掲載日:2023年04月28日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
aprilia SR GT 125
アプリリアといえば、ドゥカティやビモータと並んでイタリアを代表するバイクのブランドだ。MotoGPに参戦していることもあり、スーパースポーツのイメージが強いかもしれないが、実際にはオフロードモデルやスクーターもラインナップされている。カテゴリーは違えど、どれもスパルタンな印象のモデルが揃っているのがアプリリアらしさといえる。今回試乗したSR GT 125も、従来の原付2種にはなかなか見られない、斬新で戦闘的なスタイルとなっている。もともと200cc版が先に発売され、車体や装備などはそのままに、エンジンだけを125ccクラスとしたのがこのSR GT 125だ
SR GTシリーズはアプリリアが「アーバンアドベンチャー」と位置づけるように、都市におけるコミューターとしての性能はもちろん、ヨーロッパの石畳でも快適に走れるよう、また、週末にはツーリングに繰り出して、時にはちょっとしたダートにも乗り入れられる……そんな使い方を想定したマシンだ。
特徴的なのは「足の長さ」。サスペンションストロークがフロント122mm、リアが102mmと、スクーターにしては長めで、同時に最低地上高も175mmを確保している。その分シート高も799mmと高めではあるが、一般的なスクーターに比べて段差や路面状況を気にせず走れる場所が増えるのは間違いない。つまりはそれだけ楽しめるシーンも広がるということになる。リアサスはプリロードを5段階に調整できるし、タイヤもアドベンチャー志向のミシュランアナキー・ストリートを履くなど、ダート路面もどんと来い、とばかりの仕様となっているのがなんとも頼もしい。
そんな足回りに組み合わされるパワーソースは、125ccの水冷単気筒SOHC4バルブの「i-get」エンジンで、最高出力は11kW(15HP)。これはヤマハのNMAX155とほぼ同数値であり、多くの国産125ccクラススクーターの最高出力が9.2kw(12.5PS)程度であることを考えると、かなりパワフルなことがわかる。
ユーティリティ面でも、フルLED灯火やアイドリングストップの採用、USBアクセサリーソケットや約25Lのシート下ラゲッジスペースなど、日常使用からツーリングユースまで、過不足のない装備を有している。また、オプションではあるが、スマホと車両をBluetooth接続することで、メーターパネルに電話やメッセージの着信を表示可能なほか、音声コマンドによって通話や音楽再生などもできるようになる。
アプリリアSR GT 125は200と共通のボディということもあり、堂々たる佇まいだ。ストローク量の多い前後サスペンションと175mmという最低地上高もあって、かなり大柄に見える。ロゴを配した大胆なグラフィックと、アプリリアのスポーツモデルであるRSシリーズを思わせるスパルタンなフロントマスクは、アドベンチャー気分を掻き立ててくれるとともに、いかにも走りに期待ができそうなルックスだ。200cc版と同じボディとあってシート高は799mmとこのクラスにしては高く、一般的な原付二種とは一線を画す存在に思える。取り回しは125ccクラスと考えると大柄なのでそれほどいい部類ではないが、センタースタンド掛けがとても軽いのが印象的だ。
ゼロ発進からの加速は、取りたてて速いという感じはないが、速度が上がるにつれてパワー感が増し、走りに力強さが表れてくる。数値だけでなく実感としても、国産スクーターよりパワフルな印象だ。スロットルレスポンスもよくエンジンの吹け上りもスムーズなので、ストレスのない走りができる。シートは高いが、背筋を伸ばして乗るヨーロピアンスタイルのため、スクーターというよりモーターサイクル的なライディングポジションであり、アイポイントが高く遠くまで見通せるので、爽快感だけでなく安全運転にもつながる走りができる。アイドリングストップ機構も、停止時、再発進時ともにスムーズで違和感のない仕上がりだ。
