『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流 Z系改造論 #11(クロスミッション編)

掲載日:2014年04月30日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

前回に続いてクロスミッションの各部分の働きについてお話を続けさせて頂きます。

⑦素材及び焼き入れを変更する、に関しては簡単にお話します(秘密が多過ぎてとても書けません)。よく“クロモリ”という素材を見たり聞いたりすることがあると思いますが、基本的なことを少し補足しますと、機械構造用合金鋼のひとつで、目的や使い方によってその選択肢は分かれます。クロモリ鋼の重要な特性のひとつは、表面の浸炭により表面硬化することですが、内容的にはクロム鋼にモリブデンを入れて改良された物ですから、焼き入れ性に優れ、約500度前後の高温下でも強度が低下し難い材料で、高温高圧が前提となるミッション等にも適しています。

クロモリ鋼の“焼き入れ”についても、ここでは大いに検討する必要があります。素材に焼き入れをした後で希望の硬度を出すことができても、ミッションは硬い物同士が噛み合っているものなので、“減らない”とか“割れない”と言うことができるでしょうか?素材的に硬度が高い物同士で“減らない・割れない”を目指す場合もありますが、そこが本当に難しい所なのです。

また逆の考えで、少し柔らかめの素材でミッションの強度と耐久性を稼ぐ方法もあります。それには最適の組み合わせが存在し、各メーカー独自のノウハウはトップシークレット扱いです。それほど焼き入れは重要なファクターなのです。さらに、仕上がり後の管理能力も重要な鍵となります。製品化より管理コストの方がお金が掛かるくらいです。それらの精度が各部分で守られてこそのミッションです。それでこそ意味のある物ですね。それを全数検査し、合格した物だけがミッションとして製品になるのです。

焼き入れに関しては、ミッションの間に入っているシムも重要です。アドバンテージでは、このシムも上記と同様クロモリに焼き入れをし、馴染みや精度を上げるための特殊な研磨と科学処理を施します。意外にも無処理の物や、素材的にもたいした物が使われてない物も見受けられますが、重要なポイントになりますので、アドバンテージでは全てのシム、それにその他構成部品まで制作しました。シムをただの横方向の位置を決めるワッシャーだなんて思われている方もいますが、それは大きな間違いです。ひとつの部品が良くなることで、ミッション全体が大きく影響を受けるということを忘れてはいけません。

良い部品に交換したからその他の部品に気を遣う必要がないという考えは成り立ちません。それらに関係するところまで管理して、はじめてそのパフォーマンスを発揮できるというものなのです。ではまた。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索