『ツーリングのつぼ』

浄水器(2)

掲載日:2013年05月21日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

世界を旅していると、自然界のさまざまな要因により、人類には直接飲めない状態の水を見かける。たとえば凍っている(氷河)、沸騰している(噴出している温泉)、硬い(やしの実)などだ。もしヒルトンホテルのテーブルの上に置かれたコップに水が入っていたとしても、安心してはいけない。目に見える異常(ウエイターが踊りながら注文を取りにやってきた)や、目に見えない異常(ウイルスの混入や放射能汚染、メガネが行方不明)など、旅人には試練が多いのだ。

北米の生水は、ビーバーフィーバー(北海道のエキノコックスのような寄生虫)の危険があると聞いた。そのためアラスカで、少し茶色に濁ったユーコン川の水を浄水器で濾過してみた。すると見事な透明になり、澄んだ味がした。しかし浄水能力が高いとフィルターがよく詰まるので、汚れの程度にもよるが、川の水からシェラカップ1杯の浄水を作るごとに、フィルターを分解して洗わなければならないことが判明した。そのフィルター洗浄の手間を減らすため、濁った水は容器に入れて安置して、比較的きれいなその上澄み部分だけ浄水器を通すとベターだろう。

海の近くや内陸でも海抜の低い地域では、飲料水に塩分が混じっていることがある。この浄水器を使っても塩分は濾過できない。ほんの少しの塩分なら、調理に使っても味に気がつかないかもしれない。しかし、緑茶にはまったく向いていない。もし疑うのなら(そう、私はいつも信じてもらえない)、今すぐ緑茶をわかして数粒の塩を入れて飲んでもらえれば、私の味覚に誤りがないと分かってもらえると思う。このマズさは、私だけではもったいないので、ぜひ読者にも体験して欲しい。ちなみに、アフガニスタンとその周辺では、緑茶に砂糖を入れて飲んでいる。「お茶に砂糖を入れる」という言葉に抵抗はあるかもしれないが、味はいいので、塩入り茶の口直しにお試しください。

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