掲載日:2018年12月06日 試乗インプレ・レビュー
写真/徳永 茂 取材・文/青木タカオ
PCXエレクトリックのモーターはエネルギー変換効率に優れ、発進時の低回転域でも高い出力を発揮するIPM構造を採用し、最大4.2kW(定格出力0.98kW)のモーター出力を実現。エネルギー源は着脱可能な2つの48Vリチウムイオンバッテリーで、これをシートの下、ガソリン車でトランクだったスペースに前後2つ縦列にして収めた。
そして燃料タンクだったところに、プラグイン充電のための車載充電器やモーターおよび車両の電源を制御するパワーコントロールユニット、バッテリー接続をコントロールするコンタクター、リレー、ジャンクションユニットなどを配置している。
PCXエレクトリックのために新開発されたEVシステムは、状況によってリチウムイオンバッテリーの接続を直列あるいは並列に使い分けている点が興味深い。まず小学生のとき、理科の授業で習ったことを思い出していただきたい。同じ性能の乾電池2本で電球を明るく点灯させるには直列に、長く点灯させるには並列に接続すればいいと教わったはずだ。電動車において乾電池はバッテリー、電球はモーターに相当する。
PCXエレクトリックでは、モーターの高出力化をなるべく低い電流で実現するために、走行時には直列で接続し、96Vの高電圧によって力強いモーター駆動を実現。電流を低く抑えることでハーネス間の電力損出を低減するとともに、ハーネスの大径化も抑えた。
コンセントからの充電時には、並列接続となる。直列のままでは、バッテリー容量のバラツキや劣化状況が異なることから充電状態に違いが発生してしまい、どちらか一方がフルチャージされた時点で充電が止まってしまうことにもなりかねないからだ。
そしてEVシステムを新たにつくりあげるのにあたって、PCXエレクトリック開発責任者である三ツ川 誠氏(株式会社本田技術研究所 二輪R&Dセンター)ら開発陣は、普段から125ccスクーターを使用しているユーザーの常用速度域を徹底的に調べた。その結果、125ccスクーターの走行で多用されるのは20~50km/hの速度領域で、さらに最高速度は60km/h程度という性能が確保されれば、ユーザーが125ccスクーターを使用する活動領域の約90%をカバーできることを突きとめたという。そして、この検証結果がPCXエレクトリックには反映されている。
1日の走行距離についても検証を重ね、一充電あたりの走行距離が50km以上であれば、125ccスクーターを使用するユーザーの80%以上が日常的に使用する距離をカバーできることがわかった。カタログスペックでの60km/h定地走行テスト値は41km(1名乗車)にとどまるが、加減速も考慮したWMTCモード値では航続距離50km以上の走行を目指して開発をおこなってきた。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!