【フェニックスエンジニアリング ガンナー50 試乗記】そのまま乗って良し、カスタムも楽しめる大人のオモチャ

掲載日:2021年03月17日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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PHOENIX ENGINEERING GUNNER50

すれ違っただけでも二度見されるほど、強烈なインパクトを持つスタイリングが採用されたガンナー50。原付一種区分であり、普通自動車免許を取得すれば乗ることができるという気軽さは大きな魅力だ。

こんな時代だからこそ、求められている
気軽かつファニーに楽しめる原付モデル

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原動機付自転車、略して原付は、そもそもオートバイの起源が自転車に内燃機関エンジンを搭載して作られたことを振り返ると、バイクの基本とも言える乗り物だ。ここ数十年に渡るバイクの保有台数を振り返ると、80年後半から90年前半にピークを迎えたのを境目に大きく減少してきていることが分かるのだが、実は免許制度が変更し教習所で大型バイク免許を取得できるようになったこともあり、90年代後半からは大型バイクの数は増えている。

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一方で原付第一種、つまり50cc以下のバイクは1985年で1400万台(!)、90年でも1300万台の保有台数を誇っていたのだが、2019年では510万台まで減少している。これはあくまで日本自動車工業会が示す数値であり、実際に走り回っている数はそれよりも少ないと思われる。なぜここまで人気が衰えてしまったのか、その理由は様々なことが考えられ、追って紐解いてゆこうと思うが、最初に言いたいことは、ここで紹介するガンナー50は、超個性的であり、とても楽しい乗りものに仕上がっており、原付だからと言って侮ることなかれという魅力が凝縮されているバイクだ! ということである。

フェニックスエンジニアリング ガンナー50 特徴

多くの人の第一印象は"なんじゃコリャ!?"
カッコ可愛いキャッチーなデザイン

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80年代後半、週刊漫画雑誌には多くの原付スポーツモデルの広告ページがあったことをよく覚えている。まだ免許を取得できない中学生だった私は、それに乗れば羽を得たかの如くどこまでも飛び回れるのだと夢見たものだ。当時はレーサーレプリカブームも過渡期に入っており、スポーティなスクーターモデルや、ミニサイズのレーサーレプリカモデルなど憧れの的であったし、そうでなくともスーパーに行く主婦層は、みんな原付に乗っていた。その流れに変化が現れるのは90年代後半に入ってからのことだろうか。まず各社2ストロークエンジンの採用を止め、それに伴いパワーが下がりスポーツモデルが廃れていき、さらに電動アシスト自転車が登場し、利便性や維持費の安さ、そして無免許で乗ることができることなどから、原付を使っていた主婦層の乗り換えが進む。2000年代に入ると駐車禁止の取り締まりが強化され、各メーカーの開発に関しても原付第二種モデルに力を入れているとみられる状況であり、もはや絶滅するかもと思われているというのが、原付第一種の現状だ。

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だがしかし今、原付第一種が見直され始める時期に差し掛かっていると私は考えている。というのも、満16歳を迎えていれば筆記試験に合格するだけで取得することができ、普通自動車免許にも付帯されてくるため、原付第一種モデルは最も身近なバイクと言える存在だ。郵便配達やデリバリー業では主流として使われているし、ウーバーイーツの普及やコロナ禍においての密集を避けた通勤通学をするための手段としても、原付第一種の人気が高まっている。そんな原付第一種界で一際目を惹きつけているモデルがこのガンナー50だ。

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タイに本拠地を置くフェニックスエンジニアリングというメーカーが生産しており、ガンナー50が一作目のモデルであり、しかも世界に先駆けて日本先行発売という一台になっている。極太フレームをメインに横置きエンジンが搭載されたなんとも奇抜なスタイリングは、ガジェット好きの心をわしづかみにする。カラーバリエーションは今回紹介する黄色のほか、赤、白、黒、青、緑と多彩。久しぶりに強烈なインパクトを放つ原付第一種モデルの登場に、ワクワクしながら早速試乗テストを行うことにした。

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フェニックスエンジニアリング ガンナー50 試乗インプレッション

侮っていた私自身が驚かされた
意外なほどのまとまりの良さ

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ガンナー50の生まれ故郷であるタイは、日本4大メーカーだけでなく欧州やアジアバイクメーカーの生産拠点が置かれ、世界有数のオートバイ生産国となっている。そしてタイは生産するだけでなく、自国内でもバイクの需要が高いため、それ故に良いモデルを造り上げる土壌としても好都合だと選ばれている一面も持つ。実車を目の前にすると、ディテールの仕上げ方も良く、しっかりとした生産管理がされていることが伝わってくる。実は日本人チューナーが監修を行っており、製造コストと質感、そして乗り味のバランスが考えられているのだ。

