帰国子女のSPORTMAX Q4が、どんな車両でも最高なポテンシャルを発揮するワケ

掲載日/2020年7月30日
取材協力、写真提供/住友ゴム工業株式会社
取材、文、構成/バイクブロス・マガジンズ
2019年、DUNLOPが満を持して発売したSPORTMAX Q4。公道からサーキットまで幅広い使用用途がウリでスポーツ嗜好のライダーの興味を独り占めしているこのQ4だが、前身となるタイヤがDUNLOPの国産ラインナップにないことに気がついた読者もいるのではないだろうか。そう。実はこのタイヤはアメリカのモト・アメリカというレースから生まれた帰国子女なのだ。

DUNLOPのワンメイクレース、モト・アメリカ!
元はAMAスーパーバイク

モト・アメリカと聞くと耳馴染みのない方も多いかも知れないが、AMAスーパーバイクチャンピオンシップと聞けばどうだろう? 1981年、82年のチャンピオン、エディ・ローソンの名は誰もが聞いたことがあるほど有名だ。さらに2002年にはMotoGPでも活躍していたアメリカのヒーロー、故ニッキー・ヘイデンがチャンピオンを獲得している。

実はこのAMAスーパーバイクが2015年に姿を変えたレースこそが、現在のモト・アメリカなのだ。正式名称はモトアメリカ・スーパーバイク・チャンピオンシップ。FIM承認のスーパーバイクストック1000、FIMスーパーストック1000、FIMスーパースポーツ300cc〜750cc、ツインズ800cc、ジュニアと、様々なクラスでレースが開催されている。

このレース、実は2008年まではオープンタイヤルールで行われていたが、2009年からはDUNLOPがサプライヤーとしてサポート。つまりDUNLOPのワンメイクレースとなっているのだ。DUNLOPはそこでトップライダーたちの協力を得つつ、タイヤの開発、テスト、マーケティングまで行っている。

各クラスによってタイヤの使用本数制限が決まっており、例えばストック1000クラスだと1日1レースの時は8本、1日2レースの時は12本となっている。DUNLOPは8〜10名のタイヤ交換スタッフおよび3〜5名のテクニカルサポートスタッフを現地に派遣しており、そこでタイヤのフィッティングサービスを実施している。また、特定のチームには専門のエンジニアが帯同し、シーズンを通して強力にサポート、開発のヒントとなるフィードバックを受けている。

もうお分かりだろう。SPORTMAX Q4は実際にモト・アメリカで使われてこそいないが、そこからフィードバックされたコンパウンドやタイヤ形状などの技術がふんだんに盛り込まれているのだ。

出場車両は多岐にわたる……
DUCATI パニガーレV4の進出

モト・アメリカの出場車両は日本でもおなじみのホンダCBR1000RRヤマハYZF-R1、スズキGSX-R1000、カワサキZX-10Rの他、BMWのS 1000 RRやDUCATI パニガーレV4 Rも見られる。

Celtic HSBK RacingからDUCATIパニガーレ V4 Rでストック1000クラスに出場するPJ Jacobsen。2020年開幕戦となるRoad America Round 1では優勝を決めている。

DUNLOPではレースをイーブンコンディションで行うため、これらの幅広い車両すべてに最適なコンパウンド、形状などの開発を自らに課し、開発→レース→フィードバック→開発のサイクルをひたすらに継続してきた。そこで得られた技術や知見を活かして開発された公道向けハイグリップタイヤこそが、SPORTMAX Q4なのだ。

モト・アメリカの技術がフィードバックされている
SPORTMAX Q4は様々な車両にマッチする

DUNLOP
SPORTMAX Q4

Size(F):120/70ZR17(58W)
Size(R):180/55ZR17(73W)、180/60ZR17(75W)、190/50ZR17(73W)、190/55ZR17(75W)、200/55ZR17(78W)

