掲載日:2014年07月18日 絶版ミドルバイク
文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)
記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです
エンジンを始動した瞬間に、身体中が熱くなる、4スト・マルチサウンド。少し垂れて絞り込まれたセパハンで、前傾のライディングポジションをとり走り出せば、速度計の針はグングン跳ね上がる。まるでタコメーターの針に連動するかのような鋭い速度上昇に驚きながら、前輪16インチホイールならではのコーナリングは軽快かつ狙ったラインをピタリとトレース。きっちり減速できる秀逸な前後ブレーキも装備……。
クラス最軽量の車体と、レスポンスに優れるハイパワーエンジンによる自在性は、まさしく時代の先端を行く作り込み。かつてない強い刺激を実感させてくれたマシン、それがスズキGSX-Rだった。
1983年秋の東京モーターショーでプロト型が熱い視線を浴びたGSX-Rは翌春にデビュー。当時、スズキの竜洋テストコースで開かれたプレス向け試乗会には、ポップ吉村こと故・吉村秀雄氏が直々にヨシムラ契約ライダーとGSX-RベースのTT-F3マシンを並べ、このマシンに賭ける意気込みをみせた。
GSX-Rは’80年代前期を代表するミドルスポーツであり、同時にレーサーレプリカブームの立て役者と呼ぶに相応しい人気モデルだった。排気量を表す400という数字をあえて車名に入れずに、GSX-Rの表記だけとしたのも印象深かった。
そんなGSX-Rデビューの前年、’83年の衝撃は、なんといってもRG250Γの登場だった。量産車初のアルミフレームとクラス最強の45馬力エンジンのインパクトは強烈。価格もライバルより高価格設定だったにも関わらずビッグヒットした。
そんなガンマの人気に自信をつけたスズキは、翌’84年にGSX-Rを発売したという流れ。同車もライバル他車より高い価格としたものの、4スト・レーサーレプリカのリーダー格として躍り出た。
4スト車初のアルミフレームに、高い動力性能を確約するハイパワーユニットと、これを支える最先端の車体&足まわり技術、そして何よりもサーキットからそのまま飛び出してきたかのような丸目デュアルヘッドライト付きのカウル形状+レーサーそのままのボディスタイルがファンのハートを釘付けにした。
エンジンは前作のGSX400FWをベースに大幅にテコ入れ。ボア×ストロークこそそのままだったが、吸排気バルブの大径化、圧縮比アップ、ピストンとコンロッドの軽量化、クランクケースやシリンダーなどの肉抜きを実施。エンジン単体では、なんと10kg以上の軽量化を実現した。
また、これらチューニングの結果、9馬力向上と0.4kg-mのトルクアップにも成功。当時の自主規制馬力の上限となった59馬力と4.0kg-mという最大トルクをマークした。
アルミフレーム化を主とする車体系に目を移せば、前輪16インチホイール+アンチノーズダイブ機構を、18インチの後輪側にはフルフローター式サスペンションを装備。車両重量も乾燥で152kgとクラス最軽量を誇った。ちなみにフレーム単体の重量も7.6kgと、FWの鉄フレームよりも6.4kgも軽かった。
そのアルミフレームは、後にスポーツバイクの定番となっていったが、他車ではステアリングヘッドとスイングアームピボット部を直線で結ぶツインスパー式が大半。GSX-Rに採用したダブルクレードル型でのアルミ材使用は類のないものだった。アルミ特有の固さがなく、しなやかな乗車フィールを支える大きなポイントとなっていたのだた。
ホイールベースは1,425mmとやや長めだが、キャスター角が27度25分という、前輪16インチ型モデルとしては標準的な設定としていた。リヤのフルフローター式サスはショックユニット自体が完全にフロートする構造で、作動初期のビギニングから中間ストロークまでのウルトラスムーズな動きを特徴としていた。
以降、’84年夏にはHB=ハーベーカラー仕様が登場。’85年4月には3連メーターの文字盤が黒から白に変更され、カラーリングも変更を受けた2型が登場。価格は据え置きの62万9,000円。そして’86年3月にはアルミツインチューブ採用の新型へ。エンジンも完全刷新。水冷、油冷、空冷の3ウエイ冷却方式:SATCSと呼ぶ独自の手法を採用した。この時点で、スズキが4ストマルチを手がけて10年が経過。ライバル他社に追いつき、追い越し、さらに独自性の強い商品戦略を打ち始めていた躍動の時代であった。
パワーウェイトレシオ、2.58kg/psというクラス最強スペックを誇るエンジンは、GS400FW用を大刷新。点火プラグを小型化し、バルブ径をアップした新型TSCC(ツインスワールコンバスチョンチャンバー)を採用。吸気通路改善も進めた結果、59馬力を余裕で出し、45km/hの低燃費も実現。マフラーは’83年世界選手権耐久チャンピオンのGS1000Rからフィードバックした4-1型。キャブは2バレルだ
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