『ツーリングのつぼ』

ヘルメット(1) 旅はコミュニケーション

掲載日:2011年09月06日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

初めての海外ツーリングはオーストラリアだった。当時の写真には、モトクロスヘルメットにゴーグル、ご丁寧にモトパンにモトクロスブーツも履いて、タナミ砂漠で XR250R にまたがった私が写っている。おまえはレーサーか。

モトクロス用だと顔の大部分が露出しているので、ゴーグルをしていてもバッタや蜂が当たって痛いことがあるので、ツーリングではシールド付きのヘルメットがいいと思う。

そこで世界一周にはショウエイの 『J-Acter(現行のシンクロテック)』 を使った。これは開放的なオープンフェイスと、安全性の高いフルフェイスを両立させたモデルだ。ボタンひとつでチンガード(アゴの部分)が開けることができ、タバコを吸ったりカメラを構えたりすることができる。メガネを付けたままメットの脱着もできるので、メガネっ娘には大変便利だろう。

アメリカでヘルメットの着用義務は、州によってあったりなかったりする。着用義務のないアラスカで、幸薄い私は、とある信号待ちでハーレーに乗るバイカーに並ばれてしまった。腰まで伸ばした長髪にノーヘル、裸なのに長袖シャツを着ているような刺青が丸太のような腕に刻まれている。そしてベルトには全長 50cm はあろうかというナイフ。まんまヘルズエンジェルスじゃんか。

緊張しながらもそっと視線を合わせると、こちらを見る視線は濃いレイバンで隠されていたが、口元は笑っているので敵意はないらしい。もしかして単なるツーリング好きの、結構いいヤツだったのかもしれない。

このように、目線や顔の表情というものはコミュニケーションの第一歩であり、他人に道を聞いたりするとき、素顔を出して笑顔で話しかけるのは法律ではなくマナーだと思う。自分がではなく、こちらがどう見えているのか、相手の立場で想像できるのが大人なのである。よく外国である、ベルギー製 FN 自動小銃を持った軍人による路上検問でも効果的だろう。それらを容易にしてくれるのが、このヘルメットだと思う。

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