掲載日:2026年03月26日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

HONDA CrossCub 110 Lite

2025年11月から施行された「第4次排出ガス規制」においては、従来の50ccでその規制をクリアするには多大な開発コストと手間が必要となり、生産継続が困難な状況となった。その対応策として生まれたのが、新基準原付制度だ。

これに対応するため、従来の原付2種の車体やエンジンをそのまま使用し、パワーを4.0kW(約5.4PS)までに抑えることで、原付免許や普通自動車免許でも乗れるようにした。排気量は大きくなっても、最高速度は30km/h以下で2人乗りは禁止、2段階右折が必要なことなどは、従来の原付1種と同じだ。ホンダでは新基準原付に対応したモデルを「Lite」シリーズと名付けて数車種を発売した。今回試乗したクロスカブ110 Liteもそのうちの1台となる。

車体構成は空冷単気筒OHC109ccのエンジンや17インチホイール、ABS付きのフロントディスクブレーキなど、ベースとなった原付2種のクロスカブ110とほぼ同じだ。
最大の違いは最高出力が110の5.9kW(8.0PS)に対して3.5kW(4.8PS)、最大トルクも8.8N・m(0.90kgf・m)から6.9N・m(0.70kgf・m)に抑えられている点にある。
そのほかの違いはメーターの最高速度表示や30km/hを超えると点灯する速度警告灯を有している点、タンデムステップの省略、前後フェンダーに原付2種を示す白フチや三角マークがないといった具合である。

従来のクロスカブ50と比較すると最高出力は0.8kw(1.1PS)、最大トルクは3.1N・m(0.31kgf・m)アップしており、力強い走りが期待できる。
また、ホイールサイズも14→17インチとなり、スポークからキャストホイールとなりタイヤがチューブレスとなった。さらに前輪がディスクブレーキとなりABSを装備するなど、車体構成自体も大きく異なっている。

クロスカブ110 Liteは17インチホイールで、クロスカブ50が14インチだったことを考えると、やはり大きく感じる。シート高も40mm高く、車両重量も7kg増加した。
50に乗り慣れた人には少々とっつきにくいかもしれないが、スタートするとその力強さにびっくりする。50ccのおっとりした加速とは全く違い、グッと前に出る感覚は段違いにパワフルで、110と遜色ないレベルといえる。
法定速度となる30km/hまではあっという間で、その後だんだんと加速感は緩やかになるものの、街中で交通の流れを乱さない程度の巡航能力がある。さらに50との違いを実感させてくれるのが坂道だ。
50なら4→3速、場合によっては2速にシフトダウンするような坂を上る場合でも、4速のままか、せいぜい3速に落とすだけでグイグイ上ってくれる。ボックスを積んで重い荷物を運んだり、キャンプ道具満載で峠道を走ったりすることもありがちなクロスカブにとっては、このパワー感を得たことは非常に頼もしいはずだ。

車体が大きく、重くなったことで50のような軽快感と小回りの良さは多少減ったものの、その分ゆったりとした乗り心地の良さと、ホイール径の大きさとキャストホイール化からくる安定感が増し、チューブレスタイヤとなったことで道路上での安心感が飛躍的に高まっている。

制動力に関してもフロントがディスクブレーキになったことで、よりかっちりした利き味とコントローラブルなタッチとなり、ABSの採用とともに安心材料が増えた。混合交通のなかで30km/hという制約がある原付1種はどうしても路面状況の良くない道路の左端を走る機会が多く、また直前にクルマに割り込まれるなどハードなシチュエーションに遭遇する機会もありがちだ。
その意味では、装備が良くなった分、クロスカブ50よりも車両価格が9万円以上高くなったとはいえ、原付2種と同じ装備となり、安定感と安全性が高まったことは大きなメリットだ。

クロスカブは実用的な用途だけでなく、ツーリングや林道を走って楽しむ、という使い方をする人もいるだろう。河原のフラットダートにも乗り入れてみたが、17インチホイールにセミブロックタイヤという組み合わせの持つ走破性と操縦安定性の高さは、安心感だけでなくより楽しめる要素としてプラスになったと感じる。原付免許で乗れるマシンとしてもともと懐の深い存在だったクロスカブは、新基準原付となり、ますますその魅力を増したと感じた。

テスターの身長は170cmで足は短め。クロスカブ110 Liteのシート高は784mmで原付2種の110と同じだが、50に比べて44mm高くなった。片足ならしっかり接地、両足ではかかとが少し浮くが、車体が重くないので不安はなかった。

ヘッドライトガードと、ぴょこんと突き出たメーターフードという独特のデザインは、アクティブな雰囲気を醸し出している。LEDヘッドライトを採用。

ハンドル左側のスイッチボックスにはホーンとウインカー、ヘッドライトの上下切り替えスイッチを備える。

ハンドル右側のスイッチはスターターボタンのみとシンプルだ。

30km/hを超えると点灯する速度警告灯を備えたメーター。液晶部分には燃料計やギアポジションのほか、時計やトリップ、平均燃費なども表示できる。

カブ系伝統の横型エンジンで、空冷単気筒OHC109cc。最高出力は新基準原付の範囲内、3.5kW(4.8PS)に抑制されている。

厚みがあり、クッション性に優れたシートは路面からの衝撃もやわらげてくれる。後部には大型のキャリアを装備しており積載力も高い。

シートを跳ね上げるとキー付きのタンクキャップが現れる。燃料タンク容量は4.1Lで、50よりも0.2L少ない値だ。

メインのキーシリンダーにはイタズラ防止のシャッターなどはなく、ハンドルロックのみのシンプルなタイプとなっている。

車体後部左側にはピン式のヘルメットロックを装備している。

シーソー式のチェンジペダルは前に踏み込むとシフトアップ、後ろを踏むとシフトダウンする。停止時には4速-1速間のロータリー変速が可能だ。

ラバーを備えたステップはアウトドア仕様を演出する可倒式を採用。キックペダルも装備している。

リアサスはツインタイプ。ブラックアウトされたスプリングとチェーンケースにより、スタンダードなスーパーカブと比べ、ヘビーデューティーなイメージを強めている。

前後17インチのキャストホイールはカッチリとした乗り味と安定性をもたらす。ABS付きのディスクブレーキは十分な制動力を持ち安心感がある。

リアブレーキはドラム式。タイヤはセミブロックタイプのIRCのGP-5を採用し、少々のダートなら気にせず入って行ける。

丸みを帯びたテールセクションはまぎれもなくカブ系の証だ。灯火類はヘッドライトのみLEDで、他は白熱球バルブを採用している。







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