ヤマハ TMAX530
ヤマハ TMAX530

ヤマハ TMAX530 – 大ブームが一段落した現在も休むことなく正常進化

掲載日:2015年09月18日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/田宮 徹

ヤマハ TMAX530の試乗インプレッション

ヤマハ TMAX530の画像

驚くほど軽快な旋回特性と
満足感いっぱいの加減速性能

前後15インチの大径ホイールを採用しながら、スクーターとしての利便性も盛り込み、しかも欧州市場をメインターゲットとした車種であるため、シート高はかなりある。さらに、快適性を重視したシートは横幅もあり、足着き性はあまりよくない。身長167cmで体重63kgの筆者だと、両足の裏がやっと接地する程度となる。

ライディングポジションにはかなり余裕があり、前席に深く座った状態だと、ハンドル位置は遠め。フロアボードの前方に足を投げ出すと、膝を完全に伸ばせる。幅が広めで前側に開閉用のヒンジを持たないシートは、やや前方に座っても快適性が大きく損なわれるイメージは少ないので、小柄なライダーはムリに深く座らないほうが、よりマシンを操りやすいだろう。

エキゾーストノートは、歯切れのよい重低音系。うるさすぎず、それでいてスポーティな雰囲気を演出している。スロットルを開けると、唐突すぎない範囲内で俊敏なスタートダッシュ。極低速域での扱いやすさも備えた特性である。

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しかしすぐに、パワーユニットは本領を発揮。30km/h付近から上の加速力には、かなりの爽快なフィーリングがある。日本の法定最高速度となる100km/hまでは、フルスロットルならあっという間。しかもその状態で、せいぜいポテンシャルの6割程度しか発揮していないイメージだ。つまり、かなり余裕のある高速クルージングを楽しめる。しかも、モード切り替えやシフト操作といった機構を、敢えて取り入れないパッケージングであるため、スタンダードの状態でシンプルにその加速力を楽しむことができる。

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しかし、そんなエンジン性能よりもさらに驚かされるのは、そのスタイリングから想像するよりもはるかに俊敏な旋回性能である。ボディは大柄ながら、とにかく軽快。スポーティに走らせることにまったく抵抗が湧かないどころか、それが普通だと思えてしまう。コーナリング特性はニュートラルで、バンキングはイージー。長めのホイールベースによって、安定感が確保されている。その一方で、剛性感のある車体にグイグイと入力して、コーナーをクリアしていくことも可能で、とにかく楽しい。

センタースタンドを備えたスクータースタイルであるため、大径ホイール採用ながらバンク角は限られているが、とは言えそう簡単にタイヤ以外の車体が接地することはない。ちなみに、最初に接地するのはセンタースタンドで、左側はツメ、右側はそのために設けられたバンクセンサーが当たる。基本的には、いきなりボディを擦って傷つけてしまうことがないので安心してよい。

胸のすく加速性能と超軽快なコーナリング特性に加え、ブレーキの制動力も素晴らしい。剛性のあるフロントまわりと組み合わされていることから、フロントブレーキだけを使った急制動でも、かなりの実力を発揮してくれる。この15年型からは、ABSが全車標準装備となったことから、安心感もより高められている。

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また、エンジンブレーキが効きづらくてライディングポジションが特殊なスクータータイプを、よりうまく手なずけるためには、リヤブレーキの多用が必須となるが、こちらも制動力とコントロール性に極めて優れていることから、市街地走行からワインディングランまで、幅広いシーンで頼りがいがある。

ついスポーティな方向にばかり目が行きがちだが、前述のように極低速走行時のエンジンコントロール性能にも気が遣われていて、また極低速走行時の車体安定性に優れているなど、シティモデルに必要な走行性能も十分に備えている。いわゆるラグジュアリー系のビッグスクーターと比べれば、やはり収納部は小さめと評価せざるを得ないが、それでも30L容量のトランクを備えているため、一般的なモーターサイクルよりはるかに利便性は高い。

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スーパースポーツ的なフルオートマチック二輪という、新たなジャンルを切り開いたTMAXは、初代登場から15年が経過しようとしている現在も、正常進化を続けている。日本におけるビッグスクーターブームは去ったが、だからこそ、その楽しさが見直されてしかるべきモデルである。

TMAX530の詳細写真は次ページにて

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