『ツーリングのつぼ』

キャンプの水筒(3)

掲載日:2013年09月17日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

あれはアフリカのニジェールかどこかのコトだったと思う。あまりの暑さに寝られなくて、泊まっているホテルの部屋の中で打ち水をしたことがある。その経験から、私は体温を越える気温になると寝られないことが判明した。たいていそれは、水筒の水や金属の工具が熱くて触れない地域と合致する。

気化熱は、水で濡らして使う、冷感タオルと同じ原理だ。素焼きの瓶のように、全体からじわりじわりと適度に水が漏れてくれる入れ物ならばいいのだが、靴下やTシャツなどの布切れを水筒に着せたくらいでは、バイクを走らせ風を当てていると、思ったよりも速く乾いてしまう。

アフリカのニジェールに、それ用の水筒が売っていた。ヤギ1匹丸ごと中身をくりぬいて、その腱で縫ってある “ゲルパ” と呼ばれる水筒だ。生皮だから全体から水が漏れるので冷却効果バツグン、地元の車はバンパーの前に付けている。市場に行くとゲルパを売っていたが、問題は、こんな物買ったことがないから値段の相場が分からないということだ。

途上国の常で、物に定価というシステムはなく、値段は売りたい人と買いたい人の意志によって決まる。その逆に、旧ソビエトなど共産圏では、“コーラは5ルーブル” と決められたら、それは、市内のコンビニでもシベリアの奥地でも5ルーブルである。問題は、手間ヒマをかけても儲からないのなら、誰もシベリアまで物を持って行かない点にあると思う。

その時に泊まっていたホテルは1泊 500 円、コーラは 50 円、屋台での食事は 30 円程度だ。相手の言い値は 1,000 円からスタートした。日本のコンビニでこれをやったら、確実に嫌がらせだと思われるだろうが、私は2日かけて値下げ交渉をし、300 円でゲルパを買った。それを水で満たして持ち上げたらズシリと重かったので 10 リットルくらいは入るのだろう。すぐに全体から水が漏れはじめる。しばらく走って休憩し、メットをとって頭から水をかぶると、それは動物臭のする茶色の水になっていたが、気温は 60℃ くらいあったので、そんなことは気にならないほど冷たく感じたことを思い出す。

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