『ツーリングのつぼ』

バイクの選択(3) 極限に近いツーリングの場合

掲載日:2011年10月25日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

90年代の後半にインジェクションのバイクは発売された。日帰りや日本一周レベルなら何の問題もないが、それで海外ツーリングに出かけたライダーは、かなりの高確率でインジェクションを壊していた。国により赤や黄色や青色をしていて、時にドロリとしたガソリンを砂ぼこりの舞う中で、灯油まじりのドラム缶から手押しポンプで給油する状況は、コンピュータ制御された高精度のバイクにとって圧倒的に不利な状況だったのだろう。それに加え、ガソリンの品質がそのくらいだから、オイルの質も期待はできないのは言うまでもない。

空調の管理された清潔な部屋で、自慢のスーパーコンピューターで設計された低オクタン仕様の最新鋭インジェクションバイクは、現場ではたいていこんな状況だった。

大陸横断ツーリングでは、バイクは機械なので故障することを前提として、最新の専用設計モデルは避けた方がいいと思う。同じ構造のモデルが10年以上にわたって海外へ輸出され、ボルトやベアリングが国際規格で組まれている機種なら、世界のどこに行っても現地での整備やパーツ入手が期待できるだろう。

そこで「どのくらいが最新モデルか」という指針をいくつか挙げてみたい。私が世界一周に持って行った XLR250R のディスクブレーキを見ても、ドラムブレーキしか存在しない国では「大変だ! ブレーキがないぞ」となったし、バイク屋で「バイクのオイルはこれだ!」と、自信満々で2ストローク用のオイルを示されたことが何度もある。

空冷か水冷かも問題だ。エンジンの耐久性を考えれば水冷に軍配が上がるが、壊れた時に修理がしにくい。冷却水がオイルに漏れ出す(外からは判断しにくい)と、エンジンや変速機が一気に破損してしまう。エンジンの気筒数も悩むところだ。シリンダー数が多いほど高速巡航が快適になるが、それに反比例して車重が増えて整備性が悪くなるのが悩ましい…と、ここまで書いてきて、もしかして誰の参考にもならならないかもしれないという疑念が浮かんだが、この項で言いたいことは、各自がんばってツーリングバイクを選んで欲しい、ということだけである。

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