掲載日:2025年10月24日 フォトTOPICS
取材協力/マダム モーターサイクリスト(MMC) 取材・写真・文/森下 光紹

Vol.23 マダム モーターサイクリスト(MMC)
2025年の秋は日本にとって忘れられない出来事が起きた。それは初の女性総理大臣の誕生である。今や正に女性の時代と言っても良い。正直、どんな業界も何だか煮詰まっていて、前に進めていない印象なのが近年の日本だが、そんなムードを断ち切って行くのが女性のパワーなのかもしれない。

今回は、総勢90名を超える女性ライダーだけのミーティングがあるというので、少しお邪魔してみた。開催地は富士山の麓にある山中湖で、リゾートホテルにて一泊した後に湖をほぼ一周、参加者全員でのパレードランを行い、湖畔のパーキングにて山梨県警の女性白バイ隊員を招いての安全運転啓蒙活動も行うというものだった。

グループの発起人で代表者は香川県在住の三谷聖子さん。MMCの誕生は今から20年前で、SNSのmixi(ミクシィ)を利用して広く仲間を募集したのが始まりだ。

「最初の名前は(女性だけの中高年バイク仲間)というものでスタートしました。参加条件は、40歳以上で独立独歩の女性に限定していて、それは現在も同じです。MMCとは、マダム・モーターサイクリストの頭文字で、現在のグループ名になっています。現在のメンバーは1,500人くらいですね」

三谷さんのバイク歴は30年以上になる。きっかけはご主人で、三谷さんの友人がバイク乗りになったことを知ったご主人が彼女の後押しをして、共にバイクの免許を取得。ふたりで始めたクルマ屋稼業を営みながら趣味はバイクツーリングとなったのだ。しかし、ほどなくしてご主人が亡くなってしまうと、会社の運営を引き継ぐこととなり、クルマの知識が乏しい三谷さんはスタッフを募集。その後会社を大きく成長させて行ったのだった。

「クルマは仕事だから趣味にならないですよ。それに家にいると仕事のことばかり考えるから、バイクに乗って出かける時が私にとっては最大の癒やしですね。家でのんびりしたいなんて、全然思わないのよ。だから出かけたくてしかたがない。その時、そんな女の人って他にもいるんじゃないかしらって思って、このグループを立ち上げたんです。だから40歳以上で、独立独歩出来る人という条件なんです。ほら女性の場合、子育て時期は特別で、やっぱり自分の時間は簡単に作れないし、若い頃は自由でも親の庇護のもとでは自由のありがたさは理解できていないでしょ。40歳過ぎたって、本当に自分の自由を満喫するのは色々とバランスを考えなくちゃならないから誰だって大変です。それでも繋がれるって、素敵なことだと思うのよ」

三谷さんは数多くのバイクを乗り継いでいる。普通二輪免許の時代は250や400のスポーツバイクだったが、大型にステップアップして最初に購入したカワサキのゼファー750に長く乗り、長距離ツーリングにも出かけるようになった。その後はハーレーやBMWのフルサイズにも数台乗り換えたが、あまりに重い大型バイクは、長距離ランは得意だが、取り回しの点で機動力が無いことに閉口して、その後はミドルクラスの車種を選ぶようになったという。現在の愛車は、ホンダのレブル500とヤマハのセロー225。そして息子さんから引き継いだエリミネーター400だ。今回のミーティングにはレブルで参加。実は下見を含めると、三回連続でこの山中湖まで自走してきていると笑顔で話してくれた。

今回の参加者は90人ほどで日程は2日間。前日にホテル入りして、朝から山中湖を一周するパレードランに出発する。朝のミーティング後は、参加者のひとりでもあるモータージャーナリストの川崎由美子さんによるライディングレクチャーも開催されて、ホテル前からスタートとなった。安全を考慮してほぼ10台ずつに前後2名のビブスを着込んだスタッフが付き、山中湖畔を右回りに走り出す。これは一般道の交通の流れを遮断しないような配慮と、参加者の安全確保という点で完璧な組み立てだった。そして右左折が必要な交差点にもスタッフがいて参加者を誘導する。その全員が女性なので、笑顔の絶えないパレードランになった。最後は湖畔のパーキングに誘導されて、そこには山梨県警の女性白バイ隊員が待っていた。パーキングに順序よく並べられたバイクの脇で、安全運転への講習会と記念撮影会が実施されて、一般観光客への安全運転啓蒙活動としてのチラシ配布も積極的に行われた。

MMCの活動は、年間15回以上を数えるという。そのほとんどが現地集合で現地解散。内容は様々だが、基本的に自走可能な個人が自己責任で参加できることが前提になっているので、ショップ主催のマスツーリングとはまるで趣の違う集まりであることは間違いない。今回の参加者も日本全国から集まっていて、北は北海道の根室から、南は佐賀県からの来訪者もおられた。関西から駆けつけたライダーも多く、みな自分のツーリングの中に、このミーティングを楽しんでいるのだった。

「まだ帰らないわよ。他にも行く計画を立てて出発してますからね。それにしても富士山が見えて本当に良かったわね。昨日は雨だったから少し心配してたのよ。普段はソロツーリングが多いけど、みんなに会えて楽しいです。やっぱりバイクって最高ですよねー!」


女性がバイク乗りになることが珍しかったのは遠い昔のことである。しかし先人のライダーが時代ごとに残してきた印象は、現代の女性ライダーをより強くしたのではないだろうか。彼女達の行動力は様々なものを動かす原動力にこの先もなっていくに違いない。史上初の内閣総理大臣になった高市早苗氏もまたバイク乗りだった。高速道路のタンデムを実現させたのも高市氏の手腕であると聞いている。

ミーティングが終了して、メンバー各自がまた自分のツーリングへと笑顔で戻って行くその姿はとても清々しくて力強さを感じた。その中心人物である三谷さんは名プロデューサーである。そしてご自身も思い切りバイクライディングを楽しんでいる人。そんな素晴らしいMMC20周年記念イベントなのだった。









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