『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流 Z系改造論 #08(クロスミッション編)

掲載日:2014年04月09日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

前回に引き続きミッションのお話です。元々は10年くらい前に、レース用として販売した物を煮詰め直して新たに製品化しました。まず解決したい問題点を書き出してみましょう。

①前後スプロケットの外径及びギア比が悪いためスイングアームの角度がより良い角度にならない

②フロントスプロケットナットの締め代が少ないためフロントスプロケットが脱落してしまう

③ミッションのドグ部分にバックカット(アンダーカットとも言います)がありますが、Z系のミッションは構造上(もしくは経年によるドグの噛み合い部の傷みのせいか)、荷重が掛かると5速ギア以外は抜けが起こり易い

④現環境を踏まえたストリート向けの“走れる”クロスミッション(スペシャルミッション)を再構築する

⑤各ベアリング類を見直し、ハイパフォーマンス&ローフリクションのベアリングを開発する

⑥各メタルブッシュを、巻きブッシュから削り出しブッシュに交換する

⑦素材及び焼き入れを変更する

⑧オリジナルのモジュールでミッションを作り、耐久性を上げるためにドグのレイアウトも変更する

⑨オプションとしてバックトルクリミッターを開発する

上記を含めた、ミッションを取巻く全体の問題を個別に解決させました。本稿以降で順番に解決方法を説明していきましょう。

①Z系統のスプロケットはフロントが15T、リアが33T~36Tと外径が非常に小さく、アクセルを開けて走るとアンチスクワットにより今にもスイングアームが逆折れし、まともに走行が出来ないという状況になり兼ねませんでした。しかしアドバンテージのクロスミッションは、フロントに17T~18T、リアは40Tくらい使用出来る、ミッション本体のギア比でこの問題を解決致しました。スポーツ走行等を楽しむ場合、せめてリアは38T~45Tくらいでセッティングできるのが好ましいので、ギア比を調整しております。

アンチスクワットについてですが、エンジンから発生するトルクが後輪で駆動力として伝わり、タイヤが路面に押し付けられる事でタイヤを潰しながら路面に強く押し当てる事で、フレームのピボットからスイングアームを介して車体を前に強く押し出す効果を言います。

この時に重要なのは、スイングアームのピボット位置が低過ぎると、リアサスペンションを縮める方向に駆動力を逃がすことになり、バイクはしゃがむようにテールが沈み込んでしまい、後輪に対する荷重が抜け、トラクション抜けを誘発してしまいます。駆動力自体が車体をリフトする方向と、車体側から掛かる荷重でバランス良く釣り合う事により、はじめて無駄なくそのトラクションが前進方向に車体を押し出すします。クロスミッションを作るに当たり、この様な事も想定しながら全体としてのパフォーマンスを上げられるように考えております。

②以降については、また次回からご説明します。

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