SPORTMAX Q4にはDUNLOPがサーキットで培った様々な技術が使われているのだが、ここでは2つだけ簡単に紹介したい。まずはJLT(ジョイントレストレッド)構造。これはひも状のゴムを巻きつけてトレッドを成形する技術で、板状のゴムを巻きつける従来の製法に比べ、タイヤの真円度が飛躍的に向上する。そのため、タイヤのたわみを抑えることができ、高い安定性と、加減速、コーナリング時の接地面積の拡大による接地感の向上を実現しているのだ。

次に CFT(カーボンファイバーテクノロジー)の採用だ。これはタイヤのサイドウォール部にカーボンファイバーフィラメントを配合し剛性を調整することで、バイクを深くバンクさせた状態でも、安定感があり機敏かつ正確な操舵特性を実現することができる技術だ。

「カーボンと聞くと硬いイメージがあるかも知れませんが、ここで用いているカーボンファイバーフィラメントは、ゴムと切り刻んだカーボンファイバーを最適な配合で混ぜ合わせ、硬さと柔らかさのベストバランスを追求したものです。ただ硬いカーボンを用いただけではとてもQ4の目標だったバンク角は実現出来なかったでしょう。柔らかいと言ってもソフトコンパウンドのような柔らかさとも違います。ぜひお試しになってください」というのは今回の取材にご協力いただいたUS DUNLOPのJohn Robinson氏の言葉。

では実際にSPORTMAX Q4でライディングするとどのような感じなのか、それは以下の記事を参照して欲しい。

一般公道でも積極的にバイクを操る楽しみを感じられるSPORTMAX Q4

サーキットを、よりアグレッシブに攻め込めるステビリティーの高さが抜群のSPORTMAX Q4

上で紹介したインプレッション記事で使用しているBMWのS 1000 RRやモト・アメリカで優勝しているDUCATI パニガーレV4のような車両にもSPORTMAX Q4はとてもマッチする。

さらにJohn氏によるとQ4はとても「手のかからないタイヤ」だという。その理由は例えばちょっとしたサーキット走行の時にはタイヤウォーマーなしでも走行が可能だし、さらに街乗りと同等の空気圧でも使用することができる。つまり、街乗りもして、そのまま自走でサーキット走行も楽しむ、といった用途に最適なタイヤなのだ。

ちなみに推奨空気圧を聞いてみたところ「アグレッシブな乗り方やサーキット走行会であれば、フロントが220kPa、リアが205kPaからはじめて、ライダーのペースや車重、天候なども鑑みて調整して行くのが良いでしょう。高速道路や一般道ではメーカー推奨空気圧での使用を推奨します」とのこと。

日本とアメリカでは走っているバイクも、ライダーの体格も違う。しかし、ライダーがタイヤに求めるパフォーマンスは全世界で共通だ。グリップ力に優れ、安心感のあるタイヤを履くことはライダーの自信に繋がり、更なるライディングスキルの高みへと成長するきっかけにもなる。このSPORTMAX Q4はアメリカのUS DUNLOPから日本人ライダーに向けた、より高みを目指すための招待状なのかも知れない。

INFORMATION

住所/東京都江東区豊洲3-3-3豊洲センタービル
電話/03-5546-0114
営業時間/10:00~18:00

1889年、イギリスにて設立されたダンロップ社。今や、誰もが知る“ダンロップ”というこのブランドは、創立者の息子が「自転車をもっと楽に走れるようになるにはどうしたらいいのか?」という素朴な質問を父に投げ掛けたことから、その歴史をスタートしています。四輪は勿論、現在では国内外でのモータースポーツシーンでも活躍し、SUPER GT(元 全日本GT選手権)を中心にタイヤを提供。以前は全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)、全日本F3000選手権等にもタイヤ供給を行っていました。二輪車用としてはSPORTS MAX・GP・ARROWMAX・KABUKI・BURORO・ENDURO・POLSO!をラインナップ。また純正として同社のタイヤを採用するメーカーも多数存在し、いつの時代も、その時々の環境に対応し、性能にも一切妥協をしないその作り込みは一流ブランドならではのものです。