ホンダ CTX700 デュアル・クラッチ・トランスミッション
ホンダ CTX700 デュアル・クラッチ・トランスミッション

ホンダ CTX700 デュアル・クラッチ・トランスミッション – DCT仕様は快適な旅を約束してくれるか

掲載日:2014年12月15日 試乗インプレ・レビュー    

取材・写真・文/田中 宏亮

ホンダ CTX700 デュアル・クラッチ・トランスミッションの試乗インプレッション

ホンダ CTX700 デュアル・クラッチ・トランスミッションの画像

本来のクルーザー能力を引き出すには
DCTの特性を知って使い分けることが必須

跨がってみた最初の印象は、「思っていたよりも随分小さい」。足が大きく外に開いたり、引き起こす際に力を入れねばならないだろうというクルーザーに対する先入観をきれいサッパリ拭いさってくれる。確かに234kgという車重はネイキッドモデルやスポーツモデルに比べればやや重いが、足がしっかりと地に着いているので、腰の動きだけで十分なほど。専用アクセサリーが備わっているにもかかわらず、だ。プルバック仕様のハンドルは見た目どおりの近さで、背筋をピンと伸ばしたまましっかり握ることができる位置にある。唯一の違和感はステップ位置だ。決して遠くはないが、欧米市場をにらんだスタイルゆえかフォワードコントロールとなっている。踏み込めなくはないが、踏ん張れないので、ライダーの体重はすべて臀部で受け止めねばならなくなり、結果的にロングツーリングでお尻を痛めてしまうのがフォワードコントロールの難点。

DCT モデルなので、ハンドルバー左側のクラッチレバーおよびステップ左側のクラッチペダルはない。キーをオンにしてセルスターターを押し、始動。車体のサイズ感にちょうどマッチした小気味よいトルクが全体に響き渡る。スロットルをひねるだけでじわりじわりとバイクが前進していくというのは、日頃ミッション車に乗る身には違和感以外のなにものでもないが、オートバイの進化には不可欠な要素なのだと受け止め、市街地へと駆け出していった。

ホンダ CTX700 デュアル・クラッチ・トランスミッションの画像

ライディングフィールは軽快そのもの。両足こそ前方に突き出しているが、ほどよい柔らかさのシートと体を前屈する必要がないハンドルによりフラットなライディングポジションとなるので、まるでスクーターに乗っているかのような軽やかさである。669ccという排気量は中排気量クラスにはない野太いトルクと底力を生み出してくれる。特に、DCT の特性を理解して使い分ければ、その効果はさらに大きくなる。DCT には「ニュートラル」「ドライブモード」「スポーツモード」そしてミッションへの切り替えスイッチがあり、なかでも「ドライブモード」と「スポーツモード」の使い分けがその楽しさを左右する。ドライブモードでは、時速30kmほどで2速、時速40kmほどで3速、時速50kmほどで4速……と、10kmごとに自動的にギアが変わっていく。切り替えそのものもスムーズで、速度に合わせて無理なく作動してくれるので、乗り馴れてくれば渋滞でもラクに操作できるほど。一方、スポーツモードはミッション乗車時における、いわゆる“引っ張っている”ギアチェンジ設定となっており、時速35kmほどで2速、時速50kmほどで3速、時速60km以上で4速……と、低速でエンジンがまわされているのが、数字はもちろん体感でもしっかりと分かる。こちらは市街地やワインディングなどで力を発揮するタイプと言え、ミドルクルーザーが信条の CTX700 をよりクイックに走らせることができる。ハイウェイなどはドライブモードが最適で、ストップ&ゴーが一気に増えるツーリング先の一般道ではスポーツモードに切り替えることで、そのマルチロールな能力を最大限に活かすことができるのである。

ホンダ CTX700 デュアル・クラッチ・トランスミッションの画像

もう一点好印象を抱いたのがシートだ。その素材まで伺い知ることはできなかったが、柔らかすぎず硬すぎず、というちょうどいい塩梅の仕様で、臀部そのものは大きな座面で受け止めつつも、両足が真下にすとんと降りる絶妙な設計になっている。大柄な海外クルーザーだと、シートの座面すべてが広すぎて足が外に開いてしまい、結果的に足着き性を損なうケースがあるのだが、この心配りはさすが和製メーカーと唸らされるポイントだ。それだけに、フォワードコントロールとされるステップ位置がやや残念なところ。とはいえ、この CTX700 でのクルージングが快適極まりないことに疑いの余地はない。専用アクセサリーが備わった異例のインプレッションではあったが、CTX700 の特性を感じれば感じるほど、ウインドスクリーンやサドルケースがないことの方に違和感を覚えてしまうところが実に不思議。飛ばさずにハイウェイを気持ちよく流しつつ、気長にツーリングを楽しめるモデルだということを体感させてくれた。

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ホンダ CTX700 デュアル・クラッチ・トランスミッションの詳細写真は次ページにて

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