『ウェア屋さんのひとりごと』

レーシングスーツのカラーリングあれこれ…

掲載日:2012年02月09日 タメになるショートコラム集ウェア屋さんのひとりごと    

Text/Junichi FUJIMOTO ( RS TAICHI )

この原稿を書いている数日前、夢の中まで私を追い詰めていた春夏カタログがついに校了し、取り敢えず大きなヤマをひとつ越えることができました。それでもまだ、新製品をオフィシャルサイトにアップしたり、3月の末に開幕する全日本ロードレースに向け、選手達が使用するレーシングスーツの仕様を煮詰めていくという任務が残っています。レーシングスーツに関しては身体にフィットして動きやすく、快適なライディングができる様な調整を行うのはもちろんですが、できるだけ “格好良く” 見える様なカラーリングや、スポンサー等のロゴマークを取り付けるといったことも大切です。私にとって、その佳境とも言える時期がちょうど今頃なんです。

レーシングスーツのカラーリングは一般道で使用するウェアと違い “目立ってナンボ、自己主張の塊” といった考え方もあり、遠目にパッと見て誰と分かる様に仕上げるのが基本ですが、同時に所属するチームやスポンサー等のイメージを明確に表現することも大切です。私も今まで数多くのカラーリングやデザインに携わってきましたが、要求されたイメージを満たしながら “いかに格好良く見えるか” を考え、ディスプレイに映し出されたカラーリングを見て、スーツとなった現物の状態をリアルに想像しながら配色していきます。ただ私の場合、実はだいたい決まったパターンというか、そういった暗黙のルールの様なものが存在するのです。

まずメインとなる色を2色決めますが、これがいわゆる “チームやスポンサーのイメージカラー” となります。次に、色の境界線をハッキリ見せるため、できるだけ明暗の差が大きい色が隣合わせとなる様に組み合わせますが、最初に決めた2色が似たような色の場合は、その間に白や黒等を差し込むことで境目を作り、見た目にクッキリする様にしつつ、全体のバランスを見ながら相性の良い別の色を加える場合もあります。またレーシングマシンは黒いシートラバーの影響で、ヒップがすぐに黒ずんでくるため、この部位には出来るだけ濃いめの色を使用します。また、全体的に明るめの色が多いと感じた時は、袖裏や衿、シャーリング(伸縮パーツ)等に黒を使用することで引き締まった雰囲気を出すこともできます。もし、WEBサイトの カラーオーダー 等で「どうもフワついた感じだな…」と思ったら、チョットした部位に黒を使うだけでかなり違ったイメージに変わるでしょう。

また、バックスタイルを格好良く見せるため、ヒップから腰のシャーリングは一体感のある配色を行いますが、こうすることで腰高なイメージとなり、上半身を短く、下半身を長く見せることができるのです。ま、半分は詐欺みたいなものですが、仮に背中と腰シャーリングに一体感を持たせた場合、上下の境界線が下がってしまうため足が短く見えてしまうんですね。

といった感じで、選手ひとりひとりに “格好良く” なってもらうため、カラーリングひとつをとっても数多くの試行錯誤を重ねている訳ですが、以前にもお話しした様に “好み” も大きく分かれるので、難しい要素ですよね。次回は選手の名前に代表される “レタリング” についてお話をしてみようと思います。

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