掲載日:2021年11月08日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
Future GOGO! Cargo
エコで手軽な新時代のモビリティとして最近特に注目されているのが電動バイクだ。多くのメーカーから様々な車種がリリースされており百花繚乱の様相だが、今回はその中からFutureのGOGO! カーゴに注目。実際に試乗してその魅力や走りをチェックしてみた。
Future(フューチャー)は「あらゆる移動をもっとスマートに」をテーマに、人々から必要とされるデジタルモビリティサービスを提供し、移動によって「生きがいと発展」を生み出すことを掲げるカンパニー。そのフューチャーが次世代パーソナルモビリティとして世に送り出したのがFuture mobility GOGO!(以下GOGO!)」シリーズだ。
GOGO!は前2輪、後ろ1輪という独特のレイアウトで、一見するとキックスクーターの3輪版のように思える。道路運送車両法では原動機付自転車扱いだが「ミニカー登録」となるため、運転には普通自動車免許が必要で、原付免許や2輪免許では運転できない。ミニカーなのでヘルメットの装着や2段階右折の義務はなくなるが、安全上の観点から、メーカーではヘルメットの装着を推奨している。車両タイプはスタンダードモデルの「S」のほか、ボックスを搭載した「デリバリー」、今回試乗したカゴ付きの「カーゴ」などのバリエーションがある。また、車体カラーにはレモンイエローやピンク、レッドなどポップな色も用意されており、他に類を見ないユニークなデザインと相まって、若い世代や女性にも注目されそうだ。
スペックは、パイプフレームに定格600wのホイールインブラシレスモーターと48V/9.6Aのリチウムイオンバッテリーを搭載。最高速度は30km/hで、航続距離は30kmとなっている。車両重量はGOGO! カーゴで25kgだ。ちなみにバッテリーはフロア下部に収納されており、簡単に取り外して家庭用のAC100Vコンセントで充電できる。
車体構造で特徴的なのはフロント2輪を支えるサスペンションだが、ここにはレーシングカーの技術がフィードバックされているという。というのも、フューチャーの代表取締役CEOである井原慶子氏はWEC世界耐久選手権で女性として初めて表彰台に上がるなど、世界を転戦してきたカーレーサー。そこで各国の技術者とともにレーシングマシンを開発してきたノウハウを投入したものが「マルチリーンステアサスペンション」と名付けられたこのシステムだ。左右にかじを切るステア動作と車輪を倒し込むリーン動作を両立させたこのサスは、特許出願済み、意匠取得済みのオリジナルで、3輪の安定感と軽快な走りを楽しむことができるという。転倒の心配も少ないため、2輪だと運転が心配、という人にも受け入れられやすいはずだ。
GOGO! カーゴの車体サイズは全長1000×全幅600×全高1000mmで、タイヤも10インチのため見た目からしてとてもコンパクトだ。シートも低いので仰々しさは全くない。サイドスタンドは装備していないが、ブレーキレバーにパーキングロックがあり、車体は直立でも自立するし、傾けても倒れることはないので、駐車時にも安心だ。また、車両重量は25kgと、一般的な原付スクーターが約80~100kg前後なのに比べて非常に軽いため、取り回しも非常に楽で、スペースさえあれば車に積むのも容易だろう。
跨ってみると、キックボードに腰かけているような不思議な感覚のポジションだが、乗車姿勢はとても楽でリラックスできるもの。電源を入れて右グリップのスロットルをバイクのように回すと、スルスルっと軽快に車体が動き出す。ハンドル左側にあるスイッチでモーターの出力を5段階に調整することができるが、最高速度が30km/hのため、公道を走る際には常に最大の「5」で走ることになるだろう。ボディが軽いこともあってか、思っていたよりも加速感は鋭い。
ホイールが小さく、ハンドルポストも細いので少々心配だったが、折りたたみ式ではないので車体の剛性感は高く、前2輪の効果もあってか路面状態のいいフラットな道では30km/hでも安定した走りで全く不安はない。気になるコーナーリングだが、リーンウィズの姿勢で素直に体を傾けると、自然に車体がスッと曲がってくれるので、ふだんバイクに乗っている身には違和感がない操作感だ。一般的な2輪のバイクと違うのは、車体が傾く角度の限界が思ったよりも少ないこと。2輪だとコーナーの途中でもう少し寝かせたい時にグッとバンク角を深く取ることができるが、GOGO! はそこまで深く寝かせることはできないので、タイトなコーナーでは回転半径を考えながらスピードを調節する乗り方になる。それでも車体がとにかく軽く、想像していたよりもはるかにスポーティな走りができる。
