『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流 Z系改造論 #13(最終回)

掲載日:2014年05月14日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

Z系のミッションのネガについてはこれまでもお話しましたが、あとはどのようなネガがあるのでしょうか?レースを目的としたクロスミッションの場合は各コースでもその違いはありますし、エンジンのチューニングによっても変速比は大きく変わります。また、近年ならではのカスタムスタイルというのも、大きな要因だと思います。たとえばスイングアームを丸パイプから角断面のスイングアームに交換すれば、当然フロントスプロケットに対する逃げも少なくなり、チェーンが常時スイングアームを擦るような車両も多く見受けられます。そしてスイングアームが装着された車両には、必ずと言ってよいほどワイドホイール化が図られています。

これらの条件から、クロスミッションという製品のギア比の論議はキリのない話だと思います。最も重要なのは“現代に生きるZ系のミッションに何が求められているのか”です。それはやはり、パワーアップによりミッションおよび各部分の負担が多くなった事に対するケアだと思いますし、今の環境やユーザーの求めているパフォーマンス的要因を汲み取れば、耐久性と安全性です。

過去にクロスミッションを販売するメーカーは数社ありましたが、耐久性の問題で消えていきました。アドバンテージでは販売開始から既に10年近くになりますが、故障や破損は1件も起きておりません。それは純正部品に与えられた性能を見極め、更に改善ポイントを見つけ出し、設計及びシミュレーションを重ね、加工方法と製品の管理方法を見直し、最新の素材を使用して世に送り出しているからでしょう。しかしそれだけやっても“やり過ぎ”はありませんし、“これで絶対に安全”というのは無いのです。

さらに重要なのは、もしも壊れた場合の補修の体制です。パーツの中にはセット品も存在するとは思いますが、基本的にはネジの1本、ベアリングの1個、ミッションの各ギアなど関係は無視できません。ギアは噛合いの問題があるので全てが単品で出せるということはありませんが、補修部品に対する考えは最も重要なポイントです。今後も乗り続けていきたいバイクなら尚更です。この様な問題を解決してこそ、ミッションやフロントフォークなどの大物パーツは安心して交換しようと思えるのではないでしょうか。こういったソフト面をきっちり整えられないのであれば、旧車やレーサーなどのパーツ展開は考えるべきではないと思います。良くて当たり前、さらには耐久性と安全性に関する取り組みが、非常に重要なのです。我々はクロスミッションという名のスペシャルミッションを作り出し、ミッションを通して車両全体の事も考えています。こういうスタンスでないと、ミッションを作る意味は薄れてしまいます。特に純正部品の無い時代に、次の選択肢として残していきたいと考えているのです。

以上、ミッションのお話(クロスミッションのすすめ)は今回で終了です。次回はスイングアームに関して書かせて頂きます。

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