利根川源流を探る

掲載日:2008年06月27日 ツーリング情報局関東エリア    

利根川の源流が見たい
源流探しのツーリング

イメージ桜も散り、気温もグングン上昇。たまらなくツーリングに行きたくて、体がむずむずしてきました。混雑する通勤電車の中で地図を開いて目的地を物色することに。「こう行ってここで曲がって、このくねくね道を登りきって…」などと妄想し、ついついニヤニヤしてしまうWRTです。まわりから見ると相当変なヒトだと思います。しかし、現実には、週末のたびに雨。千葉県在住の私は、利根川にも近いのですが、雨で川の水は大増水。この水はどこから来るの? 谷川岳あたりが源流ってホントかな? いつか源流を探してみたい。でも、千葉県から利根川を遡るために、ずっと川原を行くなら、モトクロッサーを準備しなきゃ。そりゃ無理。そんなことを考えていましたら、6月最初の日曜日、見事に晴れ上がりました。早速念願の「利根川源流探訪の旅」、一気に源流近くまで行っちゃいましょう。さあ、出発です。

イメージ先週も雨、前日の土曜日も雨だったので、晴れ渡った早朝の「関越道高坂SA」はバイクだらけです。バイク駐車場に収まるはずもなく、SAの各所にバイクのたまり場ができてしまっています。2輪、4輪、歩行者が入り乱れる状況は危険。東日本高速道路会社さん! 利用実態に合わせて2輪専用駐車スペースを拡大するなど抜本的な改善をお願いします! それから、一番大切なことは、2輪専用の料金制度をゼッタイ作って下さいね! …と注文を付けつつエンジンスタートです。朝の関越は北上するにしたがって車両の数も減り、気持ちの良い高速巡航で、あっという間に「沼田IC」に到着。活動範囲が飛躍的に広がる高速の威力に感謝です。このあたりでは、関越道下り車線から見て左手に利根川が流れているはず。でも、利根川源流に近い「水上IC」まで行かずに沼田で高速を降りた訳は? それは、素晴らしい新緑の利根沼田地域の景色を楽しむためなのです。道木佐山沼田線(265号線)を進みますと、畑の中に“薄根の大桑”という巨木があります。前回ご紹介した三春の滝桜の巨大さに比べれば小さいですが、なにしろ桑は低木のはず。養蚕の盛んだったこの地域に特有の山桑が、幹周り5m、高さは10mほど、樹齢1500年と言われる巨木となり、旺盛に枝を伸ばし、葉を茂らせ、生命力に溢れています。パワーを感じますね。さぞ多くの桑の実を成らせることでしょう。桑の実は、熟すと赤紫色になり、食べると口中が黒紫になるので食べたことがすぐに分かります。お年を召した方は食べたことがあるかも。すごい成分が含まれているらしいですよ。英語ではマルベリー(mulberry)。こう書くとカッコイイですね。

川を遡り一ノ倉沢へ
源流ではなく、支流でした…

イメージ大桑を後にし、緩やかなカーブの山道を快走します。りんご園、りんご園、りんご園と看板の連続。秋にはリンゴの香りが漂うに違いないステキな道です。そして上牧で61号線と合流し、利根川に沿って北上しましょう。並走している関越道は水上の先で長~い関越トンネルに入って一気に新潟県越後湯沢方面に突き抜けてしまいますが、私はJR上越線と平行して山あいを水上温泉郷、湯桧曽と抜けていきます。すると、上越線も清水トンネルに吸い込まれ、地中に潜ってしまいます。このあたりからは、雪が残っている谷川岳が間近に眺められ、壮大さ、崇高さは胸を打つものがあります。ここで触れておきたいのが上越線土合駅。下りホームはなんと地下70mの新清水トンネルの中にあるそうで、ホームから改札口まで462段、加えて24段の階段でやっとホームに行けるのだとか。鉄道オタクの「鉄チャン」なら迷わず降りて行くのでしょうが、あいにく私は「鉄チャン」でもなく、膝にも故障があるので、迷わずパス! 天神平に行く谷川岳ロープウェイも迷わずパス! この道を行けるところまで行ってみよう。なにしろ源流探訪の旅なんだから。すると、道はどんどん狭くなり、路面は水、苔、落ち葉枯れ木でグヂョグヂョ。鬱蒼とした森の中の登山道みたいな感じに。現に中年紳士淑女を中心に登山姿のハイカーがたくさん歩いています。木々の間からは、谷川岳の絶景がちらりちらりと見えますし、路面には神経を使うし、狭い道なのに4輪が連なって駐車しているし。もう行き止まり近し? 「こんなところで250kgの車体をUターンなんてしたくない!」そう思っていますと、4輪車がこの道を何台も降りてくるのです。すれ違うのも大変ですが、そんな車に道の先のことを聞くと、行き止まりに駐車場があるから行けますよ、と親切に教えて下さいました。