坂道については今回それほどきつい坂を登っていないので真の実力は断言できないが、ちょっとしたスロープ程度の坂ではほぼ速度を落とすことなく走れたし、シートが低く車体が軽いのでいざとなれば足で地面を蹴って進むこともできるため、よっぽどの急坂か、長くダラダラと続く坂でない限りはそれほど困るシーンはないはずだ。
気を付けたいのが、道路の左端が下がっていたり、路面が荒れている時だ。路面からのショックをフロント片側の車輪がモロに受けるとそれにつられて走りが乱れることがあるほか、コーナーでうまく体を傾けられないと、前輪が意に反した方向に進もうとする場面があった。これらは乗り方に慣れれば問題ないし、挙動が乱れてもすぐに足がつくので危険度は低いが、小径ホイールの3輪ならではの挙動について常に意識する必要があるだろう。
とはいえ、運転操作は直感的に行えるし思ったよりもイージーだ。最高速度が30km/hであることと、2輪よりも幅があることを考えると、通勤時に住宅街など幹線道路以外を使って駅まで行く用途やスーパーへの買い物など、近場の生活圏内でのちょっとした用事に使うには最適なモビリティだと思う。特に後ろにカゴのついたGOGO! カーゴは日常生活での使い勝手がいい。1回の充電にかかる費用は約10円とランニングコストも安いことから、27万2800円(税込)という価格は十分納得できると感じた。
ヘッドライトはLED4灯仕様で、昼間の被視認性はけっこう高い。ハンドルバーはフラットで短めの仕様だ。
ハンドル左側のスイッチボックス。ウインカーとホーンの間の赤いスイッチをライト点灯の位置にすると電源が入る。右側の黒いスイッチのMボタン長押しで走行可能となるほか、上下ボタンで出力の調整が可能だ。
右側のグリップ。中央寄りの滑り止めのついた部分がスロットルになっており、バイクと同様手前側にひねると加速する。
フロントブレーキ用の右ブレーキレバーにはボタン状のパーキングロックを装備。レバーを握りながらボタンを押し込んでロック、解除の際はさらに握り込むだけと簡単だ。
モノクロ液晶のメーターは大きくて見やすい。速度のほか、バッテリー残量や走行モード、積算距離、バッテリー電圧などを表示できる多機能タイプだ。
メーター下部にはUSBポートを装備している。出力値は不明だが、おそらくはスマホなどの充電に使うことを想定したものだろう。
フロントウインカーは左右グリップの外縁部に内蔵されている。クリアレンズにオレンジ色のLEDを採用し、デザイン性と被視認性を両立。
シートはほぼ正方形の薄型タイプ。クッション性はそれほど考慮されていないが、短距離の移動には問題ないレベルだ。
GOGO! カーゴは車体後部にカゴを装備している。買い物や通勤・通学用途でも重宝するはずだ。
カーレースのノウハウを活かして生まれたマルチリーンステアサスペンション。前2輪だが「傾きながら曲がる」という動作を違和感なく行える構造だ。
フロアはパネル1枚の構造で、滑り止めなども施されていないシンプルなものとなっている。
フロアパネルを跳ね上げると、リチウムイオンバッテリーが格納されている。着脱は簡単に行うことが可能だ。
バッテリーの充電は取り外して家庭用のAC100Vコンセントに繋いで行う。満充電までは約3時間、およそ10円とコストパフォーマンスにも優れている。
タイヤは電動キックスクーターなどにも使われるタイプで、前輪のサイズは10×2.125となっている。
左右両輪とも、内側に機械式ディスクブレーキを装備している。サスペンションの剛性感は高い。
リアの灯火類もLEDで、ウインカーは光が流れるシーケンシャルタイプを採用している。ミニカー登録なのでナンバーはブルーだ。
リアホイールにはモーターを内蔵し、タイヤサイズは10×2.50でフロントより太い。機械式ディスクブレーキも装備する。
テスターは身長170cmで足は短め。GOGO! カーゴのシート高は公表されていないが見てのとおり相当低く、車体も軽いので、小柄な人でも不安は全くないはずだ。
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