呼ばれるオイル冷却機構を備えています。なお、スズキの油冷エンジンはこのエンジンが開発される前は燃焼室の上壁面にオイルジェットを吹きつけて冷却を行っていましたので、一言で油冷と言っても様々な方式があります。外観も空冷エンジンのようにフィンが付いたタイプもあるので、「フィンがある=空冷」ではないので覚えておきましょう。
次はエンジン型式、4ストロークと2ストロークの違いについて解説していきます。メーカーによって4サイクル、2サイクルと表記していることもありますが、これは4ストローク1サイクルエンジン、2ストローク1サイクルエンジンの名称に由来するもので、同じ意味になります。
4ストロークと2ストロークはそもそもエンジンの構造が全く異なっています。まず内燃機関(エンジン)は基本的に「吸気(シリンダーに空気と燃料を吸い込む)」、「圧縮(吸い込んだ空気と燃料を圧縮)」、「爆発(スパークプラグを使って火をつけ、爆発させる)」、「排気(シリンダー内に残った空気や燃料を捨てる)」という4つの行程を繰り返しています。
2ストロークエンジンではピストンが上昇した時に吸気と圧縮を同時に行い、下降した時に爆発と排気を同時に行う2行程です。
対して4ストロークエンジンは一度ピストンが上昇した時に吸気、ピストンが一度下降して圧縮、もう一度上昇して爆発、下降して排気という4つの行程を踏む仕組みになっています。
ただし、2ストロークエンジンは燃焼効率が悪く、燃料が燃え切らずに排気ガスに混じって排出されることから環境汚染に繋がり、年々厳しくなる排気ガス規制に対応することができませんでした。そのため、現在では新車で購入できる2ストロークモデルは公道を走行できないレース用モデルのみ(一部海外メーカーを除く)となっています。
2ストロークエンジン(Husqvarna motorcycles/TE250)
4ストロークエンジン(Husqvarna motorcycles/FE250)
外見的な特徴としては、2ストロークエンジンの排気機構にはチャンバーと呼ばれる膨張室が設けられているため、4ストロークのエキゾーストパイプに比べ、排気に用いられるパイプが大きく膨らんでいます。
また、排気音も4ストロークに比べて甲高く、低回転では「ポロポロ」と、高回転では「パイーン」という音に聞こえます。多くの場合、同排気量の4ストロークモデルに比べてパワーが大きく感じられますが、パワーバンド(一定回転数から上の高出力帯)に入った時の爆発力が凄まじく、4ストロークしか乗ったことのない人がいきなり乗ると、乗りにくさを感じることがあります。
次回はバルブ数と、その駆動方式について解説していきます。
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