掲載日:2021年10月20日 プロが造るカスタム
取材協力/KOTANI MOTORS 取材・写真・文/ガスグラフィックス
現在でも活躍しているビッグスクーターのお店は、中古車販売とスクーターのメンテナンスやカスタムを請け負う専門店という立ち位置で営業展開しているところがほとんどだ。しかし、ブームの創世記にはそういった専門店はまだまだ登場しておらず、各バイクメーカーの販売店が主要となり、業界を盛り上げていた。つまり、普通のバイク店がビッグスクーターブームを生み出すきっかけとなり、その後に各専門店が誕生したという歴史がある。そんな専門店ばかりが生き残ったこの時代に、当時のこだわりを捨てることなく、スクーター専門店ではなくあくまでもバイク店という立ち位置のままで、今でもオリジナルのエアロパーツを開発し続けているお店が、広島県呉市にあるコタニモータースなのだ。
このお店の特徴は、ビッグスクーターのカスタムの定番であるローダウンやロングホイールベース加工はせず、自社オリジナルのエアロデザインと企画性で生き残ってきたことにある。例えば、「デビルシリーズ」と呼ばれる各エアロは、同店代表の小谷さんが大好きな漫画「デビルマン」をモチーフとして造形されており、そのシリーズは今でもホンダ・PCX用やヤマハ・トリシティ、マジェスティS用を販売中だ。また、「武装戦線」シリーズは、人気漫画「クローズ」の高橋ヒロシ氏との正式な契約の元、同漫画に出てくるバイクチームをビッグスクーターで表現。TFOAやドクロといった武装戦線そのままのデザインをビッグスクーターに施し、外装キットとして販売した実績もある。このように、頭に描いた夢を実現する実行力の高さが、このお店が業界唯一の存在として成功した理由だ。
そのコタニモータースが、当時大人気だった「デビル」と並んで新しく立ち上げたスタイルが、今回紹介する「グリッター」だ。元々この言葉はファッション業界で多用されており、ラメや玉虫色のような光沢感の素材を使った煌びやかなスタイルの総称だった。これがビッグスクーター業界では、光沢感云々ではなく、いわゆる派手スタイルとして認知され、当時の大人気エアロ、ベルの「バッドボーン」と「デビル」が、グリッター系デザインの二大巨頭として君臨。この状況を理解した小谷さんがその派手スタイルを自認し、自ら新しいエアロに「グリッター」と命名したという経緯がある。
ご覧の通りの独特の造形と色彩感覚は、漫画や映画といった小谷さんが大好きなジャンルから浮かんだアイデアが詰め込まれている。ユーザー心理という需要を意識し過ぎて中途半端な商品を作るのではなく、あくまでも作り手自らが好きな物を形にすることで、ユーザーの興味を掻き立て需要を掘り起こす。コタニモータースはこうして創世記から今まで、激動の時代を生き残ってきたのだ。