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セルスターターを押すと、小さなエンジンはすぐに目を覚ます。キャブレター仕様であることやエアクリーナーが小型なことなどから、少々暖機運転に気を使ってから走り出した。低回転から粘りがあり発進などで扱いやすいという第一印象。ただミッションがロング気味の設定のため、ある程度高回転まで引っ張ってからシフトアップする方がスムーズだ。前後油圧ディスクとされたブレーキは、過剰とも言えるスペックであり、高い制動力を発揮するが、タイヤ径が12インチと小さいことやホイールベースも短めの設定なので、急ブレーキを掛けた際のタイヤのロックには注意したいところ。この手のモデルなのでハンドリング云々を求めるものではないかもしれないが、小径タイヤのショートホイールベース、着座位置、及びハンドル位置からもたらされる、フロントの急な切れ込みさえ理解していれば、ハンドリングも良く、レジャーバイクでありながらもしっかりとセッティングが煮詰められていることが伝わってきた。

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すれ違うライダー、ドライバーはもちろん、街を歩く人たちも振り返り二度見してくることも多いガンナー50は、それほどデザインコンシャスなモデルなのだ。だから、スペックやポテンシャルは二の次でも良いのだ。と、試乗テスト前の私は考えていたのだが、実際に乗ってみると良い意味でそれは間違っていた。ガンナー50が初めてのオートバイ製造という新興メーカーが手掛けた作品でありながらも、走りの面においてもバランスが取れており、十分に普段使いができる。そしてノーマルのまま乗っても楽しめるのだが、カスタムを行う余地も残されている点も注目したい。横型レイアウトの50ccエンジンであり、同系統のボアアップパーツなども流用できるし、サスペンションの交換などもしてみたい。デザイン的には手を加えるまでもないように思えるが、体格に合わせてハンドルなどを交換しても面白いだろう。カスタムがし難くなってきている昨今において、ガンナー50はカスタムベースとしての魅力も持ち合わせているのだ。

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先に書いたが、筆記試験のみで取得できるほか、普通自動車免許でも乗ることができる原付第一種は、”最も乗れる人口が多いバイク”である。バイクに乗ってみたいけど、敷居が高いと思っている人や、他とは違う個性的なモデルが欲しいと思っている人に、ガンナー50はうってつけの一台と言えよう。

フェニックスエンジニアリング ガンナー50 詳細写真

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排気量49.47cc空冷4ストロークSOHC単気筒エンジン。俗に言うところの横型系であり、エンジン関係のアフターパーツの流用も可能なものがあるそう。ただノーマル状態でも十分なポテンシャルであり、物足りないということもなかった。

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セルスターターを装備しているので出番は少ないかもしれないが、キックスターターも備わっている。このサイズのバイクなので押し掛けも簡単にできるが、今時のライダーは"押し掛け"という言葉も知らないそうだ。

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油圧ディスクブレーキをリアにもセット。過剰とも言える装備だと思ったが、扱いやすく見た目にもスポーティに纏められており、好感が持てる。メンテナンス性も良さそうだ。

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"バズーカ砲のようなスタイリング"と言われているデザインは、この燃料タンクを備える極太のダブルクレードルフレームからきている。なお、燃料タンク容量は4.5リットルとされている。

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フレームに乗せられ、ビス止めされているシート。厚めのクッションだが、小ぶりなので長時間乗車は少々辛いかもしれない。個人的には手を加えたいと感じたポイント。

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フレームから続くデザインとされているヘッドライトケース。写真はヘッドライトバルブが変更されているが、ノーマルでは一般的なH4バルブが採用されている。

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フルLCDのデジタルメーターは、バックライトを7色から選択することが可能。メーターはライディング中、常に目に入る部分なので、時々色を変更して気分を変えるのも良さそうだ。

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リアサスペンションはモノショックタイプ。1名乗車が義務づけられている原付第一種モデルであることや、ガンナー50のキャラクターから考えて十分なポテンシャルだ。

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ヘッドライトと同様に、テールライトもフレームの後端に繋がるデザインとされている。シンプルな構成であり、上手くデザインに落とし込みつつ纏めているのは、なかなかのチャレンジだと思う。

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フレーム内にステアリングピボットを備え、アップタイプのバーハンドルをセットしている。リラックスしたライディングポジションを取れるので、老若男女問わず勧められる。

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ミッションは4段リターン式。ギア比設定が若干ロング気味ではあるが、その分、幹線道路などでもストレスなく走らせることができた。ステップバーは折り畳み可能であり、狭い場所にも置くことができそうだ。

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インジェクションが主流となった現在、キャブレターモデルは希少となった。吸排気系カスタムなど、キャブセッティングをするのは、バイクカスタム遊びの楽しみであり、こういったモデルは機関を学ぶ勉強にもなる。

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オーソドックスなチェーンドライブ式。スポーティなホイールデザインが好みなのだが、小径であるがゆえに、存在感はやや薄い。タイヤの銘柄を変更してもキャラクターは変わるだろう。

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