外見からは腰高なイメージがあったが、乗ってみると低速でもどっしりと安定しておりフラつくこともない。コーナーリングでの挙動も倒れすぎることもなく、きわめて自然な旋回動作でスーッと思い通りのラインを曲がってくれる。バンク角は深めで思い切ったコーナーリングも可能で、ブレーキのタッチも良く制動力も十分なため、シティライドではキビキビと楽しく走らせることができる。ストローク量の多いサスペンションの衝撃吸収性も悪くないので、かなりスポーティな味付けのマシンに仕上がっていると感じた。
ダートにも少し乗り入れてみたが、そこで最も感じたのは安心感だ。当然トレールマシンのように自由に走り回る、というレベルではないものの、ロードタイヤを履いた一般的なスクーターよりも路面を捉えた走り方ができるし、何よりも段差でお腹をこする心配がグッと減るので、河原遊びでちょっと奥まで行ってみたり、キャンプ場に行くにしても気苦労が減るなど、安心して遊べる範囲がグッと広がるのが頼もしく、楽しいのだ。
「アーバンアドベンチャー」というコンセプトの中で、アーバンとアドベンチャーの割合でいえば、かなりアーバン寄りの味付けとなっているこのマシン。軽2輪クラスならホンダのADV160がライバルになると思われるが、現状では原付2種クラスにおいてはライバル不在、稀有なキャラクターを持った存在と言える。125ccクラスで維持費を抑え、通勤通学に使いながらツーリングやキャンプなど、遊びにも使いたい……アプリリアのSR GT 125はそんなライダーにとって、とても魅力的な1台になるはずだ。
灯火類はフルLEDを採用。ハイビーム時には中央のライトが点灯し、3灯になる。スクリーンは固定式で高さ調節機能はない。
メーターは反転液晶タイプで直射日光下でも見やすい。時計や燃料計のほか、航続可能距離や外気温なども表示される多機能なものとなっている。
ハンドル左側にはアイドリングストップのオンオフスイッチやメーターパネルの表示を切り替えるモードボタンを装備。前側にはライトの上下切り替え/パッシングスイッチがある。
ハンドル右側にはスターターとキルスイッチのほか、オプションのアプリリア MIA通信システムのためのボタンを備える。
フロントポケット内にはUSBタイプの電源ソケットを備えている。上段にはスマホを収納できるつくりだ。
キーを挿してシリンダーを押すと、給油口の蓋が開く。右のスイッチはシートのロックを開けるためのもの。
給油口はセンタートンネルにあり、キーシンダーを押し込むことで蓋が開く。フューエルタンクの容量は9Lとなっている。
フロアボードは前後に長く、前方に足を出せるスペースもあって様々なライディングポジションに対応する。
ステッチが施されたシートは軽く段が付けられている。前方が細く絞られているので、信号待ちなどでお尻を前にずらして足を着く動作がしやすい。
シート下のトランクスペースは約25Lと容量は大きめ。しかし浅いので帽体の大きなヘルメットは収納できない。ヒンジ部近くにはピンタイプのヘルメットホルダーを装備。
折りたたみ収納式のタンデムステップは面積が広く、ラバーを装着してある。
サイドスタンドを標準で装備。センタースタンドはとても軽い力で楽に掛けられる形状だ。
ツインタイプのリアサスは5段階のプリロード調整が可能。ライセンスホルダーを兼ねたリアフェンダーはスポーティなルックスだ。
ウェーブタイプを採用したフロントブレーキのディスク径は260mmで、ABSを備える。タイヤサイズは110/80-14のチューブレスで、銘柄は前後ミシュランのアナキーストリートを履く。
グッと跳ね上がったマフラーがスポーツマインドを体現しているかのよう。リアブレーキのディスク径は220mmで、タイヤサイズは130/70-13のチューブレスとなっている。
テールセクションはグラブバーと一体感のあるスッキリしたデザインだ。テール/ブレーキランプ、ウインカーともにLEDとなっている。
テスターの身長は170cmで足は短め。SR GT 125のシート高は200cc版と同じ799mmで、125ccクラスとしては高めだ。両足だとつま先、片足では母指球までしっかり接地する。
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