掲載日:2025年04月16日 試乗インプレ・レビュー
写真/川上 礁太 取材・文/小松 男
ヤマハ ジョグ125 vs ヤマハ アクシスZ
話題沸騰人気爆発の対決企画!!と思っているのはテスター役を担当している私だけかもしれませんが、クルマでも家電でも何なら料理だって比較や対決はたくさんの人の興味を引き付けます。ましてや趣味性の高いバイクというものが題材となれば、おのずとライダーは興味を示してくれるはずです!
そんな対決企画での今回の題材はジョグ125とアクシスZで、どちらもヤマハ製の小型自動二輪クラスのスクーターであり通勤通学快速として大人気モデルです。ただ同じようなパッケージングであるにも関わらず、わざわざ2モデルを分けて展開していることにはどんな意味があるのでしょうか?この2台、どこにどのような違いがあるのでしょうか? 見た目や装備の違いはもとより、実際に走らせてみて感じる相違点や実寸値などスペックシートからは見えない部分を探っていきたいと思います!
アクシスZはジョグと並べてみると若干ですが大柄なボディにされている印象を受けます。ジョグ125と比べると全体的に重厚感があり、どっしりとした佇まいです。カラーリングも写真のグレーのほか、ブラック、ホワイト、パープルと渋めのラインアップです。
ジョグ125はボディの下側にブラックのパーツが多用されていることもあり、シャープで軽快な印象を受けます。デザイン的にはスポーツスクーター的要素が強めです。カラーリングは写真のライトブルーのほか、レッド、ブラック、ホワイトとポップ系のラインアップです。
ハンドルマウントのメーターカバーに収められたヘッドライトや、フロントマスクパーツのウインカーなど、基本的なデザイン構成は両車似ていると思いました。この手の原付スクーターは同様のパッケージングが定石となっていますね。
昭和50年代に生まれ育った私としては50㏄の原付スクーターはとても身近なものでした。我が家はもちろん、ほぼすべての友人宅にも原付スクーターがありました。私が小さな頃はまだノーヘルで乗って良い時代でしたし、ちょっと大きなスーパーに行けば売っていたりもしたのです。
そんな50cc原付スクーターは駐車問題や電動アシスト付き自転車の台頭など時代の移り変わりによって販売台数が落ち込み、さらに環境問題の観点から国内メーカーは生産を辞めはじめており、今後はこれまでの50cc二輪車同等のスペックとされた125ccモデルへと移行するようなのです。
そもそもここ20年程は先の問題などで50cc市場が縮小し、代わりに125ccモデルのレパートリーが増え人気が高まっていましたが、今回取り上げる”ジョグ”なんて車名を耳にすると、『あいつんちのオバチャンが乗り回していたなぁ』とか『先輩ヤンキーがマフラー切って爆音だったな!』など青春が蘇るわけです。
そんなジョグも現在の50ccモデルを見てみると、昔はライバル関係だったホンダからOEM供給されている状況ですし、ホンダは50cc二輪車の生産を辞めると発表しているので、おのずとジョグ50も無くなる運命です。ええっ! 残念!! と思っていたのですが、それならば上位モデルのジョグ125にするか、というのが1台目の選択。
対してもう1台に選出したアクシスZは”アクシス”という車名にあまりなじみが無いので、いまひとつピンとこないというのが本音です。台湾ヤマハが作ったグランドアクシスがヒットした記憶が残っていますが、ちょっと大きな原付スクーター程度の印象でした。
今回両車を並べて見比べた際に最初に思ったことは、”デザイン自体は似ているなあ”ということでした。でもシートに跨ってみると、アクシスZの方がややゆったりとした余裕のあるライディングポジションという感じ。各寸法も全体的にアクシスZが大きめに作られています。それでは実際に走らせて感触の違いを調べて行きましょう。
ジョグ125の方がコンパクトな分、シートの後方に座ってしまう印象です。あまり意識しないで跨ってみても、シートの着座位置の違いが分かりました。アクシスZの方が、若干ゆとりがあります。ライダーは178cm、71kg。
ジョグ125のシート高は735㎜、アクシスZは770㎜。さらにジョグ125のシートはサイドのシェイプ(削り)が深いので足つき性は良い印象です。車重はジョグ125が95kg、アクシスZは100kgでどちらも取り回しは楽ちん。
軽量かつコンパクトにまとめられた車体、短めのホイールベースに十分なパワーを持つエンジン。ジョグ125はスポーティな走りを楽しめます!
