『ツーリングのつぼ』

フェリーの旅(2)

掲載日:2013年03月12日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

フェリーの客室は、ホテルと同じように個室から雑魚寝まで、各人の懐具合により用意されている。私にふさわしいのはスイートルームか、少なくとも1等船室だと思う。しかしどういう訳か、一番詳しいのは雑魚寝だ。これは宴会場のような大広間で寝る、フェリー独特の一番安いチケットだ。映画タイタニックでは、きっとレオナルド・デカプリオたちがいたクラスに違いないと思う。

その広間には、枕と毛布が用意されているだろう。それを広げた範囲が自分のスペースだ。隣人との仕切りもプライバシーもないので、他人の話し声や船のエンジン音、そして天井の明かりが気になるかもしれない。私のように繊細な人は、耳栓とアイマスクを用意すると安眠できるのでお勧めだ。

しばらく広間にゴロリと横になっていると、圧倒的にヒマだし船酔いもしそうになる。特に泳げない人など、海の上という状況がどうしても落ち着かないこともあるだろう。自分の専有できる範囲は狭いけれど、共用スペースは自由に使えるので、船内を探検してみてほしい。しかし、タイタニックのように甲板の先端まで行って、両腕を翼のように伸ばして不純異性交遊をしようとすると、煙突からの煙でむせてしまうだろう。一般的なフェリーはディーゼルエンジンなのだ。

気分を変えようと風呂に行くと、窓から見える水平線が右に左に傾いて、船の傾きからワンテンポ遅れて湯船からお湯がこぼれるので、船酔いが加速してしまう確率が高い。風呂やトイレに行くたびにブーツを履くのは面倒なので、サンダルなどがあると便利だろう。

この船酔いは高山病と同じように、その場所から離れないと根本的には治らない。フェリーには出港したら逃げる場所がないので、私の場合、呑んだらすぐに寝る習慣を身につけることで対処している。普段から酔っぱらっている私の日常を知る人は、容易に責めてはいけないと思う。もしかして私は、こういう深い洞察の元に行動しているのかもしれないからだ。

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