

掲載日:2008年12月25日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
かつて、1980年前半に今とは違うスクーターブームが存在したのをご存知だろうか。社会のモータリゼーションにあわせ、原付スクーターが一般家庭に広く普及し、一大スクーターブームが巻き起こった。そのときに登場したのが初代ジェンマだ。中でも125ccエンジンを搭載したジェンマは一般的なスクーターとは違い、無段階変速装置を使用せずに3速オートマチックトランスミッションを搭載した、個性豊かなモデルとして注目をあつめていた。その後、時代の流れとともに生産を終えていたのだが、2007年の東京モーターショーで再び登場。今度は斬新なスタイルを身にまとった、新時代のビッグスクーターとして多くのライダーから注目をあつめたことは記憶に新しい。
そして、2008年7月にモーターショーそのままの姿で公道にデビューし、再び大きな話題となった。ここ最近、ビッグスクーターは街の便利なコミューターから、タンデムを前提としたクルーザーとしての使い方が注目されてきた。各メーカーもそれにふさわしいモデルを投入しているが、ジェンマのスタイルはその中でも異彩を放っている。他カテゴリを見渡しても似るものの居ない個性的なフロントマスクと、圧倒的なロー&ロングボディ。一目見ただけで「これはただのビッグスクーターではないぞ」と思わせる雰囲気に興味が尽きなかったが、今回ジェンマを試乗する機会に恵まれた。街の視線を集める新型クルーザーがどんなものなのか、早速体感してみよう。
ジェンマを語る上で外せないのは、異彩を放つルックスだろう。同じスズキのビッグスクーターであるスカイウェイブと比較すると、その差は明確だ。圧倒的にロー&ロングな車体に、フロントからリアまでを繋いだような美しい曲線を描くフォルムは、同じカテゴリに区分されるモデルに見えないほど。あえて「バイクっぽさ」を排したデザインになっており、通常は外部に見せるエンジンやマフラーなどもカバーで覆うことで、いままでのモデルとは一線を画している。はじめてジェンマを見た人なら、これがどのカテゴリのバイクなのか判断に迷うかもしれない。フロントから見るとすっぱりと切り落としたかのようなコンパクトさを感じ、横から見るとクルーザー的な存在感と艶かしいラインがライダーの視線をひきつけ、リアにまわれば近未来的なスタイルが、ジェンマは他とは違うバイクだと主張する。この何者にも似ない個性は、国産モデルにおいて頭一つ抜けたインパクトを持っている。
そして、もうひとつ。この個性的なバイクの特徴として外せないのは、使いやすさだ。車高の低さの恩恵もあり、身長173cmの筆者だと両足がべったりと着くため、街中での不安感は皆無。スカイウェイブにくらべると少し車両重量が増しているが、低重心の恩恵もあり、取り回しは意外なほどやりやすい。容量的にはフルフェイスヘルメットが一つ入るサイズで、いちいち降りてシートを開ける必要がないため使い良い。また、ラゲッジスペース上にあるカード入れは、グローブを装着したままでも開閉しやすいため、高速道路で非常に便利だった。取材中、何度も収納を使用したのだが、一番感心したのはライダーが「乗ったまま」でも使い易いように設計されていることだ。唯一無二とも言える個性的な外見に気を取られがちだが、こういった使い勝手のよさに作り手のこだわりを感じる1台だ。
液晶が多用される最近のビッグスクーターでは珍しく、アナログ指針を基本とした4連メーターを採用している。美しい輝きのメッキリングをあしらっており、高級感もたっぷりだ。透過照明を採用しており、夜間の視認性も高い。
ジェンマの収納スペースは、フロントにあるラゲッジスペースがメイン。約19リットルの容量で、フルフェイスヘルメットが入る大きさだ。またがったままで荷物の出し入れを行えるため、想像以上に利便性が良いのが特徴。
シートはまるでソファのように広々としている。一見するとタンデム重視のように見えるが、ライダー側の形状は見た目以上に腰をしっかりとホールド。ハンドルとの位置関係もよく、ゆったりとしたライディングが楽しめる。
フロントコンパートメントは、左右に分割式の収納スペースを備えている。グローブなどの小物はここにしまっておくのが便利だ。また、ラゲッジ上にはプッシュ式で開閉するセンターポケットを備えている。
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