昭和から平成初頭にかけて、いわゆる走り屋が流行っていたような時代には峠道や湾岸エリアなどで、原付スクーターで膝を擦るような走り方をするライダーも見かけましたが、令和となった今ではそのような使い方をする人はほとんどおらず、どちらかと言えば、通勤通学快速として利用するのが主な用途となっています。特に今回取り上げている原付スクーターは法定速度規制が一般の自動車と同じであり二人乗りもできるので、どちらかと言えば、”走りよりも使い勝手”が購入の際のポイントとなってくると考えています。
そのような意に反してジョグ125は出だしから強めの加速感を得られるスポーティっぷりを見せつけてくれました!プーリーのセッティングによるものなのか、加速の際の振動はややアクシスZよりも強めに感じられますが、ダッシュ力はありますし、ホイールベースが短いおかげでクルクルと小回りが効きます。ただしサスペンションの動きはやや硬く、シートの前後長が短いためライディングポジションはタイト。総じてスポーツ系を好むライダー向けになっていると思えます。
アクシスZのフロントブレーキはディスクなのに対し、ジョグ125はドラムを使用しています。ただドラムブレーキだからと言って制動力が劣るような感じはありません。なおフロントブレーキは握るとリアブレーキとの前後連動となっています。
リアサスペンションのバネレートが異なります。アクシスZは両端の巻きが多めで中間緩め。ジョグ125は逆に両端が緩めで中間付近の巻きが多いです。これは両車の乗り味の違いに深い関係がありそうです。
シートの前後長はアクシスZがおおよそ81cmなのに対してジョグ125は約71cmと10cmも違いました。普段のソロライドではもちろん、タンデム時も結構乗り味は変わってくるでしょう。
キーシリンダーの形状、そして給油口やコンビニフックの位置などは両車共通です。しかしフロントポケットを見てみると、ジョグ125の方は口が広く浅め、アクシスZでは口は狭いものの底が深い形状となっています。以前50ccの原付スクーターでスマートフォンを入れて走行していたら段差で落としたことがあるので注意。
速度計を確認してみるとジョグ125が120km/hまでの目盛なのに対してアクシスZは140km/hまで刻まれています。公道でのテストだったため最高速度計測はしませんでしたが、感触的には両車共にメーターを振り切るようなことはなさそうです。
ジョグ125と並べてみるとアクシスZの方が若干大きく、実際に跨ってみてもがっしりとした感じがあります。スロットルをワイドオープンするとギャーンと加速していくジョグ125に対してアクシスZはスイーッとモーター的な静かな加速感。ただ両車一斉にヨーイドンとスタートしても大差はありません。つまり双方の味付けによるキャラクターの違いなのです。
車重は5kgの差しかないのですが、走らせてみるとアクシスZの方がどっしりとした印象を受け、それを高級感があると思う人もいるかもしれません。ジョグ125と比べると優しい乗り心地ではあるので、せかせか走るようなことが苦手なライダーやタンデムライドも頻繁に行うような方に向いていると思います。
アクシスZの走りもかなり良いです。ジョグ125と比べパンチは薄目に思えましたが、実際に競争してみるとアクシスZの方が速く走れる場面も多いと思います。それと乗り心地が良いのもアクシスZの魅力です。
フロントタイヤの先端からリアタイヤの後端までの長さを計測するとジョグ125はおおよそ162cm、アクシスZは174cmでした。両車とも10インチタイヤを採用していますがジョグ125は幅が10mm少ないです。
どっちも一緒でしょ!? と思いながら始めた今回の対決企画でしたが、走らせてみるとその差は明確に感じられましたし、各部を計測してみると方向性も異なっていることが分かってきました。例えばジョグ125は、50ccの原付スクーターと同等のサイズなので、駐車場や置き場に困ることは少ないはずです。電動アシスト付き自転車と比べてみてもむしろ小さいくらいに思えることでしょう。
そしてそのコンパクトさを活かしたスポーティな走りを楽しめるのもジョグ125です。快活なハンドリングはもちろん路地裏をあみだくじのような走り方もできてしまいます。
アクシスZは原付スクーターの良いところ全部増し的なキャラクターです。シート下のユーティリティスペースは広く、フラットなフットボードの前後長もジョグ125と比べて長いので足元も快適。普段の道具としてはアクシスZが便利ですが、機動力や若々しさはジョグ125に劣る部分もあると思いました。
現在の新車価格はジョグ125が26万7300円、アクシスZは28万3800円。1万6500円の差ははっきり言って小さいと思え、それぞれのキャラクターを踏まえた上で決めれば、どちらを選んでも失敗は無いですよ!
シート下ユーティリティスペースの”桶”部分の前後長を計測してみたところ、ジョグ125は約48cmなのに対してアクシスZはおおよそ63cmとかなりの差がありました。長めの荷物を入れることがあるならばアクシスZですね!
ユーティリティスペース最後部の高さを比べてみると、アクシスZは約23.5cm、ジョグ125はおおよそ21cm。”桶”内部の形状も異なるため、使い勝手の良し悪しは一概に言い表せませんが、容量が大きいのは確実にアクシスZでした。
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