イメージ安心して進み、とうとう到着。見上げるとそこは一ノ倉沢の絶壁。感激! 1000mくらいありそうな険しい断崖絶壁。梅雨前の快晴の日、空気は澄み、岩肌の一つ一つまで手に取るように見えます。まさに絶景。バイクでここまで来られたことに感謝しつつ、この場所の神聖さ、崇高さを考えると、エンジン付きの乗り物で来てはいけなかったのではないか、と後悔の念も起こりました。一ノ倉沢は、ロッククライミングの名所でもあり、昭和の初めから最近までの間に800名近い死者を出しているとか。それを知ると、一層凄絶な印象で岩の壁が迫ってきます。雪渓からは冷たい水が流れ出しています。「これが利根川源流?」と色めき立つ私でしたが、地図では、利根川支流の「湯桧曽川」。少々がっかりです。がっかりついでにもう一つ。私の後、30台近い翼マークの赤いジャケットを着たバイク集団が到着。同じライダー仲間なので言いにくいのですが、台数がここまで多いと、さすがに異様で迷惑です。ライダーお一人お一人はマナーも良く気を遣っているのでしょうが、集団で出す排気音、排気臭、迫力、相乗効果でこの場所には違和感丸出しです。その中のライダーの一人が雪渓を足で蹴って崩そうとしたのを目撃してからは、まさに軽蔑の対象になりました。数が多いと全然違う印象を与えるということ、私たちも認識しなければなりませんね。反省! 素晴らしい場所でしたが、ここは2輪4輪を問わず、エンジン付の乗り物は通行禁止にすべき場所だと強く感じました。

イメージ狭い登山道をすれ違いにも注意しつつ下り、湯桧曽まで戻って63号線を利根川源流に向かって進みます。すると、「矢木沢ダムこちら」の看板が。来た来たぁ、いよいよ利根川源流を極める地点が近づいてきました。ダム手前の「テプコ電源PR館」には東京電力のマスコット“デンコちゃん”の像が。といっても、関東以外の方はご存じないでしょうね。ここからは、通常の道ではなく私的な道路。管理用道路ですが、一般に開放されています。しかし、ここからが奥深い。素晴らしい道ですが、時々小さな落石や泥の固まりが落ちています。右に左に車体を倒し込んで気分はもうGPレーサー(笑)。延々走り、途中路肩にはなんと猿も! …目が合ってしまいました。

イメージそしていよいよ矢木沢ダムに到着。ここが私たち一般人が到達できる利根川源流最上部。でも、広大なダム湖ですから「源流」のイメージゼロ。一ノ倉沢雪渓から流れ出す小川こそ「源流」にふさわしい。「誰があっちを支流と決めたんだ?」と八つ当たりする私でした。でも、私は「ダム萌え」なヒトなので、ダムには満足。利根川源流は、地図では矢木沢ダムから北上し、新潟県境に近いところのようです。引き返す時、またまた路肩の猿と目が…今度は2匹に増えていました。ダム続きですが、次は奈良俣ダム。走っていくと高さ158mの巨大なダムの擁壁が眼前に迫ります。石や粘土を積み上げて作られてロックフィルダムだそうで、なるほど表面にはたくさんの岩がごつごつ出ています。矢木沢ダムより見た目興味を惹きます。

