『ツーリングのつぼ』

バイクの選択(2) 大好きなバイクで行くと…

掲載日:2011年10月18日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

しかし世界は広いので、中には変わったヤツもいる。オーストラリア人の運転するホンダ VFR750R(RC30) に出会ったのはイランの道端だった。私と逆方向に東南アジアから走って来て、これからイギリスまで行くのだと言う。このクソ暑い真夏の砂漠でワンピースの革ツナギを着てフルフェイスをかぶり、

「俺はワインディングが大好きで、フルバンクでコーナーを駆け抜ける時の…」

と、ロードモデルの魅力を語るが、アジアの悪路で転倒しまくって高価な FRP のカウルはすべて割れて、自慢のアルミタンクやマグホイールは、ぱっと見でも歪んでいる。そもそも快適なワインディングなど、一番近くて 3,000 キロくらい先のギリシャだろう。アルミパニアを付けて旅行者然とした XT600 に乗り、VFR の隣であきれた顔をしていた彼女の顔が忘れられない。末長い幸せを願うのみだ。

ベスパ PX200 で世界を走っていたイタリア人旅行者は、アフリカの安宿のテラスでビールを片手にこう語った。

「サハラ砂漠はキツかった。長い木の板を用意して、それを使ってスタックから脱出して走り続けたんだ」

このケースの場合、バイクの選択が悪いのか荷台に積んでいたギターが悪いのか、国際紛争の原因になるので詳細な理由は挙げないが、相手はイタリア人だからあまり参考にしてはいけないと思う。

体力や経済力が許す限り、バイクの排気量はできるだけ大きいと快適だ。時速 100 キロでクルージング可能で、できたら、そのスピードからさらに加速できる余裕があるとベストだ。そうでないと、後ろから追突されないように、ずっとバックミラーを見続ける味気ないツーリングになってしまう。ちなみにアフリカや南米でさえ、一般道でも時速 100 キロくらいで自動車が走っている。

もし「排気量が大きいとスピードが速い。いい景色を通り過ぎてしまい、ゆっくり見られない」という場合、アクセルを開けすぎていないか、もしくはブレーキをかけ忘れていないか、右手をよく確認して欲しい。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索