掲載日:2021年07月02日 試乗インプレ・レビュー
取材・写真・文/伊井 覚
HONDA CB125R
近年、原付二種は大いにそのレパートリーを増やしている。理由は普通自動車免許から限定解除するだけで乗れる免許区分と、ファミリーバイク特約でカバーできる任意保険の安さだ。国内メーカーの中でもホンダは特にこのクラスに力を入れており、スーパーカブC125やモンキー125、CT125ハンターカブなど、多くの人気車種をラインナップしている。そして、ホンダの代名詞とも言えるCBシリーズの楽しさを秘めたにが、このCB125Rである。一度このマシンに乗って、バイクを操る楽しさを知ってしまえば、もう後戻りはできない。
CB125Rは今回のモデルチェンジによって、排気量はそのままに最高出力で+1.2kW(11kW/10,000rpm)、最大トルクで+2N・m(12N・m/8,000rpm)ものエンジン性能向上を果たして見せた。さらにDOHCのエンジンは通常、OHCよりも高回転型になるというのが通説だ。しかし実際に乗ってみると、このCB125Rは旧モデルよりも低〜中速域のトルクアップが顕著に感じられた。OHC時代の2バルブからDOHC4バルブへとバルブ数が増えていることから、高回転だけでなく、全域でのパワー・トルクアップ効果を得ることに成功したのではないかと思う。
そのエンジンキャラクターの違いはボア×ストローク、及び圧縮比の変化からも見てとれる。旧モデルが58.0×47.2mm(圧縮比:11.0)だったのに対し、新型は57.3×48.4mm(圧縮比:11.3)となっているので、大まかな特性は変わらないが、旧モデルに比べればややロングストローク気味になっていると言えるだろう。
実際に乗ってみて驚いたのが、本当に軽やかにエンジンが回るのだ。油断しているとあっという間に10,000回転まで針が振れてしまう。しかも、スペック上では一応10,000回転で最高出力となっているのだが、そこから上でもまだ加速するのだ。旧モデルも割と最近乗っていて、とてもよく回った記憶があるのだが、それよりもさらに高回転が使いやすくなっていた。
さらに言えば、いわゆるパワー曲線の谷のようなものが全くと言っていいほど感じられない。ギクシャクしたり、ある回転数でドッカンと急に出力が向上したりすることがなく、驚くほど自然に加速していくのだ。
かと言って低回転のトルクがないかと言われると決してそんなことはなく(もちろん125ccなので限界はあるが)、ストップ&ゴーの際のシフトアップもさほど忙しくないし、2速発進だってストレスなく可能だ。街乗り最強なのは言うまでもないが、ジムカーナのような最高速の要らないレース競技でもかなり戦えるマシンなのではないだろうか。
変わったのはエンジンだけではない。フロントサスペンションにはCB650R同様のSHOWA・SFF-BP(セパレート・ファンクション・フォーク・ビックピストンタイプ)が奢られている。これはフロントフォークの左右で減衰機構とプリロードを分担することで軽量化を果たしたものだ。実は、最初に跨って前後に揺らしてみた時に、ちょっと嫌な予感がした。サスペンションの動きが柔らかく、僕の苦手なピッチングの大きい(フロントブレーキをかけた時にフロントフォークが大きく沈み込む)タイプのマシンに思えたからだ。しかしそれは杞憂だった。軽量な車体のおかげか、はたまたフレームがしっかりしているからなのか、実際に乗ってコーナーでブレーキングしてみると、驚くほど車体は安定しており、嫌な沈み込みはない。スポーツ走行をするならば、もう少しフレームの剛性を上げて、サスペンションも硬めにセットすべきだろうが、街乗り重視のモデルと思えば、このセッティングで正解だろう。
ブレーキも必要十分に機能するし、ABSの動作性も不自然な感じはなく、安心できた。ただ一つだけ気になったのはハンドリングが軽やかすぎて、コーナーでは問題ないが、Uターンなどでハンドルを大きく切った時に少しフロントタイヤが切り込みすぎる感覚があったことだろうか。