『ウェア屋さんのひとりごと』

レーシングスーツのレタリング、いわゆるネーム入れのおはなし

掲載日:2012年02月16日 タメになるショートコラム集ウェア屋さんのひとりごと    

Text/Junichi FUJIMOTO ( RS TAICHI )

前回はレーシングスーツ(以後スーツ)のオリジナルカラーを考える “コツ” の様なことをお話しましたが、更にオリジナリティを高めるレタリング、いわゆるネーム入れということについて、皆さんはどの様な印象をお持ちでしょうか?せっかくの “一張羅” なので、自分ということを表現したい方も居れば「自分の名前が入っているのは恥ずかしいなぁ」という声を聞くこともあります。私も相談を受けることはありますが、ネームが無くてもスーツとしての機能に変わりは無く、あくまでもデザインやカラーリングの延長なので無理に入れる必要はありませんよね。逆に「失敗した~」となった場合、ネームはスーツに縫い付けてしまうため、「やっぱりヤ~メタ」といって剥がしてしまうと、そこにはクッキリと縫い付けた跡が残ってしまいます。他のネームを貼り付けてしまう以外にコレを無くす方法は無いので、ネーム入れは “大失敗” の無い様、慎重に仕様を決める必要があります。“大失敗” と言ったのは、例えば仕上がった後に「う~ん、ここをもう少しああしてれば云々」といった事もたまにあります。ただ、実際の仕上がりは出来上がってみないと分からないもので、「欲を言えばのハナシなので、まっエエか」というのが殆ど。その「欲」は次の機会へ取っておくことにしておきましょう。

さて、ネーム入れは本体と同様にカラーリングが大切です。スーツ全体に比べて小さなレタリングは、メリハリの無いカラーリングや字体では遠目に読みづらく、スーツのデザインがカラフルな場合は更にクッキリと見せる必要があります。そのため、私が選手用のスーツでレタリングを考える際は、スーツの話でも触れましたが “白/黒” に代表される様な、できるだけ明暗の差がハッキリしたカラーを組み合わせたり、それでも「イマイチやなぁ」と思った際にはネーム自体を白や黒などのフチで囲むことで、選手の名前やチーム、スポンサー等のロゴがしっかりアピールできる様に “ひと味” 加える場合もあります。こうすることによってスーツ全体にメリハリができ、“何処の誰のスーツ” か分かりやすくなる訳です。

ただしこれは “目立ってナンボ” と言えるレーシングライダーの話で、必ずしも全ての皆さんに当てはまるとは思いません。例えば、真っ黒なスーツに敢えて黒いレザーでネーム入れというパターン。決して遠目に目立つことはありませんが革の凹凸や縫製によって、そこに描かれている内容を読み取ることができます。「あまり自分を主張するのは控えたいが、何か自分の拘りを記したい」というお客さんに提案しますが、なかなか “玄人好み” というか、単なるライディングウェアという領域を越えて一種の “クラフト” といった仕上がりが「レザーウェアらしくてイイなぁ」と思ったりします。

レーシングスーツに限ったことではありませんが、目立つからイイとかダメとかではなく、使用するシチュエーションや自分の思いや拘りがデザインやカラーリング、ネーム等によってシッカリ表現できれば、それは皆さん自身にとって “唯一無二で最高の一着” になることでしょう。もしこのコラムを読まれた方やお知り合いの方がレーシングスーツを作りたい、手持ちのウェアに “ひと味” 加えたいという思いをお持ちでしたら、私たちが全力でバックアップしますのでお気軽にご相談ください!

あれ、宣伝? いや、決してそんなつもりは…

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