中禅寺湖ではトンカツを!
知る人ぞ知る名物なのです

イメージダム三昧の後、水上片品線(64号線)で東進。ずっと渓流と平行して走るルートなので、どこまでも渓流の水の流れがついてきます。まるで奥入瀬渓谷みたい。遊歩道を整備すれば、素晴らしい渓谷美を楽しめる場所になることでしょう。ただし、羽虫が大量発生。渓谷から湧いて出て、スクリーンは虫だらけ。渓流魚の餌、鳥の餌にもなるみたいですね。尾瀬登山口の一つである鳩待峠へは通行禁止ですが、5月末にやっと冬期閉鎖から開通したばかりの坤六峠、津奈木橋を経由して片品村に至ります。冬の気配をまだまとっている浅い緑、すがすがしい新緑の中を走ると、体全体緑色に染まりそう。すぐそこが尾瀬なのですから、贅沢なツーリングルートです。

イメージさあ、そろそろ帰途に着きましょう。片品村尾瀬戸倉で401号線を南下し、鎌田で120号線、いわゆる日本ロマンティック街道に進路を取りました。丸沼、金精峠越え、中禅寺湖、いろは坂を経由して帰るのです。走り過ぎ? …確かにそうです。朝7時過ぎに「関越高坂SA」を出てから、ここまで飲まず食わず、トイレ休憩だけなんですから。もう1時を過ぎてお腹ぺこぺこ。中禅寺湖畔でたらふく食べようともくろんでいましたが、さすがに血糖値が下がりすぎ。くるみ餅という幟を見て、つい入ろうと思ったくらい血糖値は下がって危険な状況です。ガソリン補給がてらスタンドで近くのおいしいものを聞くと、ちょっと戻るとうどんのおいしいお店があると紹介して下さいました。速攻でUターン。こういう時はUターンもばっちり上手に決まります! お店の名は「路傍」。道ばたにあるから路傍ってそりゃストレートだよね、なんて突っ込みながらお奨めの手打ちうどんを冷たいざるうどんで賞味。絶品! さっき通った時、確かに車で混雑していましたっけ。やっぱり地元情報、これが一番だと再認識いたしました。

イメージ血糖値も上がり、元気になって丸沼へ。ここにはたくさんのライダーがしばしの休息を楽しんでいました。写真は、休息から睡眠へと移行し、夕方まで寝てしまいそうな雰囲気のライダーさんを盗撮! 湖畔は、なだらかでまるでヨーロッパのロマンティックな湖の畔のよう。だから、この街道の名前が…一人納得です。もうワインディングはここまでで腹一杯ですから、日本有数の峠道金精峠越えもさほど感激いたしません。ああ、贅沢な…。ワインディングを楽しみつつ、眼下には中禅寺湖。中禅寺湖と言えば、トンカツです。親しい友人から、「このルートではトンカツが外せません」と言われたほどの浅井精肉店のトンカツ。まだコシのある手打ちうどんを消化しきれていませんが、ここは食べなきゃ、なのです。

イメージたった6席のカウンターしかないこのお店。当然ですが行列。1時間近く待つ間、見回りに来た童顔のお巡りさんとご挨拶。うどんも消化された頃、やっと順番が。一番安い700円のソースカツ丼を注文。説明不要。写真をご覧下さい。あまりに高さがあって写真の上が切れちゃいました! 途中で汗が出てきます。食べても食べても減りません。どんぶりの上にカツ5枚。「どうぞ完食して下さい」と上品なお店のオバサマに諭されます。そして完食! 汗まみれなので、中禅寺湖畔で体を冷やします。小さい店なので場所や電話は書きません。ご自分で探索してみて下さい。

血糖値上がりすぎの体で、いろは坂経由日光宇都宮道路、そして東北道を通り、帰途に着きました。日本ロマンティック街道、本当はワインディング満腹街道、そして手打ちうどんと巨大ソースカツ丼でお腹も満腹街道なのでした。ああ、満腹。ごちそうさまでしたッ!

スポット紹介

谷川岳周辺の観光情報「まるごと水上」

URL/まるごと水上

矢木沢ダム、奈良俣ダム

URL/矢木沢ダム、奈良俣ダム

路傍

住所/群馬県利根郡片品村大字鎌田4307-1

電話/0278-58-2945

営業/11:00~15:00、17:30~21:00

定休/木曜

WRT
プロフィール
WRT

32年のブランクを経てバイクの世界に戻ってきたリターンライダー。ツーリングで走るエリアは非常に広範囲で、関東を飛び出し甲信越や東北の一部まで達することも。愛車はロングツーリングに最適なモデルBMW R1200RT。

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