V4エンジンならではの複雑なレイアウトを職人技でクリア
K2テックならではの美しさが光るヤマハRZV500R用チャンバー

掲載日/2026年2月27日
取材協力/株式会社ケイツーテック
写真提供、文/箱崎 大輔
構成/バイクブロス・マガジンズ

1970年代後半、主に北米市場で厳格化された排気ガス規制に対応するため、風前の灯火となりかけた2ストロークスポーツモデル市場に再び輝きを与えたのが1979年に発表されたヤマハRZ250/350だった。
このエポックメイキングをきっかけに1980年代のバイクブームが開花したと言っても過言ではなく、1980年代半ばにはレーサーレプリカブームが到来。バイクメーカー各社が世界GPマシンをイメージさせるニューモデルを発表する中、ヤマハは1984年にRZV500Rを発売した。
世界GP500クラスを戦うYZR500のレプリカモデルであるRZV500Rは前シリンダーはクランクケースリードバルブ、後シリンダーはピストンリードバルブという特異な吸入方式を採用し、4本のマフラーは公道走行に必要な機能と性能を与えるため複雑な形状を採用。
デビューから40年以上を経て2026年にリリースされたK2テック製チャンバーは、カスタムパーツとして魅力的なのはもちろんだが、公道での扱いやすさにも配慮した実用的なセッティングは、経年劣化で性能が低下した純正マフラーのリプレイス用としても注目すべきアイテムである。

公道で扱うストリートユーザーに寄り添った製品開発が特徴

2ストロークモデルのチャンバーは単なる排気装置ではなく、エンジンのキャラクターを左右する重要な要素である。公道向け市販車用の純正マフラーには消音性能を筆頭に様々な制約があるが、そうした規制が緩いアフターマーケットのチャンバーの中には最高出力にこだわった製品も存在する。

しかしK2テックが開発するチャンバーは、このRZV500R用に限らず一貫して公道での扱いやすさに重点を置いているのが特長で、そこにはK2テック久保和寛代表のキャリアと想いがある。1990年代から2000年代初頭にかけて全日本選手権GP125クラスや世界GPで活躍し、レーサーであるヤマハTZ125の開発にも関与した経験から、それこそレーサーに匹敵するチャンバー開発のノウハウは充分に習得しているのが久保氏である。

その上でレーサーと公道の道路事情や求められる特性を考慮して、チャンバーならではの弾けるエキゾーストサウンドとレスポンスの良さを具現化しながらもライダーに過度な緊張感を与えることなく、ライディングを楽しめる性能も盛り込んだ実用性の高さこそが同社製チャンバーに共通した特徴であり魅力なのだ。

また丁寧にロール成形された素材をTIG溶接を駆使して組み立てられたフォルムの美しさもK2テック製チャンバーの美点のひとつで、アンダーカウルから伸びる前シリンダー用チャンバーのグレード感の高さは、RZVにこだわるすべてのライダーが納得する仕上がりとなっている。

限られた空間に芸術的に配置された4本チャンバーに注目

RZV500Rのエンジンは先述の通りV4レイアウトで、後シリンダーの純正チャンバーは燃料タンク下を通ってライダーシートの下部分からフレームの外側に取り出されてシートカウル内に収まる独特な形状を採用している。

RZ250/350のようなネイキッドモデルとフルカウルのRZV500Rでは、カウルの有無により開発難易度が段違いで変わる。特に膨張室をシートカウル内に配置しなくてはならない後シリンダー用チャンバーはレイアウト決定だけでも相当の苦労を要したという。もちろん前シリンダー用チャンバーが容易というわけではなく、エンジン下部に水平にレイアウトされたリヤショックやアンダーカウルとの接触を避けながら大きくはみ出さない軌道を描くため、入念な検討を重ねて開発された。

K2テック製チャンバーの代名詞でもある美しいステンレス鏡面仕上げがカウル内側に隠れてしまうのはもったいないが、ハンドメイドのこだわりを内包しているのもオーナーならではの喜びとなることだろう。

性能的にはサーキット向けのピークパワー指向ではなくストリート向けというのも前項で触れたとおりで、基本的なキャブセッティングを変更することなく中速域のトルクとレスポンス向上を体感できる。また高回転をキープする際にはメインジェットのサイズをアップすることで、2スト500ccマシンならではのポテンシャルを引き出すことも可能である。

スタイリッシュなフォルム、バランスの良さが秀逸

ヤマハレーサーレプリカモデルを象徴するストロボライン入りシートカウルの内側に配置された後シリンダー用チャンバーのサイレンサー出口は、シートカウル後部から控えめに存在感をアピールする。

後シリンダー用チャンバーは、振動対策にスプリングジョイントを採用したエキゾーストパイプ取り出し口から複雑なラインを描いてフレーム外側に取り出される。外装パーツに隠れてしまう部分だが、鏡面ステンレスとTIG溶接痕が美しい。

K2テック製チャンバーのクオリティの高さが実感できる、サイレンサー出口の向きが4本揃ったリヤスタイル。

磨く楽しみもある鏡面ステンレスチャンバー

前シリンダー用チャンバーは、純正プレートのマウント位置を流用しながらステップやペダルとの干渉を巧みに避けながらレイアウト。サイレンサーに向けた立ち上がり角度も絶妙だ。

エキゾーストパイプは後シリンダーと同様にスプリングジョイントで、アンダーカウルとのクリアランスを考慮したレイアウトを採用。クランクケース下部に限りなく接近していることが分かるだろう。

エンジン下部には水平に配置されたリヤショックとリンクがあり、それらを避けたレイアウトも特徴的。純正アンダーカウル装着前提で制約が増えるが、各部の辻褄を合わせながら必要な性能を実現できるのも、長年にわたるチャンバー開発で蓄積したノウハウがあるからこそ。

鏡面ステンレスを頂点に3種類をラインナップ

RZV500R用チャンバーの素材は画像の鏡面ステンレス、STDステンレス、スチール製の3種類で、いずれもシート状の材料を手巻き成形してTIG溶接で組み立てている。ステンレス製はサビの心配がなく、美しい外観が長く持続できるのが特長だ。

■各商品別料金

①RZV500R鏡面ステンレスチャンバーTYPE-2 価格:44万円(税込)

②RZV500R STDステンレスチャンバーTYPE-2 価格:41万8000円(税込)

③RZV500R K2スチールチャンバーTYPE-2 価格:39万6000円(税込)

INFORMATION

住所/大阪府羽曳野市野110
電話/072-952-2958
営業時間/9:00~17:00

かつて、ヤマハのテストライダーとして2ストレーサーTZ125の開発に携わり、世界グランプリにもワイルドカード出場を果たした久保和寛選手。久保選手がレース活動に区切りをつけた後に、チャンバー・マフラーのコンストラクターとして独立したときのブランド、それがK2-tec(ケーツーテック)です。自身がテストライダーだったという経歴は、マフラーの開発にも大いに活かされ、「ライダー兼コンストラクター」であることが多くのファンに支持されてもいます。ただし、市販マフラー・チャンバーは、レース用のそれとは異なるもの。かつてバイクブロスでは「市販品はユーザーの求める性能レベルと、彼らが手に取れるほどの価格をバランスさせて、製品にその価格以上の価値があることを認めてもらうことが大切」という話を取材させていただいたことがあります。なお、ヤマハ出身ながら、近年はNSR250R(MC28・21)用チャンバーでも話題を集めるなど、製品ラインアップはホンダなど他メーカー、汎用品にも及んでいます。