HJC（RSタイチ） FS-15 トロフィー

掲載日：2010年05月17日バイク用品インプレッション

バイク用品インプレッション

高機能で納得価格を実現
HJCの旗艦モデルFS-15

超一流ヘルメットメーカーのお膝元である日本市場ではやや地味な存在だが、既に米国などでは非常に高いシェアを獲得しているメジャーブランド「HJC」。近年では、世界スーパーバイク選手権のタイトルを引っさげMotoGPに本格参戦を始めたベン・スピーズ選手の使用ヘルメットということでご存知の方も多いことだろう。

今回はHJCのフラッグシップモデルにグラフィックを施し、そのベン・スピーズ選手のレプリカモデルとして発表されたFS-15トロフィーをテストした。これまで日本におけるHJCと言えば低価格モデルが注目されがちで、ヘルメットメーカーとしての実力が正当に評価されていなかった感がある。しかし、このFS-15トロフィーの高い機能性や質感、そして価格を知れば、その存在を意識せずにはいられなくなるのではないだろうか。

まずはその美しいグラフィックと塗装にご注目。意図的なのかは不明だが転写シートのドット感が強いのを除けば、グラフィックはとても綺麗で下地の処理や各パーツの塗装なども非常に丁寧だ。次に各部の質感。海外製ヘルメットと言えばベンチレーション可動部などの操作感や質感にやや詰めの甘いところが目立つ例が多いが、このFS-15トロフィーはそうした部分が非常に精巧で、節度感も良好。さすがに国産メーカーが得意とする高精度なシールドやマウントメカニズムのクオリティでは遠く及ばないものの、これが3万6,750円、日本では普及価格帯のフルフェイスヘルメットだと考えると感慨深いものがある。

さてその被り心地だが、国産メーカーとはやや思想が異なる点が見受けられた。タイトなホールド感や低い重心位置、空理特性などを追求し、究極の安定性を狙う国産フラッグシップモデルに対して、FS-15トロフィーにそこまで積極的な姿勢は感じられない。しかし、高機能ヘルメットとしては軽量であり、空力特性にもこだわったとしているだけあって、かなりの高速域でも不都合は感じられなかった。また、積極的に見えるベンチレーションに関しては、ヘルメット全体の換気を重視しているようで空気の流れを肌で感じるようなチューニングではないが、快適性とシールドの防曇効果はかなりのもの。走行中の静粛性は標準的と言えるだろう。唯一、樹脂素材の選定に高級感が感じられないシールドとそのマウントメカニズムが残念だが、FS-15トロフィーの価格を思い出して欲しい。国産フラッグシップに及ばない部分は多いものの、同価格帯のヘルメット同士の比較であれば、FS-15トロフィーはかなり現実的な選択肢となりうるはずだ。